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NEXUS×NEXT  作者: HS
第3章 夏夜に踊るは刃と花火
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第二話 「女の子の心を弄ぶ罪は重い?」

集の号令で僕は一気にスラスターを吹かしマリアに接敵する。

僕は薙ぎ払いを加えるがマリアはバックステップで回避。距離を取った所で滑腔砲から弾幕の嵐が襲いかかる。

『ドライバー!回避を!』

「言われなくても!」

僕はマリアを中心とした円周機動でエネルギー弾を避け続けるが、マリアの照準補正によって徐々に被弾が増えてきた為、マリアに向けて突貫するがマリアも回避して機動戦に移行する。

ファフニールの最高速度はアロンダイトに劣るとは言え音速を超える。それを猛追する僕とマリアのドッグファイトによって撒き散らされる衝撃波は辺りの砂塵を巻き上げ局所的な旋風を発生させる。

「相変わらず出鱈目なスピードですね!」

「そっちこそ、馬鹿みたいな操作精度だ!」

マリアはアリーナの内壁を第二の地面に見立て恰もカーレースの様に動いている。アリーナの障害物を滑らかに避けながら戦闘機動を行うマリアの操作精度は驚嘆の域に値するだろう。

「ハァッ!」

「なっーーーー!?」

僕が光弾を発生させる術式を起動しようとした所でマリアがブーストを使い急速旋回。装甲脚を内壁に打ち付け大減速する。

恐らく術式を起動する際の空気圧の変化を“風聴”で捉えたのだろう。

だが悠長に言ってられない。

(ラピア、光弾の術式を直ぐにキャンセル。それとオーバーロードを!)

『オーバーロード・タイプブースト、起動します!』

装甲を開放してブースターが180°回転。同時に腰部スラスターも180°回転させて推力を噴き出させるが、音速を超えている20t近い金属の塊を停止させる事などそう簡単に出来る事じゃ無い。

残り100メートル、マリアは剣を振り上げる。

残り50メートル、僕も剣を下から出す。

0メートル、爆音。

ッドオォォン!!!

衝撃波が発生し土煙が立ち込める。

「おいっ、大丈夫か?!」

集がオープン回線で呼び掛けて来たが答える暇がない。

「クッ……」

「……中々、だね」

ギアのパワーアシストと身体強化術式の併用による全力の押し合い。一瞬でも気を抜いたら押し切られるギリギリの状態で刃を合わせる。

「……ハァッ!」

ここが勝負所だ。一瞬だけ力を抜いてマリアの刃を空振らせバックブーストし距離を取り、ギアウェポンを剣から弓へと変形させる。選択するのは直射ではなく散弾。

『エネルギー充填完了、発射!』

発射された無数の弾丸をマリアは鋭角的な三次元機動で避け、こちらに突進。僕はギアウェポンを剣に戻して再び近接格闘戦に入る。

「ハアァッ!」

「クゥッ………」

近接格闘なら僕の方が上だ。僕が少しづつ押している。と言うか、マリアの近接格闘が少し甘いのかな。ほら、

ガギイィン!

