5羽
「2人とも、気を抜くなよ」
倒れたまま、ジッとハーピーたちを警戒するアルフレッドの低い声でルディとレンは武器を握り直す。
「ねぇ、レン。あなたは何か知らない?」
「何かって?」
「ハーピーのことよ。彼奴等の情報、魔法使いなら少しは知ってるんじゃない?」
上空のハーピーから目を離さずにルディはレンに尋ねる。
「おいおい、全ての魔法使いが博識だと思うなよ。賢者とかに聞けよ」
レンは呆れたようにため息をついて答える。
「それでも、俺たちよりは詳しいだろ?」
アルフレッドも、会話に加わる。
情報を聞きたいと言うよりも気を失わないように話すのが目的なのだろう。
レンはアルフレッドの腰の激痛に耐えて額から出る汗を見て「一般的な事しか知らないが」と前置きをする。
「ハーピーは見ての通り、鳥型のモンスターだ。上空からの奇襲を得意とする」
「確か、風の魔法が得意なんでしょう?」
「ああ、厄介な事にな」
「空から、風魔法で一方的に攻撃されたら手も足も出ないな」
舌打ちをして、そう吐き捨てるアルフレッドにレンは「その心配はない」と断言する。
「ハーピーの魔法は飛ぶ速度を増す程度のもんだ。たまに風の刃とか使うらしいが低級で射程も短い」
「成る程、それなら奴らの主な攻撃手段は、あの鉤爪か?」
「そうだな……………で?どうする?」
レンがアルフレッドを見る。
「普段なら、俺がパーティーの盾になって2人の遠距離攻撃でカタをつけるが………、俺は今は動けない」
アルフレッドは、そこで一息つくと短く「俺を囮にしろ」と指示を出す。
「アル!なに、馬鹿なことをいってるのよ!」
「これしか無いだろ?」
「シッ!2人とも待て、ハーピーが降りて来たぞ!」
アルフレッドとルディの口論が始まりそうになったとき、1羽のハーピーが3人から距離をとって地面に降り立つ。
12、3歳くらいに見える幼い容姿のハーピーの少女だった。
「ん!ンンンー!あっ、あぁ~!ゴホン!わたしの言葉ってわかる?」
「「「喋った!?」」」
突然、ハーピーの少女が羽を器用に口に当てたと思ったら、咳払いをして共通言語を話し出した。
「おっ、通じてる?良かった〜!アエローから、言葉を習っても使う相手がいなかったからねぇ〜」
「「「……………」」」
カッカッカと変わった笑いを上げる彼女に3人は沈黙する。
「ちょっ、ちょっと!何で何も言わないの?わたしの言葉、間違ってる?」
途端に焦り出すハーピーの少女。
「……………なぁ、レン。ハーピーって話せるのか?」
「いや、冒険者を罠に嵌めるために人族の声真似をするとは聞いた事はあるが……………、こんなに流暢に話せるとは聞いたことはない」
話すハーピーに驚き、固まるアルフレッドとレンを尻目にルディが口を開く。
「ねぇ!」
「おっ、やっぱり、通じるじゃん!なに?」
「私たちを見逃してくれない?」
唐突に彼女はハーピーへとそんな言葉を投げかける。
「ルディ!?」
「何言ってんだよ!モンスターと交渉なんてできるかよ!」
「黙って!モンスターでも言葉を話せるなら、もしかしたら」
「う〜ん。あんたら、何か勘違いしてない?」
「え?」
ハーピーの少女はムッとしたように3人を見詰める。
意図がわからずにルディは次の言葉を待つ。
「見逃すもなにも、そもそも襲う気ないし!」
「そうなの?……………モンスターなのに?」
「そうなの!まぁ、最初は助ける気も無かったけどねぇ」
彼女の口から出た助けるとのワードに3人とも目を丸くする。
「何故だ?どういう事だ?」
「あんま、喋らない方が良いよ。怪我したオッサン!」
「オッ!オッサン!?バカ言え!俺はゥ゙ッ!まだ……………」
「ちょっとアルは喋らないで!傷に触るわ!私が聞くから!」
オッサン呼ばわりされて抗議しようとするアルフレッドを抑えてルディは改めてハーピーの少女に向き直る。
「どうして、ハーピーが私たちを助けるの?理由を教えてもらえるかしら?」
「あ〜。説明は苦手なんだ、わたし。説明は今から降りてくるリーダーとケイスケに言ってよ!」
「ケイスケって、あのハーピーに吊るされてる子?」
ルディは、空で旋回している2羽のハーピーに吊るされた圭介を指さす。
「そだよ〜!だから、攻撃しないでよね!わたしは、それを伝えるために先に降りて来たの!」
「……………わかったわ。攻撃はしない。あなたたちが攻撃しないならね」
ルディが承諾するとハーピーの少女はニカッと笑って翼を大きく広げてバタバタと動かす。
「おお〜い、アエロー!良いってさ!降りて来なよ!」
少女の大声に3羽のハーピーと1人の少年が地上へと降りてくる。
「お疲れ、ルル!ありがとねー!」
「大したことないよ、リーダー!そんじゃ、後はよろしく!」
地上に降り立ったアエローがハーピーの少女、ルルを労うとカッカッカと独特な笑い声を残して空へと戻って行く。
そして、ツタに座っていた圭介も無事に地上に降り立つ。
「2羽とも、ありがとう!」
「大シタことないよ〜」
「ケイスケは軽イ!木ノ実以外ニモ肉を食ベル!」
圭介を運んでくれたハーピーたちも、そう言って空へと舞い上がる。
「……………さてと」
そうして、冒険者3人とアエロー、圭介だけになると改めて冒険者に向き直る。
そして、警戒の色を解かない彼らに向かって口を開く。
『ハジ↗メマシテ、僕の名前ハ↗ケイスケで〜す』
『『『ぷっ』』』
アルフレッドたちは変なイントネーションで話す圭介に思わず、笑いが漏れる。
「……………アエロー、通訳をお願い」
圭介は顔が赤くなるのを自覚して、潔くアエローに頼る事にする。




