表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全言語翻訳カンスト勢の悩み相談所 ~魔物の愚痴を聞くだけで世界征服しそうです~  作者: キュラス
天界からの超ブラック監査と、神様への極上ヘッドスパ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/55

正妻戦争の勃発と、神をも喰らう(?)愛妻弁当

天界の最高監査官・ヴェリタスが、ジンのヘッドスパで骨抜きにされ、捨て台詞を残して天へ帰ってから数日。

深淵(しんえん)の森』のボロ小屋には、以前にも増して不穏な、そして妙に「甘ったるい」殺気が充満していた。


「……ルミナさん。最近、少し『受付嬢』としての自覚が足りないのではないかしら?」


キッチンの中心で、フリフリのエプロンを羽織った元・聖騎士団総長のクラリスが、ピカピカに磨き上げられたお玉を構えながら、氷のような微笑を浮かべた。


「あら、それはこちらのセリフよ、クラリス。貴女こそ、ジン様の『お掃除係』の分際で、少し距離感が近くないかしら?」


対する元・暗殺者のエルフ、ルミナも、包丁を指先で高速回転させながら、翡翠色の瞳に鋭い光を宿らせる。


二人の間には、世界を数回滅ぼせそうなほどの魔力火花が散っていた。

原因は明白。天界の最高位の女神であるヴェリタスが、あろうことか「定期的に抜き打ち監査ヘッドスパに来る」と宣言したことだ。


(……あの女神、ジン様の指先に弄ばれて、あんなにだらしなく蕩けた顔を見せておきながら……ッ! あれは監査などではない、あからさまな『略奪(りゃくだつ)』の宣戦布告だわ!)

ルミナの脳内では、ヴェリタスの再臨を「宇宙規模の略奪婚」として戦慄(せんりつ)と共に受理していた。


(神様だからといって、許せませんわ……! ジン様が一番信頼している『隣にいる女性』の座は、この私が、聖騎士の誇りにかけて死守してみせます!)

クラリスもまた、乙女の意地という名の『聖域(せいいき)』を全展開していたのである。


▼▼▼


「というわけで、ジン様! 今日は私たちから、日頃の感謝を込めて『特製お弁当』を用意いたしました!」


お昼休み。縁側でのんびり麦茶を飲んでいた俺、ジンの前に、ルミナとクラリスが二つの豪華な重箱を差し出した。


「おっ、お弁当? 二人で一緒に作ってくれたのか。ありがとう、嬉しいな」

「い、いえ! 一緒ではなく、それぞれが『究極の一品』を追求いたしました!」

「ジン様、どちらがよりジン様の『伴侶(胃袋)』にふさわしいか、ぜひ厳正なる審査をお願いいたします!」


「……審査? まあ、どっちも美味しそうだから、ありがたくいただくよ」


俺は、二人のやる気満々な様子に圧倒されながら、まずはルミナの箱を開けた。


「これは……すごいな。すごく凝ってる」


ルミナが差し出したお弁当。

そこには、黒い宝石のように輝く米の上に、魔界の高級食材『漆黒の魔鶏(ダーク・コケコッコー)』の照り焼きが整然と並べられていた。

彩りには、俺が育てた『殺人林檎(キラー・トマト)』や、毒を抜いた『呪怨(じゅおん)の赤林檎』のシロップ煮が美しく添えられている。


ルミナの【全言語翻訳】が脳内に響く。

『これこそが、ジン様のバイタルを完璧に管理し、あらゆる毒素を浄化し、なおかつ私の愛情(重め)を細胞レベルで刻み込むための、究極の「戦略的栄養補給(おべんとう)」ですわ! ヴェリタスのような外敵に付け入る隙など、栄養学的に一ミリも与えません!』


「へぇ、ルミナ。栄養のバランスまですごく考えてくれたんだな。すごく美味しそうだよ」

俺が一口食べると、口の中で肉の旨味が爆発し、全身の血流が良くなるのを感じた。


「うまっ! なんだこれ、元気が出るなぁ」

「ッ……!! もったいなきお言葉です!!」


ルミナが、感極まって「勝った……!」とガッツポーズ(音速)を決める。


▼▼▼


「次は私の番ですわ、ジン様! さあ、召し上がれ!」


次に、クラリスが自信満々に重箱の蓋を開けた。

カァァァァァァッ!!

