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NEXUS×NEXT  作者: HS
第1章 目覚める刃と銀の皇女
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第一話 「始まり」

この世界には、“侵食者”と言う怪物が存在している。発生の原因、場所、生態不明で神出鬼没。おまけに人類の用いる兵器は効果が無く、20年前に起きた第一次侵攻では一都市を犠牲にした核爆発で止めを刺した位だ。

ーーーーその日を、人類は決して忘れることは無いだろう。

圧倒的な絶望を。

絶対的な恐怖を。

惨殺を。

虐殺を。

鏖殺を。

ーーーーその日、人類は知る事となった。

ーーーーこの侵攻で人類は総数を四分の一程減らした。それから暫くして魔術の存在が発見され、魔術が侵食者に有効な事が判ると、世界は魔術を扱う魔術師に侵食者を殲滅する義務と様々な事を優遇する報酬を与えた。そうして起こった13年前の第二次侵攻は人類側の犠牲をほぼ出さずに終結した。第二次侵攻を経て世界は更なる軍備増強路線を取り、魔術師達は自らの後輩に技を教え、今尚散発的ではあるが続く侵攻を防がせる為、六校の魔術学院を開設した。


これは、そのうちの一校、剣ヶ丘学園での物語。

























意識が弾ける様に浮上して、目に入ったのは赤だった。

見渡す限りの赤、紅、アカ。

手にも血糊がベットリと付いている。目の前には血の海。たった二人の人間にこれだけの血が入っている事に、俺は場違いにも驚いてしまった。

殺したのか?

……俺が?

……オレが?

……僕が?

カラン、と澄んだ音を立ててナイフが床に落ちる。するとまるで人形の様に生気の感じられない動きでこっちに這いずりながら、

----お前が……

やめろ。

----俺達を……

やめてくれ。

殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺したコロしたコロしたコロしたコロしたコロしたコロしたコロしたコロしたコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタ

何回も反響したような不気味な声でそう言いながら目に銃を撃ち込んできた。

「…………ッッ、…………………ァッ。…………」

痛い………………………ッ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!

何かめちゃくちゃに叫ぼうとしても声が出ない。

妹が何か言ってくるが聞こえない。

世界が真っ暗になる。

頭がグチャグチャする。

熱い。気持ち悪い。

何かが頭の中に根を張って居る様な感覚。

最後に“俺”が見たのは

………“僕”に似た誰かが黒に塗り潰されていく所だった。





















「なぁ士、なんか様子変だぜ?何かあったか?」

……目を覚ます。辺りの喧騒から察するに、どうやら入学式が終わったらしい。

僕は僕の幼馴染兼悪友にして仕事仲間の彼方集にそう質問された。「別に何も?」と答えようとしたが何かを忘れている様な気がする………










……僕は今、校庭を歩いている。

僕の名前は一条士、今日から日本魔導大学付属剣ヶ丘学園高等学部魔術コースに入学する一年生であり、魔術師(ウィザード)と呼称される“特殊指定生命体”だ。

(……おっ)

丁度良い木があった。高さは……凡そ2m位か。

木に登ってだらだらするのは、心が安らぐから好きなのだ。

(この程度なら、魔術を使わなくても問題無いかな)

僕は体を屈めて枝に飛び乗ろうとした。

……けど、僕はこの選択を後悔する事になる。なぜなら、

「なぁっうわあぁ!」

「キャァッ!?」

その枝には既に先客が居たからである。

そのままもんどり打って倒れ込み、僕は咄嗟に少女の体を上に持って行きながら重力低減の術式を使用し、衝撃を防ぎながら着地する。

「あいたたた……大丈夫ですかっ、てえ!?」

「は、はい……っ!?」

着地の衝撃による鈍痛に眉を顰めながら目を開け、驚愕する。上に居るのが女の子で何回か転がったのかは知らないが僕が女の子を押し倒すような恰好になってあまつさえ右手が女の子の柔らかい膨らみの上に乗っているときた。

……一言で言おう。変態だ。

「きゃあぁぁぁ!!!」

女の子の絹を裂く様な悲鳴が早朝の剣ヶ丘学園に木霊した。





「………………………」

何かあったかと聞かれれば何かあった。先程のラッキースケベ(アクシデント)の事だ。追及されても面倒なので正直に答えておく。

「入学式が始まる前なんだけど、女の子とぶつかって押し倒してしまった……と言うことがあったね」

「おお!そいつはイイなぁ、お前やっぱ俺と変わってくれよ!」

この男、スケベである。そう、スケベである。スケベったらスケベなのである。大事な事なので4回言った。

取り敢えず世の女性達の分の報復とムカついたので(こっちが本音)鳩尾にコークスクリューパンチを叩き込んでやった。

「ゲフォゥ!……あぁ〜痛え、少し意識がトんじまったぜ」

……然しまぁ、この男も大概タフである。僕のパンチを喰らえば常人ならミンチになっても可笑しく無いのに。

だが何方にしろ、土台入れ替わるなんて無理な話だ。人は自分以外になれないとはよく言ったものだね。

(まぁ、脳味噌を挿げ替えれば出来るかも知れないけど、それだって不可能に近いかな)

