表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/57

密室トリック③

「い、いえ、そういう意味ではありません。何故、寝室を密室にしなければならなかったのか?それを考えました。事件の発覚を遅らせるため。じゃあ、何故、事件の発覚を遅らせたかったのか?屋敷には俊一さんに飯田さんがいた。遅かれ早かれ、遺体は発見されていたでしょう。事件の発覚を遅らせたかった訳ではないでしょう。じゃあ、何故?犯人は部屋を密室にしたのでしょう?密室に見せかけることで、アリバイを証明したかったのではないか?そう考えました。

 犯人はこの部屋で西城春禰さんを殺害した。紐状の凶器で、絞め殺した。多分、身近にあるものを使ったのだと思います」と茂木が言うと、「何故、身近なものを使ったと分かるだ?」と柊が話を遮った。

「犯人は凶器を早く処分してしまいたかったはずです。遺体が発見されてから、直ぐに警察がかけつけて来ています。ゆっくり凶器を処分している暇など無かった。だから、部屋の中にあって、見つかっても違和感が無いものを選んだと思うのです」

「ほ、ほう~それは面白い。先を続けろ」自分で話を遮っておいて、「続けろ」はないだろう。

「はい。西城春禰さんを殺害した犯人はドアに鍵をかけ、窓から壁を伝って外に出ました。犯人は一旦、外に出ると、そのまま、車に乗って、旅館に向かいました。窓は開けっ放しでした」

「窓が開けっぱなしだった?」

「そうです。そして、犯人は旅館の前にある居酒屋に顔を出しました。そこにはマネージャーの加藤さんがいた。加藤さんが毎日、夜な夜な居酒屋に来て飲んでいることを知っていた。居酒屋にいなければ、旅館に尋ねるつもりだったのでしょう」

「待て、待て。西城春禰を殺害した犯人は、西城俊一だと言っているのだな?」またもや柊が話を遮る。

「そう思っています。密室の謎を解いてみると、犯人は彼以外、考えられません。西城俊一は『相談したいことがあるので、至急、屋敷まで来て欲しい』と春禰さんが言っていると加藤さんに伝えました。春禰さんは既に殺されています。これは、加藤さんに寝室のドアに鍵がかかっていることを確認させる為です。

 何も知らない加藤さんは、屋敷に春禰さんを尋ねます。寝室には鍵がかかっていて、会うことはできませんでした。その時、寝室の窓が空いていたのですが、わざわざ庭に回って確かめたりしないでしょう。しかも、夜中ですので、寝室の電気が消えていたなら、窓が開いているのかどうかなんて、分からなかったでしょう」

「ほ、ほう~それは面白い」と柊がまた言葉を挟む。茂木は軽く微笑んだだけで、話を続けた。

「居酒屋に戻って来た加藤さんと西城俊一は杯を酌み交わし、アリバイをつくりました。居酒屋に加藤さんが帰って来なくても、ずっと居酒屋にいるつもりだったと思います。

 居酒屋でたっぷり時間を潰してから、西城俊一は屋敷に戻りました。そして、今度は壁を伝って窓から寝室に侵入したのです。そして、窓に閉め鍵を掛け、ドアの鍵を開けて部屋を出ました」

「西城春禰殺害後、暫くの間、寝室の窓が開いていた訳だな。あの時分、気温は零下だったはずだ。遺体の腐敗の進行が遅れることになる。検死官は部屋に暖房が効いていたという前提で死亡推定時刻を計算しているから、死亡推定時刻に幅が出てもおかしくない」柊が呟く。

「はい。そのことも考慮に入れていたのかもしれません」

「そうか?あのぼんくらが、そこまで考えたとは思えないがな。偶然だろう」

「そうですね。いずれにしろ、西城俊一は春禰さんを殺害後、アリバイを作るために、加藤さんに寝室のドアに鍵がかかっていることを確認させる必要があった。

 密室を成立させるには、翌朝が勝負になります。そして、翌朝、家政婦の飯田さんが別荘にやって来ます。俊一は彼女がやって来るのを待ち構えていました。彼女が朝食の支度を始めると、起きたばかりの振りをして、階下に降ります。そして、彼女に、昨晩、西城春禰さんは頭が痛いと言って、薬を飲んで、一人、先に寝たと伝えます。そして、寝室に鍵がかかっていて、外から呼んでも起きてこないと言って、心配してみせます。

 飯田さんは俊一の朝食を食卓に並べると、二階の様子を見に行くために、一旦、応接間に行き、キーボックスから寝室の合鍵を取り出します。

 この時点で、寝室のドアには鍵がかかっていません。飯田さんが応接間に合鍵を取りに行っている隙に、西城俊一は二階に駆け上がり、寝室に駆け込みました。そして、ドアに鍵をかけると、ここ――」と言って、茂木はバスルームを指差した。「バスルームに潜みます。後は飯田さんがやって来るのを待つだけです。飯田さんは二階にやって来ると、合鍵で鍵を開けて中に入ります。ドアを開けると、真正面にベッドが見えます。ベッドの上の春禰さんが目に入ります。布団が乱れており、春禰さんは不自然に手足を広げている。様子がおかしい。飯田さんはパニックになります。

 飯田さんがベッドの上の春禰さんに気を取られている隙に、西城俊一は見つからないようにバスルームから抜け出すと、ドアの裏へ移動します。そして、飯田さんが悲鳴を上げると、いかにも、それを聞いてかけつけて来たかのように、背後から声をかけます。

 これで、密室が完成する訳です。合鍵を使うよりも、ずっと簡単に密室を作り上げることができます」

「ふん、子供だましのトリックだな・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