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NEXUS×NEXT  作者: HS
第3章 夏夜に踊るは刃と花火
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第四話 「蹂躙も鏖殺も好きだが、一番好きなのは殲滅だ」

「……さて、久し振りの娑婆かぁ。あ〜、気持ちいいねぇ」

久々に表に出てきたオレは、息をたっぷり吸い込んで軽く深呼吸をする。クラノディアの首都であるアーセナルだが、ここは緑も充実しているのだ。

「全く……以前壊しに来た時から知っていたが、いい空気だ事」

本当に……今すぐに焼け野原にしてしまいたい位に反吐が出る。

「まぁ、別に今のオレにゃあ関係無いけどな」

そう。そんな事を言っても今のオレじゃ何も出来ない。なら、今は士からのオーダーを遂行する方が建設的だ。

「じゃ、行くか」

とは言った物の、ビルのドアは対戦車ミサイルの直撃にも数発耐えうる頑丈な複合合金で作られている為、ちょっとやそっとじゃ壊れそうに無い。

ただ……

「だからどうしたって事なんだけどな」

ッドガァァァン!!!

ビルのドアを蹴りでぶっ飛ばすと、中央が盛大に陥没したドアが衝撃波と破片を撒き散らしながら吹っ飛んでいった。何人か巻き込まれたようだがそんな事はオレの知った事では無い。

「さて、楽しい楽しいお遊戯会(殺し合い)の時間だぜ!!頼むから逃げ出してくれるなよ?逃げ出した奴から優先的に連れ戻すからなぁ!」

そう言いながらオレはビルの中に入って行った。














「……ん?」

ビルの中に入って二分程経ち、だだっ広いエントランスが見えてきた所で、オレは盛大な鉛弾の歓迎を受けた。

ダダダダダッッッ!!

機関銃の掃射によってあちらこちらに弾痕が刻まれるのを見ながらオレは前方へと走って進み、全方位くまなく見える所まで来てから行動を開始する。

敵の数を確認。前に5、右横に7、左横に4、後ろに3。合計19人か……

「少ねぇなぁ……オレに一撃食らわせたきゃもっと持ってきな!」

弾幕の穴を見つけてそこにダッシュすると同時に暮刃を抜刀。続けてこの体の中の門を探し当てる。元来、人の体には一人一人が世界から扱う事を許された“霊力”と呼ばれる力が内包されている。オーラ、チャクラとも呼ばれるそれは、高々500c㎥程度の体積で核爆弾に匹敵する程のエネルギーを持っている。光に変化させて放出すれば、威圧の代わりにはなるだろう。

「……よし、吹き飛びなぁッ!」

そう叫ぶと白い光の柱がオレから立ち昇った。その量の多さに思わず驚く。

「うわぉ……尋常じゃない霊力量だぜ」

ここまでの量を見るのはオレも久し振りだ。

「なんだ、一体!?」

敵の一人が僅かに後退る。オレの変化を警戒してか銃撃の回数は減っている。この機を逃す手はねぇな!!

「あらよっと!」

軽くジャンプしてみると一気に四階辺の天井まで飛び上がってしまい少し驚く。

「相当だなぁ……」

ほんの一寸しか身体強化に回してなかったんだが、この体の性能様々だ。

「ま、結果オーライって事で」

体を半回転させ天井を蹴り飛ばす。勿論、今度は全力だ。

ドガァァァンッ!!!

天井が破壊され瓦礫が落ちてくるが、その瓦礫よりも早く地面に向かって落下する。狙うのは奥側。出来るだけ最速で!

「消し飛びなぁ!」

暮刃を縦一文字に振り下ろすと衝撃波が巻き起こり、三人の敵敵が木っ端の様に吹き飛んでいき、瓦礫に衝突して物言わぬ肉塊に変化する。

「さて、次はどいつだ?」

斬りつけて開いた奥側のドアを背にして軽く問い掛けるが、帰ってきたのは無数の銃弾の嵐。だが、

「危ない危ない」

霊力を防御に回すと銃弾は面白いように弾かれていった。それを横目にゆっくりと歩いていく。

「う、撃てぇ!撃てぇ!!」

「はっ」

ゴシャッ!

