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全言語翻訳カンスト勢の悩み相談所 ~魔物の愚痴を聞くだけで世界征服しそうです~  作者: キュラス
天界からの超ブラック監査と、神様への極上ヘッドスパ

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宇宙最強の裏庭バーベキューと、星空を食べる秋の収穫祭

深淵(しんえん)の森』が、見事な秋色に染まり始めたある日のこと。

ボロ小屋の縁側で、干し柿の隣に腰掛けた俺、ジンは、高く澄み切った青空を見上げながら大きく伸びをした。


「いやぁ、すっかり秋だなぁ。涼しくなってきたし、食欲の秋だし……よし! 今日は裏庭で、みんなでバーベキュー(収穫祭)をやろう!」


俺がポンと手を叩いて宣言すると、ボロ小屋の敷地内にひしめき合う「規格外の同居人(ご近所さん)たち」が一斉に反応した。


「ばーべ、きゅー……? ジン君、それは下界の新たな神事しんじかい?」

ボロ小屋の裏庭に増設された『天界出張所(プレハブ小屋)』から、ヨレヨレのドテラを羽織った中年男性――宇宙のすべてを創り出した絶対存在たる『創造神(アルファ・オメガ)』(通称:社長さん)が、寝癖を掻きながら顔を出した。


「社長! バーベキューとは、人間たちが火を囲み、供物を焼いて神に捧げる血と肉の儀式フェスティバルのことに違いありません! 私が直ちに祭壇を組み上げましょう!」

その背後から、ジャージ姿のエリート大天使長ミカエルが、なぜか巨大な大理石の柱を担いで飛び出してくる。


「いやいや、ミカエルさん。祭壇なんて大げさなものはいらないですよ。レンガを積んで網を乗せるだけですから。ゼフさんとゾルギアのお爺ちゃん、火起こし手伝ってもらえますか?」


俺が声をかけると、縁側で将棋を指していた大魔王ゼアノスと、古代邪神ゾルギアが「任せておけ!」と立ち上がった。


▼▼▼


(…………本日の、一錠目。……ええ、朝食後ですが、すでに胃が悲鳴を上げています)


キッチンからその光景を眺めていた元・暗殺者のルミナは、真新しい胃薬の瓶を開け、乾いた音を立てて錠剤を噛み砕いた。

彼女の視線の先では、バーベキューの「火起こし」という名の、宇宙崩壊の危機が始まろうとしていた。


「フハハハ! ジン殿の宴とあらば、我が魔界の『煉獄の業火インフェルノ・フレイム』で一気に炭を熾してやろう!」

ゼアノスが指先にドス黒い炎を宿す。


『フォッフォッ。若いのぅゼアノス。炭の芯まで火を通すなら、儂の『深淵の黒炎(アビス・ファイア)』の方が適任じゃて!』

ゾルギアも負けじと、周囲の空間を歪ませるほどの熱線を吐き出そうとする。


「ちょっと待ってくださいませ! そんな邪悪な炎でジン様のお肉を焼くなど言語道断! 私の『聖なる浄化の炎ホーリー・パニッシュメント』で、お肉の罪(雑菌)ごと焼き払いますわ!」

エプロン姿の聖騎士クラリスが、聖剣を天に掲げて神聖な光を放った。


暗黒の炎、深淵の熱線、そして神聖なる光。

三つの相反する絶対的なエネルギーが、レンガで組まれたバーベキューコンロの中心で激突し――なんと、空間そのものが耐えきれずに圧縮され、直径十センチほどの『極小のブラックホール(超高熱の特異点)』が生み出されてしまった!


「ヒィィィッ!? ダ、ダメですわ! 火起こしで次元が崩壊してしまいますぅぅッ!」

クラリスが自らの行いを棚に上げて絶叫する。


だが、大量の炭と「100円ショップの焼き網」を抱えたジンが、のんきな足取りで近づいてきた。


「おおー! すごい! みんなで協力してくれたんだね。赤くてパチパチ言ってて、備長炭みたいに最高の火加減だよ!」


ジンが、その『超高熱の特異点(次元の崩壊点)』の上に、無造作に市販の木炭をザラザラと流し込み、その上から100円の焼き網をポンと乗せた。


カァァァァァァッ……!!!


