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全言語翻訳カンスト勢の悩み相談所 ~魔物の愚痴を聞くだけで世界征服しそうです~  作者: キュラス
天界からの超ブラック監査と、神様への極上ヘッドスパ

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星の終焉を告げる地殻変動と、便利な「床下収納」(前編)

『深淵の森』のボロ小屋は、空前の「収納不足」に悩まされていた。

魔界の慰安旅行でジンが爆買いしてきた特級呪物(※便利グッズ)の山や、近所(エルディア王国や魔界)から日々送られてくる貢物の数々によって、居住スペースが圧迫され始めていたのだ。


「うーん、さすがに手狭になってきたな。野菜の備蓄もあるし、地下室か床下収納でもあればいいんだけど……」


ジンが縁側で麦茶を飲みながら呟くと、足元でピカピカに床を磨いていた『天界の自律型神罰兵器(※アップデート済)』が、愛らしい電子音を鳴らした。


『ご主人様マスター、お困りですかニャ? スペース拡張のため、周囲の森を半径10キロメートルほど消去(更地)にしましょうかニャ?』

「いやいや、森を削っちゃポチたちの遊び場がなくなるからダメだよ。まあ、ボチボチ片付けるさ」


平和な午前中。

勇者レオは畑で汗を流し、大魔王ゼアノスは居間のコタツ(※季節外れだが魔力で冷房仕様にしてある)で古代邪神ゾルギアと将棋を指している。

ルミナはキッチンで、魔界の魔剣(包丁)を使って軽快にキャベツの千切りをしていた。


その、究極のスローライフが。

次の瞬間、宇宙の根幹を揺るがすほどの『絶対的な絶望』によって、唐突に引き裂かれた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ…………!!!


「な、なんだ!?」

ジンが縁側の柱にしがみつく。

それは単なる地震ではなかった。星の奥底から、ドス黒い重低音が響き渡り、大気がヒビ割れるような悲鳴を上げ始めたのだ。


「……ッ!? この、おぞましい魔力の奔流は……ッ!」

コタツで将棋を指していた大魔王ゼアノスが、顔面を蒼白(そうはく)にして立ち上がった。

勇者レオも畑から転がるように縁側へ駆け込んでくる。


「ゼ、ゼフさん! 森の地下深くから、とんでもない『死の気配』が吹き上がってきてます! 勇者の直感が警告してます、これ、絶対にヤバい奴っす!!」


ズズズズズズズッ……!!

ボロ小屋の裏庭の地面が、大きく隆起し始めた。

空は瞬く間に毒々しい紫色に染まり、太陽の光が完全に遮断される。世界中のマナが暴走し、エルディア王国の魔導計器はすべて限界突破して爆発した。


(ば、馬鹿な……! この星の地下には、神話の時代に天界が封印した『原初たる混沌の牢獄タルタロス・ラビリンス』が眠っているという伝説があったが……まさか、それが現実だったというのか!?)

ゼアノスは、千年の治世で一度も感じたことのない恐怖に震えた。


▼▼▼


同じ頃。天界のシステム中枢もまた、阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。


「警報! 警報ォォォッ!! エルディア星の深部にて、物理的封印レベル∞の『タルタロス』が起動しました!」

「なぜだ! なぜ急に封印が解けた!?」


天使たちがコンソールを叩きながら絶叫する。

最高監査局長のヴェリタスは、モニターに映し出されたボロ小屋の裏庭の惨状を見て、血の気を失っていた。


「……あのボロ小屋に、宇宙中の特大バグ(邪神や神の兵器)を密集させたせいで、空間の質量ストレスが限界を超え……星の底にある『最も重いバグの牢獄』を物理的に引き上げてしまったのよ……ッ!」


ヴェリタスは震える声で真実を悟った。

タルタロス。そこは、宇宙が創生された際に生み出された「エラーの塊」たちが閉じ込められている、文字通りの地獄の底。

それが、ジンのボロ小屋の裏庭に繋がってしまったのだ。


「お、終わりだ……。あそこから這い出してくる『原初の怪物たち』は、ジンですら翻訳デバッグしきれないかもしれない……。宇宙が、終わる……ッ」

女神が、絶望の涙をこぼした。


▼▼▼


ゴォォォォォンッ……!!!


裏庭の隆起が収まると、そこには、巨大な黒曜石で作られた禍々しい『地下への大階段』がポッカリと口を開けていた。

階段の奥からは、触れただけで精神を汚染するドス黒い瘴気が、冷たい風と共に吹き出してくる。


「ひぃぃッ……! な、何ですかあの不気味な入り口は……! ジン様、絶対に近づいてはいけませんわ!」

クラリスが、聖剣を震わせながらジンの前に立ち塞がる。


「終わった……。世界は今日、この庭から滅びるのだ……」

ゼアノスが膝から崩れ落ち、古代邪神ゾルギアすらも「あの中には、儂よりヤバい連中がウヨウヨおるぞい……」と震えていた。


星の終焉。

神々すらも諦める、圧倒的な破滅へのカウントダウン。


だが。

その絶望の淵に立つ階段を覗き込んだジンは、パッと顔を輝かせてこう言った。


「おおーっ! すごい! このボロ小屋、裏庭に『床下収納(地下室)』が隠されてたのか!」


「…………は?」

絶望していたゼアノスとレオの声が、綺麗にハモった。


「ちょうど収納スペースが欲しかったんだよ! いやぁ、大家さん(※先代の勇者)、すごい設備を作ってくれてたんだなぁ。でも、ずっと閉めっぱなしだったから、ちょっとカビ臭い風が吹いてるね」


ジンの【全言語翻訳(Lv.MAX)】スキルにかかれば、世界を滅ぼす原初の瘴気も『地下室特有のカビとホコリの匂い』へと見事にデグレード(解釈変更)されてしまった。


「ジ、ジン様……!? あれは地下室などではなく、世界を滅ぼす迷宮の入り口……ッ!」

ルミナが必死に叫ぶが、ジンはすでに物置から懐中電灯(※魔力で光るランタン)と、ハタキを取り出していた。


「ちょうどいいや。午後はみんなで、この地下室の大掃除をしよう! 綺麗にすれば、魔界で買ったお土産も、王様からもらった貢物も全部収納できるぞ!」


『――推奨アクション。未知の領域の清掃作業ですね、マスター。徹底的な抹消おそうじ、サポートしますニャ!』

足元の円盤ロボットが、ガシャッと掃除ブラシ(※超振動カッター)を展開してノリノリで同意する。


「おっ、頼もしいな。よし、ゼフさん、レオ君! ちょっと力仕事になるかもしれないから、手伝ってくれる?」


「エッ……あ、我(俺)も行くのか……?」

大魔王と勇者が、絶望の大階段を前にして顔を引き攣らせる。


「うん! 暗いから足元気をつけてね。それじゃあ、地下室探検、出発ー!」


ジンは、麦わら帽子を被ったまま、ルンルン気分で『宇宙最凶の牢獄』へと足を踏み入れた。

その後ろには、猫耳ボイスの殺戮兵器がシュルシュルと続き、大魔王と勇者と暗殺者が、死地に赴く兵士のような顔で重い足取りを引きずるのだった。


天界が震え上がり、星が悲鳴を上げる『奈落の底の超巨大迷宮タルタロス』。

だが、そこは今日から、ジンの手によって「便利な床下収納(冷暗所)」へと強制的にリノベーションされる運命にあった。


(…………本日の、一錠目)

ルミナは、真っ暗な階段を下りながら、闇の中で静かに胃薬を噛み砕くのであった。

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