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首相の発表に居並ぶ大臣たちは当初理解できず、ぽかんとした無感動な視線を注いでいるだけだった。農林大臣がおずおずと口を開き質問した。
「どういうことですかな? 今年は20XX年で間違いないのでしょう?」
首相は首を振った。
「わかりません。天文台からの観測結果が、1941年11月27日の惑星や、星座の位置と一致するという報告です。それ以外の推測は無理です」
農林水産大臣は苦笑しつつ言葉を継いだ。
「そんな馬鹿な……空の様子が過去の配置に戻るなんて、ありえません」
文部科学大臣がつぶやいた。
「もしも日本がタイム・スリップしたとしたら……」
全員、ぎょっとした顔つきで文部科学大臣を注目した。大臣は顔を赤らめ、照れ笑いを浮かべた。
「いや、昔読んだSF小説にそんなのがありましたな。馬鹿馬鹿しい話ですが」
かれの否定の意味の言い訳が逆に一同に深く考えさせる契機になったらしかった。全員無言になり、手元の資料を意味なくめくったり、頭を抱えた。
すると総務大臣が何かを思い出したように、顔を上げ口を開いた。
「そういえば、おかしな報告があった……」
首相は目を光らせ、総務大臣を見つめた。
「なんですか、そのおかしな報告というのは」
頭を掻きながら、総務大臣はぼそぼそとした声音で答えた。
「いや、北九州から朝鮮半島からのラジオ放送が妙な内容だったというのです。内容は韓国語と日本語の両方で、アメリカと日本がいよいよ開戦かというものだったそうです」
「日米開戦……」
防衛大臣がつぶやき、はっと何かに気づいたように顔色を変えた。
首相に向き直り真剣な表情になった。
「高畠さん、もしも日本がタイムスリップしたとしたら大変なことになりますぞ!」
首相はうなずいた。
「ええ、そうでしょうね。考えたくはありませんが」
防衛大臣は強く首を振った。
「そうではありません! 1941年です! それも12月が近づいております!」
首相はぼう然と防衛大臣の顔を見つめ返した。かれがこのようにあからさまに興奮する様子は、ただごとではなさそうだ。防衛大臣はゆっくりと言葉を重ねた。
「1941年12月です。このまま放っておくと……」
あっ、とこの中で一番年上の官房長官が口を開けた。
「1941年12月8日……!」
「そうです」
防衛大臣が念を押した。
「真珠湾攻撃です」
室内がしんと静まり返った。
防衛大臣は手元の端末を操作し、日付を確かめた。
「あと十一日しかありません」