話は変わるが、この男、本当にイケメンである。集は僕より背が高くておまけに美形だ。

(……スケベで変態で前時代のサブカル狂いだけど)

と心の中で毒づき、対して自身の評価を考える。

僕は精々中の中、平均中の平均といった感じだ。容姿自体は良いと思うのだが、色素の薄い白髪と左目の眼帯が台無しにしている。嫌な話だ。

……話に少し気を取られすぎていたようだ。ジェスチャーで“教室に行こう”と集に言うと、集は回りの美人な女の子に見惚れて鼻の下を伸ばしていた。この男、やはりスケベだ。

「………………………………………取り敢えず」

その直後、学園の講堂に集の断末魔が響いた。







自分の教室である1-1まで気絶した集を運んで(引きずって)席に放り投げた僕は自分の席を探して席に着こうとするが、

「あ!貴方は!」

「…………ん?」

呼び止められた事で中腰の体制を維持する事を余儀なくされる。何事かと思って顔を上げてみたら、早朝に枝の上にいた銀髪の女の子だった。

「キミは……朝に枝の上にいた女の子だよね?」

「ええ。マリア・イレイナ・フェイリスと申します。以後お見知り置きを」

女の子ーーーーマリアは優しく微笑んでそう言った。だが何故だろうか、雰囲気と目が全く笑っている様に感じられない。

(そりゃあ怒るだろうな……変態だもんなぁ……)

正直その場で叩かれたりしなかったのを不思議に思ったくらいだ。

「マリアさん、あの時は御免ね?」

あの時は彼女が逃げ出してしまって謝罪できなかったので、しっかりと謝る。あの時、僕はマリアさんの胸を触ってしまっていたのだが……謝罪できたから許してくれるかな?

「あら、それでは罰として切腹でもして死んでくださいな」

……今、物凄い言葉が聞こえた気がした。

「えっと……ハラキリ?」

「ハラキリ」

思考が止まりかけるが、何とか持ち直して言葉を返す。

「一応確認するけど……本気?」

「本気です」

(……僕が全面的に悪いとはいえ、それは些か酷すぎるのでは?)

「……ん?これはこれは大変な事になっぶしゃべれぼらぁ!!!」

「悪い。ちょっと黙っててくれ」

(集は茶化すだけで頼りにならないんだよなぁ……)

マズい事になりそうなので復活したどっかのスケベ()の顎に回し蹴りをぶち込んでやった。

アイツの顎と首からゴギンッ!と言う嫌な音が聞こえたけど、努めて無視して頭を回転させる。

「………………そろそろSHRの時間ですね。それでは、()()

マリアが自分の席へと戻って行く。

(うーん、結果オーライ?だけど、確実にヤバい人扱いだよなぁ……)

人の頭を蹴りぬくとか、裏社会の人間でも無ければ普通にドン引かれるだろう。

流石にこんな状態にしておくのは不憫なので、集の頭を捻って元に戻してやる。人体から聞こえちゃ駄目なような音が聞こえたのは幻聴だろう。

流石に僕も集もそこまで軟な鍛え方はしていない。

(……戻し方が雑すぎたのもあるかもしれないけど)

集が目を白黒させながら首を回して体の調子を確かめていると、担任の先生が入って来た。入学式なので、今日は連絡事項のみらしい。

「まずは、入学おめでとう。君達の先達として、僕は心より君達を歓迎する」

教師は穏やかな口調で僕たちに話しかける。

そして、「これは僕から君達に伝えたい事なのだけど」と言って、語り始めた。

「……君達は魔術師として生きる事を決めた者たちだ。その道のりはとても厳しい。謂れの無い非難に晒される事も、救えなかった者達の罵倒に晒される事もあるかも知れない!」

教師は熱の入った口調で、魔術師の矜持を口にする。

「だが、我々は人類に代わって侵食者に鉄槌を下す者であり、我々の肩には人類全ての思いが乗っている。その事を、どうか忘れないで欲しい」

この教師も、元は一線級の魔術師だったのだろう。しかし、歴戦の傷と体の衰えだけは、どうにもならない。

見た所40〜50代の彼は、第一次侵攻から戦線をくぐり抜けてきた経験があるのだろう。

……顔に走る傷と、その言葉には、重みがあった。

自然と拍手が起き、先生はその顔を僅かに綻ばせる。

「明日は魔術師の剣であり鎧であり杖。現代最高の魔道具たる魔導工学兵装具(マギテクニカルウェポンギア)を見せてやる。『我ら人類の先鋭なりて!』」

「「「Yes! We are the Vanguard!!」」」

魔術師に広く伝わる合言葉を唱え、ホームルームは終わりを告げた。

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