「キャァッ!!?」

隙が大きすぎるから、大振りな攻撃を行う暇を与えてしまう。

回し蹴りで地面に叩き落としたマリアに向かって最大加速で突撃。滑腔砲による反撃を詠唱した光弾で相殺して剣を振り下ろすーーーー寸前で止めた。

「はぁ……また勝てませんでした。降参です」

やれやれとでも言いたげに宣言するマリアを見て、僕はアロンダイトの展開を解除した。
















「さて、アルナさんに勝つ為にはどうすれば良いかな?」

模擬戦を終えた僕達(と、ギアから変化したラピアとリリア)はアリーナの一室で簡単な作戦会議をしていた。

「ドライバー。まず、アルナさんの機体はどんな物なのでしょう?」

「それは私が説明します。アルナの機体はハイエンドギア“ヨルムンガンド”。ファフニールと同じく風属性を優先した汎用型です」

「詰まり、何か特殊能力があるってことか?」

最近の機体には、魔術を改良した“固有術式”を搭載する機体が増えている(と言うか、アロンダイトのオーバーロードもこれの一種だ)。

「そうです。が、これについては何も言えません」

「……情報戦の公平を期す為か」

「ドライバー、どういう事ですか?」

「僕達が実戦稼動をしたのは何れも正式な場所じゃない。つまり、取れる戦法や情報が知られていないんだ」

機体の外観からある程度得意距離は推測できるかも知れないが、それだけだ。ロストギアはその程度で攻略できるほど安くはない。

「成程、そういう事ですか」

「別に破ってもいいんだけど、後で何か言われたときの為には、ね」

クラノディアも一枚岩じゃ無い。何かケチを付けてくる可能性は高い、ではなく絶対に有ると踏んでいる。この見解に関しては全員が一致している。

「……取り敢えずは補足されない為の超高速戦闘を主眼に入れて訓練しよう」

「そうだな、それしか無いか」

「それが現状で最も有効ですね」

結局、処置無しとなった。














「さて、これからどうしようか」

僕はホテルの一室でこれからの事を考えていた。

「ドライバー、ギアの演算機能を使用した仮想戦闘をしてみるのはどうですか?」

「そんな事も出来るのかい?」

それなら場所を取らないし、やってみるのも良いかも知れない。

「勿論。ギアは人類の総力を結集して作り出された兵器です。この程度は造作も有りません。ただ、私単体での演算能力では足りないので、リリアの手を借りる必要がありますが」

「……成程」

取り敢えずギア同士の通信回線で集を呼んで部屋に来て貰う。

「おう、来たぜ。……で、何が必要なんだ?」

不思議そうな顔をする集に要件を説明する。

「ふぅん……ギアの演算機能を利用した仮想戦闘ねぇ。……リリア、お前とラピアの演算能力で足りるか?」

「肯定。しかし、使用は一機のみに限定」

「一機だけか……俺とお前、交代でどうだ?」

こちらが提案している以上否やは無い。

「分かった。それで良いよ」

「それでは始めましょうか。リリア、手を出して下さい」

「了解」

リリアとラピアが手を繋ぎ、其処に僕が手を置く。

「始動キーは?」

「スタート・リンク、です」

「へぇ……じゃぁ、スタート・リンク!」

その言葉を口にした途端、意識が落ち込むような感覚を伴い僕の意識は暗転し、次の瞬間、何も無い真っ白な空間に投げ出されていた。

「って危な!」

何となく下に足を出すと、其処に水面に出来る様な波紋が生じ地面となった。

「さて。アロンダイト、展開」

早速アロンダイトを身に纏い臨戦態勢を取ると、空間に裂け目が生じ侵食者が這い出してくる。

更に辺りを見回すと真っ白な世界に輪郭線が描かれ、色付き、瞬く間に高層ビル群が出現していた。

先ずハイパーセンサーと探知魔術を起動し、このマップの三次元図形を頭の中で引いて叩き込む。敵の数は11体。魔術六国の国家代表レベルでもギリギリの数だ。

「………………………僕に死ねと?」

驚きに一瞬硬直してしまったが、慌てて取り直しラピアに声を掛ける。

『そんな事思ってる訳無いじゃないですか』

だよね。

『……一寸痛い目を見た方がいいなぁ、とは思ってましたけど』

………………………訂正、滅茶苦茶本気だ。

「………………………はぁ、仕方無い。やるしかないか」

『では、戦闘開始です』

僕は初っ鼻からオーバーロードを使ってブースターに火を入れて加速しながら、これからの事を考えていた。











「あぁ、疲れたぁ……」

結局、ギリギリの所で勝利を収める事は出来た。と言うか、本当にギリギリだった。

機体損傷率40%オーバー。僕自身も左腕骨折、右肩脱臼、左足欠損、全身打撲の大怪我を負い、帰ってきた時は久々にのた打ち回った。痛覚緩和術式何て言う便利な術式があの極限状況の中で使える訳も無く、左足がもぎ取られてからはいつ痛みで気絶するかとの戦いになっていたので仕方無い。

