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NEXUS×NEXT  作者: HS
第2章 刃に従うは優しき堅妹
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第四話 「己の罪科」

模擬戦が終了し、僕はアリーナのもう片方で行われている集対織奈&蒼華の試合に目を向けた。蒼華のウインダムの斬撃を集は機械腕に沿うように貼られたシールドで受け流す。と同時に集がバックステップすると、それまでに集がいた空間を織奈のバレットランチャーが通り抜けていった。

「本当にコンビネーション上手いんだな。びっくりしたぜ」

集が言う。まぁ無理もない。織奈と蒼華僕は昔馴染みで小さい頃はよく遊んでいたので息はぴったりだ。と言ってもあの一件以来疎遠になってしまったが。

「みんな、これで終わり。こっちに集合して」

僕が声を掛けると三人(とギアから戻ったリリア)はギアを解除して此方に来てくる。

「集、どう思う?」

取り敢えず感じを聞いてみる。

「コンビネーションはまぁそこそこだな。及第点って言う所か」

「……………」

集の評価は上々の様だ。リリアも同感らしく、しきりに頷いている。

「凄いな、君は。私とて剣の腕に自負は有るが、全く攻機を見出だせなかった。織奈の援護がなかったら負けていたのは私だっただろう」

「私もですね。援護射撃が全く当たりませんでした」

織奈と蒼華もこの結果には納得しているようだ。

「そう言えば、織奈はギアの調整は終わった?」

織奈のギアの情報を見る。ハイエンドギア『火之迦具土神(ヒノカグツチ)』。

現代のギアには珍しく、時空系統の術式に特化した機体だ。

ーーーー『時空属性』とは、火水風土の四大元素に加えられる5つ目の属性、『空』を指す物だ。

次元を屈折させる事で銃弾を反らしたり、空間を繋げて物を出し入れしたり、色々と応用が幅広い技術だ。

尤も織奈が未熟なせいで十全に性能が発揮できているとは言い難い。

それに、製造された場所が場所だ。

(AMI(Alias Mercenaly Industrial)社第四技術研究開発室。『血染めの第四研』、か……)

“多国籍軍需企業”の一番厄介な所からやってきた機体だ。まず禄な物では無いだろう。

ざっとスペックを見ただけでも、汎用型ギアの1.8倍近い数値を示していた。カタログスペックならファフニールをも僅かに凌ぐレベルだ。

「やっぱり、少し違和感がありますね」

「じゃあ、僕とラピアで調整をしておくよ。織奈も一緒にね」

ラピアの人間化自体はは少し前に成功している。歴代の所有者の作ったイメージを拝借したらしく、その姿に剣ヶ丘学園の制服をつけているので、ぱっと見生徒と見分けがつかないから重宝している。

「ラピア、出てきて」

「イエス。ドライバー」

アロンダイトが光となって解除され再び集まって女の子の姿を形作る。光が消えると、白髪蒼眼の女の子が立っていた。

「じゃあ、これで解散だけど、マリアと集、蒼華はどうするの?」

「俺は寮に戻るぜ」

「私も用事があるので…」

「わっ、私は…」

なんだ?蒼華が何か言いたげにもじもじしてるぞ?蒼華は数瞬躊躇ったあと話し掛けてきた。

「私も…その、出来れば同席させて欲しい」

別にそんなに秘密の事をするんじゃないし、良いだろう。

「いいよ。織奈とラピアも良いよね?」

「勿論です」

「いいですよ」

二人とも快諾してくれたみたいだ。

「よし、移動しよう」






話は変わってギアの整備庫。織奈にはヘッドセットをつけてもらっている。ギアへの発令や制御、ハイパーセンサーからの情報処理にも脳波を使うから、その計測だ。

「脳波パターン計測終了。OSへの変数代入を開始」

ラピアにはOSの書き換えをして貰っている。僕はソフトにあまり強くないからソフトの専門家が居てくれると心強い。

「ここの回路を繋ぎ変えて……ラピア、E13番端子をT05番に繋ぎ変えるから計算お願い」

「イエス。ドライバー」

僕はハードの微調整だ。途中で幾つか引っ掛かっていたゴミ(小型爆弾)を取ってそこに使っていた端子を繋ぎ変えたので操作性や敏捷性は以前より向上している筈だ。爆弾自体はラピアが首相官邸に空間転送術式で送りつけたので、今頃政府は対応におおわらわだろう。

「これでどうかな?織奈。乗ってみて」

「あ、はい」

織奈が火之伽具土神に搭乗する。織奈は頻りに驚いた様子で、

「……!、凄いです。なんとなくですけど、とても良いと思います」

と言って来た。爆弾の起爆に使っていた処理機能を本来の術式演算に回したのでレスポンスが上がったように感じただけだが、その微細なラグでさえも感覚として捉えてしまう織奈の勘は、ある意味異常だ。