ジンの頭上に浮かぶ『神使の輪(エンジェル・ヘイロー)』が光り輝く。

すると、すべてを呑み込むはずの特異点が、ジンの「最高の火加減」という認識デバッグによって強引に書き換えられ……本当に、ただの『遠赤外線をたっぷり放出する、極上の炭火』へとデグレードされてしまったのである。


「よし、火の準備は完璧! あとはお肉と野菜だね!」

ジンが笑顔で親指を立てる背後で、魔王、邪神、聖騎士は「……俺たちの全力の魔法が……着火剤に……」と、揃って白目を剥いていた。


▼▼▼


「ジン君! お肉なら、私に任せてくれないか!」

プレハブ小屋から、創造神(社長)が満面の笑みで巨大な「何か」を引きずってきた。


「これはね、天界の最深部に封印されていた『星喰らいの暴食獣アストラル・ベヒーモス』の特上ロース肉だよ! 宇宙空間を泳ぎ、星のコアを喰らうこの獣の肉は、一口食べれば細胞がビッグバンを起こすと言われているんだ!」


ドスゥゥゥンッ!!

庭に置かれたのは、ダンプカーほどもある巨大な肉の塊だった。表面には銀河の星屑のような光が脈打ち、ただそこにあるだけで、周囲の生命力を吸い取ろうとする恐ろしい瘴気を放っている。


「うわぁ……すごい霜降りだけど、ちょっと筋が多くて固そうなお肉だね。よし、ルミナ! あれ持ってきて!」

「あ、あれ……とは、まさか……」


「うん。魔界の闇市で買った『よく切れる包丁』!」


ルミナが震える手で差し出したのは、一振りで空間を切り裂くという魔界の国宝級魔剣『次元喰らいディメンション・イーター』だった。


「よし、まずは一口大に切って……と」

ジンが魔剣(包丁)を振るうと、神々すら傷つけることのできない暴食獣の肉が、まるで常温のバターのようにスパスパとサイコロ状に切り分けられていく。


「ちょっと固いお肉は、フルーツの酵素で漬け込むと柔らかくなるんだよね。すり下ろしたリンゴ(※一口で即死する殺人林檎)と、ハチミツ(※魔界蜂の猛毒蜜)、あとはお醤油を揉み込んで……」


ジンがジップロック(特大)に肉とヤバすぎる調味料を放り込み、素手でモミモミと揉み込み始めた。


『――警告アラート! 宇宙の禁忌食材と猛毒が混合され、致死率測定不能の劇物が生成されています!』

創造神の脳内システムがエラー音を鳴らし続けるが、ジンが肉を揉むたびに、その致死性の瘴気が『食欲をそそる芳醇なバーベキューソースの香り』へと魔法のように変換されていく。


「はい、仕込み完了! さっそく焼いていこう!」


(…………本日の、三錠目。私の胃壁は、あの暴食獣の肉よりも先に消化されそうです)

ルミナは、胃薬をボリボリと食べながら、もはやツッコむ気力すら失っていた。


▼▼▼


ジュウゥゥゥゥゥゥッ……!!!


特異点(炭火)の上の網で、漬け込まれた特上ロース(星喰らいの肉)と、畑で採れた野菜たちが豪快な音を立てて焼け始めた。

煙と共に立ち昇るその匂いは、暴力的なまでの「旨味の暴力」。天界にまで届いたその匂いにより、プレハブの屋根の上には、おこぼれを狙う天使たちが鳩のように群がり始めている。


「ピロリロリン♪ マスター、灰や煙のお掃除(抹消)はお任せニャン♪」

足元では、天界の殺戮兵器がアップデートされた『お掃除ロボット』が、紙皿を頭に乗せてクルクルと走り回り、空気を清浄に保っている。


「よし、焼けたよ! 社長さん、まずは一つどうぞ!」


ジンが、こんがりと焼けた肉を創造神の紙皿に乗せた。

創造神は、震える手で箸を持ち、その肉を口へと運ぶ。


『…………ッッッ!!!?』


噛み締めた瞬間。

宇宙の絶対神の脳内に、言葉では言い表せない「ビッグバン(旨味の大爆発)」が巻き起こった。


『な、なんだこれはァァァッ! 暴食獣の凶暴な肉質が、リンゴの酵素(ジンの魔力)によって限界まで柔らかくなり、噛むほどに溢れ出す星の命の輝き(肉汁)が……バーベキューソースの甘辛さと完璧に調和しているぅぅっ!』


「美味しいですか?」

『美味い!! 美味すぎるよジン君! 私は宇宙を創ったが、これほど美味いものは創れなかった! 私の三億年の歴史は、このバーベキューを食べるための前フリだったんだァァァッ!!』