敵の一人が自分に発破をかけるように声を上げるが、その必要はない。何故ならもう死んでいるからだ。

敵の顔面を膝で蹴り潰したオレは、偶然そばにあった武器ラックを見る。そこには何の因果か、前にオレが使っていた銃に近い物があった。

機関部はバレットM95対物ライフルを改修した物だが、バレルを切り詰め、撃発機構を更に改良したそれは長めのアサルトライフルにも見える。二世紀前とは違い直撃すれば戦車をも仕留める事が出来る対物ライフルの弾薬。それをそのまま使用したこの馬鹿げた銃の開発目的は、

ーーーー鋼鉄を喰い破り、敵に決して抗えぬ死を与える事を主眼に置いた、一撃必殺の銃。

「対物フルオートマシンガン、“ケルベロス”。久し振りだな」

マガジンをヘリカルマガジンに換装し装弾数を30発以上に伸ばしたフルオート対応の.50BMG弾。その威力は推して量るべし……ってね。

ドンドンドンドンドンドン!!!!

一発毎に盛大なリコイルが腕に伝わり、空薬莢が排莢されていく。かなり遅めの連射速度だが、銃身冷却を考えるとこの位の連射速度の方がいいのだ。

敵は防弾チョッキを着用していたようだが、そんな物は関係ないと言わんばかりに直撃し、その体を四散させていく。

二世紀も前の技術レベルで1.5kmの超長距離から敵兵の体を着弾の衝撃で両断したと言う記録が残っているのだ。数々の試験を経てアップグレードされたこの銃の理論上の最大射程は、5000m以上。短くなったとは言え狙撃も十分に行える長さを持つ銃身の影響を加味しても3500m程は狙える。そんな威力をもつ銃弾を受けたのだ。四散しても何もおかしくは無いだろう。

「ジョン!ヘンリー!クソッ、化け物め!!」

全六発。六人全員を血と肉片の塊に華麗にジョブチェンジさせてやったが、まだ足りないらしい。……おっと、

「一人残しておかなきゃだったな」

生憎とこのビルの中の情報がない。情報要員は必要だろう?無論殺すが。

残りのネズミは……9?一人足りねぇな。……アレか。

ドンドンッ!!!

逃げ出した奴に二発叩き込んで粉微塵にしてやってから他の奴らに目を向ける。ケルベロスの威力と爆音に驚いてか銃撃は止まっている。……よし、殺るか。

ケルベロスを上に放り投げて軽くジャンプ。敵の一人を暮刃で地面に縫い止める。……まず一人。

そのままオートマグを抜いて発砲。水平撃ちで放った三発の弾丸は全て敵の頭部に命中し、血と脳漿を四散させる。……四人目。

暮刃を地面から引き抜き横に払って一人の胴を上下に両断し、腸が飛び散るのを横目に見ながら突撃。二人の喉笛をビリヤードよろしく突き破り、そのまま暮刃を90度横に回転させて股下まで切り裂く。……七人目。

暮刃を血振りして鞘に納め、ケルベロスを左手でキャッチしながらナイフを振り下ろそうとしていたもう一人の胸を貫き心臓を握り潰す。鮮血が傷口からビチャビチャと滴り落ちるのを冷めた目で見下ろし、手を軽く払って血を落とす。

逃げ出そうとしている最後の一人の側の壁に向かって右手で暮刃を投擲。そこそこの力で投げたのだが、霊力で身体強化されているせいか鍔の所までめり込んだ。

「ひいぃっ!!」

腰を抜かしている男の側に近寄って暮刃を回収し、ケルベロスの銃口を突きつける。

「死にたくなければ全部吐け」

俺がそう言うと、男は面白いような勢いでペラペラ喋り出した。組織の構成人数、ビルの間取り、ボスの名前等々。聞いてもいない事まで喋ってくれたので有り難い。

「こ、これで許してくれるよな……?」

恐る恐ると言った感じで見上げてくる男に、オレはニッコリ笑って死刑宣告(現実)を突きつける。

「んな訳あるか。死ね」

何か口を開きかけた男の眉間にケルベロスを撃ち込んで殺害し、オレは通路の奥に目を向ける。

通路の奥に聞こえた多数の足音に向かってケルベロスをフルオートでブチ込んで射殺し、逃げ出した奴に向かって跳躍。片腕を圧し折って動きを止める。念の為さっき聞き出した情報と相違が無いか確認してから殺し、上の階に目を向ける。