そうーーーーまるで、未来でも予知出来るかの様に。

僕はこれを織奈の固有技能なのでは無いかと見ている。その為に僕は今日の脳波測定の序でラピアに織奈に固有技能があるかを調べてもらっていた。そして、

『……ドライバー。やはり、貴方の予想通りでした』

結果は……黒だった。

能力は恐らく未来視。人類の持つ直感の本当の姿とも言える力で、マリアにそれとなく質問してみた所、この能力を“千年に一人の確率で現れる超激レア能力”と言った程だ。

(……これで益々、織奈を留学させるのは駄目になったな)

織奈の留学自体は前から持ち上がっていた。織奈は身内贔屓かも知れないがかなりの美少女で、有名中学にいながら学校の成績も優秀。しかも家族がいない、有体に言ってしまうと手駒にするには想像を絶する良物件なのだ。

よって織奈をどこか外国に留学させて現地の有力者とパイプを作ろうと言う動きはあった。織奈に話を聞いたら、先生の方からも何回か打診がきたらしい。

しかし織奈は断り続けた。恐らく、直感に従った結果だろう。

しかも、織奈はほとんど気付かずに固有技能を行使している。熟練したマリアでさえ、一瞬意識を集中する必要があると言うのに。

能力的に言っても、もし向こうの検査で織奈の固有技能が発覚したら、文字通りホルマリン漬けになりかねないレベルの事だ。それを無意識に操れるのだとしたら、その生物学的有用性は計り知れない。サンプルを取る為とか言われて生きたまま解剖されるなんて事も十分にあり得る。

最低でも人権が保証されている国内にしか行かせられない。外国なんて以ての外だ。

兎に角、集とマリア、雷蔵さんに協力を仰ごう。集にはもしもの時の為の国家との取引材料を、マリアと雷蔵さんには日本やクラノディアと協定を結んでいる国々との折衝を。まぁ、今は織奈の事だ。

「お疲れ様、織奈。ゆっくり休んでね」

「はい!私に付き合って下さり、ありがとうございました!」

そう言って一礼する織奈。

「こちらこそ、どういたしまして」

「気にすることは有りませんよ」

そこまで気にしなくても良いと思うのだけれど。

「それでは、失礼します」

織奈はそう言って格納庫から退室していった。

「あれ、今の時間は…うわ、もうこんな時間か」

腕に巻いている時計を見遣ると時刻は6時25分を示していた。

「食堂に行こう。ラピア、これ鍵だよ」

ラピアに鍵を渡す。ラピアはギアの意識体で生活に食事を必要としない。だから僕達が食堂に行く時はお留守番をして貰っているし、部屋に入る時も生体センサーと霊力パスで僕達を認証出来るのでありがたい。

「確かに承りました。学園第一棟6087号室にてお待ちしています」

「よろしくね」

ラピアに鍵を渡して蒼華の方を向く。

「蒼華、今日はどうだった?」

「いや、その、何と言うか……凄かったな」

暫く言葉に迷ったような感じの後に来たのは、単純だけど賞賛の色合いが強い言葉だった。

「まぁ、僕はソフトにあまり強く無いから、誰かの手を借りなきゃいけないんだけどね」

「でも、だな……私は余り器用では無い方だから、こういう作業が出来るだけでも凄いと思うぞ」

はにかんだ様にして言う蒼華。風邪でも引いたかな?何か体に良い物でも選んであげよう。

「これから夕食を食べに行こうと思う所なんだけど、一緒にどうかな?」

………いや、本当は気付いてる。蒼華やラピア、マリア、織奈が僕に対して向けている感情は『恋愛』なのだと。僕はまだ気付いていない振りをして、一喜一憂させながら引っ張っているだけだ。

時折、自分の浅ましさに反吐が出そうになる。

ーーーー僕の目的は、今までの関係すら、ふいにする物だと言うのに。

「!……あぁ、良いとも。勿論だ」

飛び切りの笑顔で言って来た蒼華の顔が眩しくて、どうしても直視出来ない。

でも、いつか、きっと、この気持ちに整理がつけられる時が来るのだろう。その時まで、彼女達は僕と共に居るだろうか。

……取り敢えずは、目的を達成する為に力を蓄える事だ。

「それじゃ、行こうか。ラピアもついてきて」

「よろしいのですか?」

「どうせ部屋には集もいるし、大丈夫だよ」

「そういう事でしたら遠慮なく、ご相伴に預からせて貰います」

「急ぐぞ。早くしないと食堂が閉まってしまう」

蒼華から最速が入った。

「さ、行こうか」

……食堂に着いたは良い物の、カルボナーラが無くて思わず泣き崩れたのはいい思い出だ。

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