宇宙の創造主が、紙皿を握りしめ、顔面を涙と肉汁でドロドロにしながら号泣した。


「ずるいですわジン様! 私にも! 私にも『あーん』して食べさせてくださいませ!」

天界最高監査局長のヴェリタスが、頬を真っ赤に染めて口を開けて待機している。

「ヴェリタス様、抜け駆けは許しませんわ! ジン様、私にも!」

「ルミナさんも一緒に食べましょうね。はい、クラリスさんも」


ジンが笑顔で肉や野菜を配り歩き、大魔王や勇者も「ジン殿の焼いた肉、最高だぜ!」「ビール(※魔界の血酒)が進むっすね!」と大盛り上がり。

もはや、種族も、次元も、神格も関係ない。

そこにあるのは、ただの「美味しいお肉を囲む、最高の町内会(ご近所さん)」の風景だった。


▼▼▼


「ふぅ、お腹いっぱい。さて、食後のデザートといこうか」


ジンが立ち上がり、裏庭の隅――かつて宇宙のバックアップデータである『創生の種』を植えた花壇へと向かった。

そこには、ジンが「ちょっと珍しい観葉植物」として育てていた、茎の中に星々が瞬く『銀河の花』が、身の丈以上に成長してそびえ立っている。


「おっ、ちょうど実がなってるぞ。秋の収穫だね」


ジンが指差した先には、花の中心からこぼれ落ちるように実った、スイカほどもある巨大な果実があった。

果皮は透き通るような瑠璃色で、その内部には、文字通り「極小の星雲」や「銀河の渦」が、ゆっくりと回転しながら閉じ込められている。


「ひぃッ!? じ、ジン君! それは『宇宙の果実(ユニバース・フルーツ)』! 創生の種が実らせた、新たな宇宙そのものだよ! 触れたら次元が……ッ!」

創造神が慌てて立ち上がるが、遅かった。


「よいしょっと。重たいなぁ。スイカみたいに切ってみようか」


ジンは、魔剣(包丁)を振るい、その『新たな宇宙』を、躊躇いもなく真っ二つにカパァッと割ってしまった。


パァァァァァァァァァッ……!!!


果実の中から、本物の星空のような圧倒的な輝きと、甘く爽やかな香りが庭いっぱいに広がる。

果肉には、星屑のシロップがたっぷりと詰まっていた。


「わぁ、綺麗! 中がキラキラしてるよ。みんな、デザートの『銀河メロン(仮)』だよ!」


ジンが、宇宙そのものを一口サイズに切り分け、みんなの紙皿に配っていく。


「…………本日の、五錠目。そして、これで最後の一錠です」

ルミナは、自分の紙皿に乗せられた「星空が詰まった果肉」を見つめ、静かに最後の胃薬を飲み込んだ。


「いただきます!」

ジンが、果肉をパクリと口に入れる。

「んーっ! 甘くてシャリシャリしてて、綿飴とメロンを合わせたみたいな味だ! 美味しい!」


ジンが笑顔を見せると、恐る恐る口に運んだ神々や魔王たちも、次々とその神聖な甘さに虜になり、「宇宙って……美味しいんだな……」と恍惚とした表情を浮かべ始めた。


▼▼▼


やがて、賑やかだったバーベキューも終わり、夕暮れ時。

西の空に沈む夕日が、ボロ小屋とプレハブ小屋をオレンジ色に優しく染め上げている。


庭のブルーシートの上では、お腹いっぱいになった天使たちや勇者レオが、幸せそうな寝顔で重なり合って眠っていた。

縁側では、大魔王と創造神が、麦茶を飲みながら「最近の若者は……」「いや、うちの天使なんかもっとひどくてね……」と、完全に近所のおじさん同士の愚痴をこぼし合っている。


「ルミナ、片付け手伝ってくれてありがとう。疲れたでしょ」

洗い物を終えたジンが、ルミナの隣に腰を下ろし、優しく微笑みかけた。


「……いえ。ジン様こそ、準備から何から、本当にお疲れ様でした」

ルミナは、空になった胃薬の小瓶をそっとエプロンのポケットにしまい、茜色に染まる空を見上げた。


(宇宙のすべてを創り出した神が、プレハブ小屋に住み着き。世界を滅ぼす魔王が、縁側でお茶をすする。そして、その中心には、いつもこの方が、何も知らずに笑っている……)


常識も、物理法則も、神の威光も、すべてが「ジンのスローライフ」という名のブラックホールに呑み込まれていく。

だが、なぜだろうか。ルミナの心には、恐怖や胃痛よりも、得体の知れない「温かい安堵感」が広がっていた。


「……ジン様」

「ん? なに?」


「明日の朝ごはんは、何になさいますか?」


ルミナが、暗殺者の冷たさを完全に捨て去った、一人の女性としての柔らかい微笑みを向ける。


「そうだね。少し冷えるようになってきたし、残ったお野菜で温かい雑炊にしようか。社長さんたちも喜ぶよ」

「はい。……ふふっ、本当に、大所帯になりましたね」


宇宙最強の戦力と、宇宙の創造主を「居候」として抱え込んだ、規格外すぎるお悩み相談所。

ジンが巻き起こす常識外れのデバッグ(勘違い)生活は、神々をも巻き込んだ新たな『家族の形』として、これからも果てしなく、そして平和に続いていくのであった。

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