13羽
「城壁より、報告します!荒れ地方面より、ハーピー2羽と少年を確認しました!」
カチッと踵を鳴らして領兵が報告をする。
「……………もう、来たのか」
「おいおい、マジで早いな!朝、飛んでいって昼前に戻って来れるのかよ!」
昨夜から、ギルドマスターの執務室で地図を広げて対策を協議していたカストーデス子爵とギルドマスターはハーピーの速さに、それぞれの感想を漏らす。
「今、冒険者レンが対応しておりますが、いかがされますか?」
「すぐに、ここへ通せ」
「ハッ!」
カストーデス子爵の命令に兵士は敬礼すると駆け足で城壁へと戻って行く。
「ケイスケか、どんなヤツだと思います?」
「会うまでは、何とも言えんな」
「確かに」
2人が、そんな会話をしていると程なくして扉を叩く音が響く。
「レンです。件の人物を連れて来ました、入ってもよろしいでしょうか?」
「うむ、入れ」
カストーデス子爵が許可を出すと、「失礼します」と前置きして扉が開く。
先頭にレンが立ち、その後ろから黒い髪と瞳を持った少年と2羽のハーピーが、ぞろぞろと入って来る。
「初めマシテ、僕ハ、ケイスケと言いマス」
少年は片言の共通語で挨拶をした。
「うむ。わしはカストーデス・フォン・アルガス子爵である」
「アルガス冒険者ギルドでギルドマスターをしてるバンガス・ドルトスだ。ギルドマスターでも略してもギルマスでも良い。好きに呼べ」
2人の権力者は挨拶を返すと目の前の少年をよく観察する。
不思議な少年だった。
自分たちを前にして緊張しているのはわかる。
しかし、それは権力者の機嫌を損ねれば良くて拘束、悪ければ縛り首などと浅はかな緊張をしている顔ではない。
十代の中頃だろう幼さを残す顔には緊張の中でも、ある決意が見て取れる。
「ウィッす!細いじいちゃんと大きいじいちゃん!」
「バカ!お前は黙ってろ!」
次にルルが翼を上げて元気に挨拶をすると隣に立っていたレンが慌てて口を塞ぐ。
「構わん。この場で無礼などと言うつもりはない」
「はっ、はい!ありがとうございます!」
「それじゃ、あたしも喋っても良い?」
物凄い勢いで頭を下げるレンを押しのけてアエローが圭介の隣に立つ。
「あたしはアエロー!群れの頭を張ってる!よろしく!」
「頭?君が群れのリーダーということか?」
「そうだよ〜!リーダーでも、女王でも好きに呼んでよ!」
アエローはフンスと偉そうに胸を張る。
後ろでは、レンはもう喋るなと言いたげに顔を青くしていた。
「ガハハハハハハ!良いねぇ!その態度、気に入った!」
「おう!ありがと、ギルマスのじいちゃん!」
アエローは、大笑いするギルドマスターのバンガスにニコッと笑い掛けた。
「自己紹介はもう良かろう。それでケイスケ君」
「ハイ!」
「あの子ら、ハーピーは君の使役下という認識で良いのだな?」
カストーデス子爵の質問に圭介は困ったような表情になる。
「使役……………使ウとは、違いマス」
「それはどういうことかね?」
「彼女タチは、仲間デス!僕が使ウ、チガウ!」
カストーデス子爵とバンガスは一瞬、目を合わせる。
「使役していない……………。それはハーピーが、お前さんの制御下にはないと言うことか?」
「ソレは……………」
「あたしが説明するよ!その方が手っ取り早いよ!」
圭介が返事に窮するとアエローが口を挟む。
「あたしたちは、ケイスケの言うことは聞くよ」
「なぜかね?」
「ケイスケは、あたしが決めた『番』だからね!」
「「「「番?」」」」
ルル以外の一同は思わず、聞き返す。
特に圭介は目を大きく見開いて驚いていた。
「番、伴侶ということか?」
「人族がモンスターの旦那ってことか?」
「人族の伴侶とか夫とかと同じかは知らないけど、その考えで良いよ!」
アエローは何でもないように頷く。
『アエロー!僕、聞いてないよ!』
『えっ?言ってなかった?』
圭介は顔を赤くして日本語でアエローに詰め寄る。
『圭介は……………嫌?』
アエローがズイッと下から、上目遣いで圭介を見上げる。
『えっ……………。嫌とかじゃ、なっ、無いけど……………』
思わず、そう口にするとアエローは『それじゃ、改めて決定!』と宣言してしまう。
「ゴホン。なるほど、つまりは群れのリーダーである君の番ならば確かに制御下にあると言えよう」
カストーデス子爵が咳払いをして話をまとめると改めて圭介とアエローに視線を向ける。
「今は状況が逼迫している。そんな中でどうしてもハーピーたちの力を借りたい。これはアルガス子爵領領主としての正式な要請である」
「ハイ!僕は皆サンを助けタイ、です!なので、その依頼ヲ受けます!」
「それは助かる……………。だが、その前に我々に確約してもらいたい」
「確約?」
「今後、ハーピーは人族を襲わない、さらわないという確約だ」
カストーデス子爵は厳しい目つきで圭介を見つめる。
「ハーピーは人族を襲わナイ!たまに荒レ地で亡くなッタ人族から珍シイ持ち物を取ッテいるダケです!」
「ほぅ、そうなのか?」
「そうだよ〜!死んだ人族の持ち物を取るだけで、あたしたちが襲うってしたことないよ」
眉間に皺を寄せて抗議するアエローにカストーデス子爵はふむと顎に手を置く。
「亡くなった人族から、物を取るのはダメだったの?」
「いや、冒険者ってのはな、自由に依頼を受ける。その結果、死んだら自己責任だ。そいつの持ち物なんかは発見した奴に所有権が発生するから、問題ない」
バンガスが、そう説明した後に一部、本人が確認できる物は持って帰る決まりがあるがなと付け足す。
「では、人さらいはどうか?」
カストーデス子爵はバンガスに目配せする。
バンガスは書棚から、一冊の記録を取り出す。
「記録では、25年前に冒険者をさらって行った記録が残ってるな」
「ソレは……………、アエロー?」
圭介は心配そうにアエローを見る。
しかし、彼女はキョトンとしている。
「それって……………ママの番、あたしのパパのことだよ」
「「「はぁ!?」」」
圭介の番発言以上に全員が目を剥いて驚愕する。
「待て待て待て!どういうことだ!?」
「えっ?何が?」
「いや、お前の父親のことだ!」
後ろのレンが全員の疑問を代弁する。
「パパは昔、荒れ地でママがナンパして番になったんだって!」
「……………ナンパって……………」
「お前らの生態に詳しく教えてもらえるか?」
バンガスの言葉にアエローは「良いよ〜」と呑気な声を上げる。
そして彼女たちハーピーの驚くべき生態を知る事になる。