聞いた話だと四階にボスの部屋があるらしい。地道にプチプチ潰して行くという手もあるが、見せしめにボスを殺してやれば士気も崩壊するだろう。

「機械室は……二階か」

聞き出した情報を元に二階に向かう。幾つか遭遇戦はあった物の軽々叩き潰して機械室のドアを開け、

「なっおまーーーー」

常駐していると思わしき敵の頸を捩じ切って始末してからコンソールに向かう。

対物隔壁を遮断し、各種警備装置を無差別攻撃モードに設定。これで暫くは動きを止められるだろう。序に正面エントランスの予備隔壁も起動して出口を封じる。

これで文字通りの鉄の牢獄が完成した訳だが、装備の量を考えるに、突破されるのも時間の問題だ。

「……おおよそ二十分ってとこか」

大体の見積もりをつけ、時間内にボスを殺す為の算段を建てる。

「………………………こんなもんか」

見立てはついた。あとは実行するだけだ。

「さて。俺を現世に呼び出した代価、その命で贖ってもらおう」

劇に出てくる大仰な役者のような仕草で両手を広げる。

柄にもない事だと理解はしているが、久し振りの外で少し気分がハイになってるんだ。少しは羽目を外してもいいだろう。

「どうぞ殺戮者(オレたち)が齎す盛大な殺戮劇をご覧あれ」

執事のように一礼をして、前を見据える。

これは一種のロールプレイのようなものだ。自身に与えられた役割を己だけでなく他人にも刻み込む為の通過儀礼。

「いざ、開幕なり……ってね」

軽く両手を打ち鳴らし、オレは歩き出した。




















カツ……カツ……カツ……

階段下で自身の靴の音が反響するのを聞きながらオレは耳を澄ます。

「………………………見ぃつけた」

出した音と帰ってきた音の違いを聴き比べ、敵の場所を特定し、位置を感じ取る。

「三階通路前に三人、通路右側に二人、左側に四人……か」

相当な人数だ。銃を持っているかどうかまでは分からないが、恐らく持っているだろう。

「さて、どうするか……」

まぁ、答えは単純だ。

……完膚無きまでにブチ殺す。

「そぉれっ!」

階段の中間に位置する踊り場に向かって跳躍。横壁に手をついて間髪入れずに再び跳躍を行い暮刃を抜刀し、三階通路前にいる三人の首を斬り捨てる。ケルベロスを上に放り投げて暮刃を納刀しながらオートマグを抜き非目視射撃(ブラインドショット)を決め、左側の人間を血と脳漿で出来たミンチに変えてから右側を見る。

右側をみると敵がマシンガンを発砲していた。迫り来るマシンガンの弾丸を目視しながらオートマグをしまって暮刃の鞘を払い、千個近い数の銃弾を全て叩き落とす。

お返しにと暮刃を柄に押し込んでケルベロスをキャッチしフルオートで鉛弾をプレゼントする。

二人分の血液と臓物と骨髄がバチャバチャと弾け飛び散るのを見ながらケルベロスを下ろす。空になったマガジンを新しい物に交換してスライドレバーを引く。ガギン、と小気味いい音と共に初弾が装填され、そのまま二、三回発砲すると、壁をブチ抜いて殺到した12.7×9mm弾が敵兵の体を貫通して血が向かいの通路から流れてきた。

念の為コツ、コツ……と壁を叩き、音を反響させて敵を探るが反応は無かった。

「こっからは一気にショートカットだな」

方法?勿論、

「そりゃぁッ!」

無理矢理に決まってんだろ!!