その瞬間、箱の中から物理的な「光」が溢れ出し、周囲の木々が聖なる輝きに浄化されていった。


「うおっ、まぶしい!?」

「特製・『聖女の純愛オムライス(ホーリー・オムレツ)』ですわ!」


黄金色に輝く卵の上に、ケチャップで『LOVE(※神聖文字による強制祝福)』と大きく書かれている。

卵の下には、高純度の聖水で炊き上げられたライスと、一口食べるだけで寿命が百年延びそうな希少薬草がふんだんに使われていた。


クラリスの【全言語翻訳】が響く。

『これを食べれば、ジン様の魂は私の愛の光によって完全にコーティングされ、あの女狐……いえ、女神の誘惑など一切届かなくなりますわ! ジン様の体そのものを、私の愛の「絶対領域(ゼッタイリョウイキ)」にするのです!』


「……クラリスさん、これ、すごくあったかいね。気持ちがこもってるのが伝わってくるよ」


俺がスプーンでオムライスを一口運ぶ。

その瞬間、あまりの美味しさと、包み込まれるような「ぬくもり」に、思わず涙が出そうになった。


「優しい味がする。なんだか、すごく安心するよ」

「あぁっ……! ジン様……!!」


クラリスが頬を染め、恍惚とした表情でその場に崩れ落ちた。


▼▼▼


(…………現在、十五錠目。……限界です)


縁側の隅っこで、ルミナは空になった胃薬の瓶を見つめながら、虚無(きょむ)の瞳で天を仰いでいた。


彼女の目には、今の光景が『この世で最も贅沢で、最も恐ろしい呪力争奪戦』にしか見えなかった。

魔界の秘宝級食材と、天界の奇跡級の調理法。

その二つの力が、ジンの胃袋という名の『世界の中心(コア)』を奪い合うために激突している。


(ジン様は、その二つの巨大な『呪い(愛)』を、何食わぬ顔で同時に摂取されている……。片や魔力を限界まで活性化させ、片や聖なる力で精神をコーティングする……。このお方は、お弁当を食べるだけで、ご自身の「全能性」をさらに更新し続けているのだわ……!)


「あ、そうだ。二人とも、すごく美味しかったから、これからは毎日交代で作ってもらおうかな。一人の負担も減るし、色んな味が楽しめていいだろ?」


ジンののんきな提案。

だが、それがヒロインたちの闘争心に、さらなるガソリンを投下した。


「ま、毎日、交代で……?」

ルミナの包丁回転数が上がる。

「それはつまり、毎朝が『試練(オーディション)』ということですね……! 望むところですわ!」


「負けませんわ……! 毎日のメニューに、より高度な『愛の術式』を組み込んでみせます!」

クラリスの背後に、天使の羽(物理)がパッと開く。


「……え? あ、うん。二人とも仲良く頑張ってね」


(…………ダメだ。この小屋の「正妻戦争」は、ジン様が無自覚である限り、世界を巻き込んで永遠に激化し続ける……。ああ、誰か……誰か私の胃を助けて……)


ルミナは、新たな胃薬を求めて、ふらふらと納屋(薬草庫)へと歩き出すのであった。


その時、ポチ(フェンリル)が『ワォォォォン!(※俺も弁当食いたい!)』と乱入し、レオ(元勇者)が『あ、俺もっす! 俺もおかわり欲しいっす!』と割り込み、お悩み相談所の昼休みは、カオスな大宴会へと発展していった。


▼▼▼


一方、その頃。

天界の最高監査局。


「……ハッ!? い、いけないわ! 抜き打ち監査ヘッドスパの間隔を空けすぎてしまったわ!」


高級な神の椅子に座り、書類を投げ捨てて立ち上がったのは、女神ヴェリタスである。

彼女の鼻腔には、今もジンのボロ小屋から漂ってくる(ような気がする)香ばしいお肉と、炊き立てのご飯の匂いがこびりついていた。


「もし、あの人間たちがジンに美味しいものを食べさせて、私の入る隙間(胃袋の空き)を埋めてしまったら……! それは宇宙のコンプライアンスに関わる重大事案だわ!」


ヴェリタスは、頬を真っ赤に染めながら、自らも『天界最高の聖果実』を手に取った。


「見てなさい! 私も次の監査には、これを持参して『毒見(という名のあーん)』をしてあげるんだからッ!!」


ボロ小屋の平和なスローライフに、天界からの「女子力」という名の新たな脅威が迫りつつあった。

ジンが「最近、みんな料理に熱心だなぁ。料理教室でも開こうかな」と勘違いを深めていく第2章は、さらに賑やかさを増していくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