え?どうやってもぎ取られたかって?足を掴まれてブンブン振り回されてブチッて逝ったんだよ。あれは中々にショッキングだった。

「士さん!?目に光が灯っていませんよ?!」

「あぁ、ごめん」

「本当に……大丈夫では無いですよ。もう11時です。早く寝てしまいましょう」

「そうだね」

実際は明日デートがあるからコンディションを良くしてもらいたいって事なんだろうけど、勿論そんな事を言う程野暮じゃない。

「はい。では、お休みなさい」

そう言ってマリアは照明を落とした。
















実を言うと、自分で照明を消した後も私は寝付けませんでした。

いえ、興奮しているとかそういう問題ではなくて、単純に私の想い人がすぐ近くで寝ていると言うのが堪らなく想像欲を掻き立ててしまうのです。

勿論士さんは鉄壁と言ってもいい理性がありますからそこら辺の薄い本のような展開にならないのは十分承知しています。でも、もしかしたら……とか、そう言うのはありませんか?

………………………誰に説明しているんでしょうね。私。

“風聴”で士さんが完全に寝静まっているのを確認してそっとベッドから抜け出し、士さんの枕元へ移動して寝顔を覗き込みます。

学園に来る前は日夜激しい戦闘をしていたと言うのに、それすらも感じさせないあどけない寝顔に、こちらも笑みがこぼれてしまいました。

「……この位は、良いですよね」

彼の頬に顔を近付けて、短いキスをします。

……いつか、私のこの思いを伝える事ができますように。

「お休みなさい。士さん」

そう小声で言ってベッドに入った私は、何故だかよく眠れるような気がしました。

……ただ、ここで重大なミスを犯している事に気付かなかったのが私の不幸でしょう。












………………………朝起きたらマリアがすぐ側で寝ている件について。

(えっと……これはどう言う状況なんだ?)

まず落ち着いて状況を整理しよう。昨日の11時に僕とマリアはそれぞれのベッドで寝た。少なくともそれは間違いない。

……ラピア。僕の睡眠中に何かあった?

『ええ。それはもう色々と』

変だなぁ、僕は何も感知出来なかったんだけど……もう一寸トレーニングしようかなぁ。

って言うかラピア。気づいてたなら教えてよ。

『それは彼女が窓から飛び降りるのが見たいという事ですか?』

………………………うん。ごめん。無神経だった。確かにマリアなら恥ずかしさでそれくらいやりかねない。

……とは言え、これはどうするかなぁ。

僕の体はマリアにガッチリとホールドされていて抜け出せそうになく、足まで絡められているので下手に体を動かそう物なら何処に当たるか分かったものではない。

取り敢えずギアの通信で集をコール。

『ん?士か。どうしたんだ?』

起き抜けなのか寝呆けている声で応答する集。

『ごめん。今すぐ助けて』

『……何があった?』

おお、一気に眠気が吹き飛んだらしい。

『マリアにガッチリホールドされてて抜け出せそうに無いんだ。どうにかしてくれない?』

『………………………………………………』

………………………あ、終わった。

『精々頑張りやがれこの一級フラグ建築士』

ブツッ

え!?ちょっ、待っ、集!?

何度呼び掛けても返事がない。通信を切られたようだ。

……って言うか色々考えて冷静になった分すぐ目の前にあるマリアの端正な寝顔と柔らかな肢体の感触がダイレクトに伝わってきて理性がヤバイ。

えぇい、こうなったら最後の手段だ!

ドスッ!

「グハッ」

自分で自分の首に手刀を入れて気絶させると言う何とも馬鹿らしい方法で僕は寝る事に成功した。

「………………………ふぁ、おはようございま、ってえ!?ちょ、つ、士さん!?!?」

………………………暫く経って意識が回復した時珍しくあたふたするマリアの顔が見れたので、まぁ、役得だったと言っておこう。

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