霊力を身体強化と防護に回して全力で飛び上がり放ったアッパーカットは、一階層を丸々貫き、ビルそのものを激震させ、瓦礫をこれでもかと吹き上げた。

自分で作った大穴の縁に着地したオレは、彼方此方から現れる400人近い敵を見てーーーーしかし凄絶に嘲笑っていた。

「いいぜぇ?来いよ。地獄の先まで懇切丁寧にご案内してやる。その先は知らねぇがなッ!!」

オレは敵の大群に飛び込む。

数の暴力がたった一人に、世界最強クラスの単体戦力に殺戮される蹂躙劇が幕を開けた。



















「う、ん……?」

目を覚ますと、そこに広がっていたのは赤だった。

見渡す限りの赤、紅、アカ。

最低でも数百人分の血と内臓とその他諸々で構成された赫原が僕の周りに形成されていた。

仰向けに寝ていた体を起こして周りを見ると、信じられない光景が飛び込んで来た。

「うっそだぁ……」

ビルの側にも幾つか建物があったはずなのだが、それが綺麗に無くなり、見渡す限りの大平原が僕の視界に存在していた。

僕が意識を明け渡したときにはビルはまだ残っていたので、辺りに瓦礫が散乱しているのを見る限り、最上階からビルごとブチ砕いて破壊したようだ。

それに、

「何だ……これ」

非常に物々しい武器が僕の手の中にあった。一応銃弾を抜き出す。

「12.7×9mmNATO弾……」

この形だと……M95の改造型みたいだ。一瞬どうするか考えたが、折角の置き土産だ。有り難く貰っておくことにする。

取り敢えず夥しい量の返り血が付着した制服(とは名ばかりの防弾服)を脱ぎワイシャツだけになる。

「……これ綺麗になるかなぁ?」

ビッチャリと付いた血を抜けるかかどうか、自分の知識と悪戦苦闘していると、後ろから声が掛けられた。

「つ……士、さん?」

「……マリア」

振り向くと、マリアが立っていた。数十メートルくらい離れているが、そのまま歩いて近づいてくる。

「駄目だ、マリア。汚れちゃうよ」

実際、幾つもの臓物が飛び散っている中を歩くのは相当に勇気のいることだろう。普通なら失神していても可笑しく無い。

けど、マリアは真っ直ぐ進んでくる。膝は震えているし、歩幅はゆっくりだけど、着実に歩いてこちらに進んできているんだ。

それが何を原動力としているのか、僕はしばらく理解できなかったが、マリアの必死そうな瞳を見て思い至った。

(成程……“恋は盲目”とは言うけど、まさかここまでとはね)

マリアは、僕に会いたい、話したい、という理由で死の匂い漂うこの場所に足を踏み入れたのだ。内に渦巻く恐怖の感情を必死に押し殺してまで。

とは言え、マリアの瞳は弱々しく、今にも崩れ落ちてしまいそうだ。考える事よりも、早めに支えに行った方がいいだろう。

「あ……ありがとうございます。士さん」

マリアの肩を支えてやると、マリアは弱々しく、けど確固とした意思を持った声で礼を言ってきた。

「いいから、離れよう。マリアだって血で汚れたくはないでしょ?」

軽く肩を押そうとするが、マリアは想像より強い力で僕の腕を掴んで離さない。

「士さん……私はーーーー頼りないですか?」

そのまま顔を固定し、目を強制的に合わせさせられて放たれる質問に、僕は返答が少し遅れてしまった。

誤魔化しは許さないーーーーそんな意思が込められた瞳を見て、

「……そう、だね」

一瞬嘘をつくかどうか迷ったが、正直に答えた。

「そう……ですか」

マリアは顔を俯かせて、声を出さない。

「兎に角、帰ろうか」

マリアの体を強引に体の向きを変えて前方に押し出すと、マリアは困ったような声を上げかけたが、素直に従った。

と言うより、血が既に腐り始めていて、ハイエナ等の屍肉を漁る生物の影が見え隠れしていたからだ。

軽く牽制の意を込めて殺気を放出すると、気配が遠ざかっていったのを知覚した。聞き分けがいい動物で良かったと思いながら、少し力を込めて帰りの足を早めた。

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