第三話 「マリアって良く考えたら本当に苦労人だよね」
投稿7日も空いてしまってすみません(汗)
世界の敵を倒す為の魔術学院と言っても、高校生活の花形である学園祭等は存在する。まぁ、たった二日だけだし、何方かと言うとプロガバンダ的な意味合いが強いのだけれど。そして、魔術学院では学園祭が行われるのが早い。僕達は6月上旬に行われる学園祭の出し物を何にするかを議論していた。
「何か出し物の案がある人は居ませんか?」
クラス代表のマリアかそう言うとたちまちクラスメイト達が我先にと意見を言い始めた。
「私メイド喫茶が良い!」「アタシ金魚すくい!」「僕は射的で!」「オレ食事処で!」「爆弾処理!!」
「えっと、メイド喫茶に、金魚すくいに、射的に、食事処に……爆弾処理?」
聖徳太子の如く聞き分けて黒板(電子黒板)に入力していくマリア。って言うか爆弾処理って何さ。
僕と集、織奈と蒼華は静観している。
「では、多数決で決めたいと思います。皆さん机に伏せて下さい」
マリアがそう言い皆もそうするので僕もそれに倣う。僕は射的に手を挙げた。メイド喫茶には悪い思い出しか無いからだ。
「……はい。多数決でメイド喫茶に決まりました」
げげっ……本当に?見た感じ集はメイド喫茶に投票したようだった。後で絞めてやる。
「で、次は親善試合なのですが…」
途端に教室が静まり返る。まぁ仕方無い。
親善試合とは、学園祭二日目の午後を丸々使って行われる各学年ごとの対人戦だ。その性質上(この競技の設定理由は魔術師に対する人々のイメージを良い物にする為の物だ)ハイレベルな試合が求められるので、どうしても一年からは立候補者が出にくい。それなら僕を出したいのは誰だって同じだろうが、
「念の為言っておきますが、士さんは出場禁止ですよ?」
僕は政府の重鎮にそこそこ顔が知れている為、下手に試合に顔を出そう物ならこの学校が標的にされかねない。尤も、クラスの面々は僕の持つ規格外な物のせいだと思っているみたいだが。
現状、僕は出場できない、織奈は僕が出させない、集と蒼華は様子見に徹している為出場しないので、実質1ー1の最高戦力はマリアと言う事になる。
「……なら、私が出場します」
そう言ってマリアが締めくくり、暫く授業をして放課となった。
侵食者の討伐を担う魔術学院では、生徒の自主鍛錬用にアリーナが放課後に開放されているが、手続きが死ぬ程面倒臭いので余程の用がない限り使用しないのだが、僕達にはマリアがいるので然程苦労しなかった(マリアに苦労を押し付けてしまっている時点で手遅れだが)。
「はぁぁぁぁッッ!」
ファフニールで斬り掛かってくるマリアのブレードをいなして回し蹴りを叩き込み反動で離脱しようとするがマリアは機械腕で受け止め滑腔砲で連射してきた。
『直撃コースは左肩、右腰、左脇腹です』
オーバーロード、起動。
『起動開始……完了しました』
バックブースト!
『ウイングユニットの180°回転を確認。オーバーロード、タイプブーストを起動。慣性中和術式、衝撃波緩和用エネルギーバリアも並列起動します』
後ろにグンッとかかる加速と共にスローになった視界に映る景色が凄まじい勢いで前方に流れていく。間合いを取ってマリアを見据えると、マリアは案の定驚いているようだった。
「オーバーロード、でしたか?随分早い加速ですね」
「まあね」
ラピアの話によると、十分な霊力があれば太陽重力圏からあっさり離脱する事も可能らしい。その分、霊力の消費も馬鹿にならないらしいが。
ただ、今の僕では、精々マッハ10辺りが限界なのだとか。これは単純な加速の限度と言うものではなく、その際に生じる副次的な物を軽減する術式の限界だ。僕は元々術式が得意ではないから、どうしてもそこら辺の演算はラピアにやってもらうしか無い。ラピアに出来る演算の限界。それがマッハ10なのだ。
逆に言えば、これは僕のスキルが上達すれば、更に加速をかけられると言う事だ。これからは術式も頑張って勉強しないといけない。
そんな事より、今はマリアとの戦闘だ。
「まぁこのオーバーロードは、加速だけじゃないんだけどね」
ラピア、オーバーロード、タイプアサルトを起動して。
『霊力充填を開始……完了。エネルギー炉から腕部ギアウェポンへのエネルギーバイパスを最大開放』
ギアウェポンの大型ブレードが弓型に変形し、中央に隠されていた砲口にエネルギーが充填されていく。コンマ5秒程の時間で収束した砲に発射の命令を送ると、渦の様に発射されたそれは慌てて回避したマリアを掠め、十枚あるアリーナの防護障壁を五枚貫通して止まった。間髪入れず近接して攻撃を繰り出すがマリアもブレードで防いだ。そのまま鍔迫り合いに移行する。
「馬鹿げた威力ですね」
確かに。ギアの防御術式と同じ物を付呪した強化ガラスを五枚ぶち破る威力は、端から見たら脅威でしかない(因みにガラスは自分で増殖修復するので問題はない)。
「まぁ、それは、ねぇ!」
『バレットランチャー展開。発射!』
一気に力を強くしてマリアのブレードを押し切り同時に光弾を連続射出する。然しマリアもさるもので、光弾発射用の魔法陣の位置から弾道を逆算し、風属性の初級魔術であるエアカッターで反撃してきた。
ギャギャギャギャギャンッ!!
僕の魔力弾とマリアの風の刃がぶつかり合う。霊力量は僕の方がだいぶ上回っているが対消滅したので少し驚いた。ここで攻めたい所だが念の為余った霊力弾を放つと案の定風属性面攻撃対個術式“エアバンカー”が発動した。恐らく条件発動式にしておいたのだろう。
僕の固有技能である存在探知は霊力をもつ生物にしか作用しないので、こう言う仕掛けられた魔術に引っ掛かりやすいのが難点だ。
「やはり引っ掛かってはくれませんか…」
心なし残念そうにするマリア。
「経験自体はあるからね」
ギアでの戦闘経験自体はなくとも、僕には裏社会で培った技術と勘がある。
対人戦と言うカテゴリーに限れば、僕はマリアよりも実戦経験があるのだ。
「はぁ……霊力切れですね。降参します」
マリアがギアの空間投影ディスプレイに表示された降参ボタンを押してこの模擬戦は終了になった。




