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作戦本部は混乱の極に達していた。
「ブラックアウト……」
ぼうぜんと立ち尽くした参謀のひとりがつぶやいていた。
突然、すべてのモニターからの情報が途絶え、真っ暗になったのである。あれほど鳴り響いていた外部からの通信も沈黙し、こちらから何度呼び掛けても応答がなかった。
「NO DATA」
「LINK LOST」
「SIGNAL LOST」
などの文字が無機質に表示されているだけだった。
「南西方面へ出した護衛艦は?」
「応答ありません。データリンクも全艦喪失しています」
「駄目です。こちらかの呼びかけに答えません。リンクも反応なしです」
「横須賀は?」
「在港艦とは連絡できます」
上級参謀の眉が険しくなった。顎の筋肉が盛り上がり、歯を食いしばって異常に耐えている。
「リンクが生きているのは?」
ようやく本来の任務遂行の意思がもどり、苦労してかれは冷静さを取り戻した。
「国内の基地からは応答があります。しかし地上部隊のGPSが効かなくなりました」
はっと参謀はあることに気づいた。
「沖縄からは応答があるか?」
その答えは無言で首を振る部下たちの顔を見れば一目瞭然だった。
どういうわけか、本土にある自衛隊基地からは正常な反応があるが、島嶼部にある基地からの連絡が一切途絶えているのだった。
と、一台の連絡装置がにわかに鳴り響いた。
ぎくりと参謀はその装置を睨みつけた。
在日米軍のひとつからの連絡だった。
無言で問いかける部下に、参謀は答えた。
「横田からだ」
さっとインカムをとりあげ、耳に当てる。イヤフォンから早口の英語が流れ出す。参謀は言葉の途切れるたびに、短く「イエス」「ノー」と簡単な応答を繰り返す。最後に長々とお互いの現状を繰り返し、通話は終わった。
それがきっかけになったのか、つぎつぎと国内在住の米軍基地から問い合わせの連絡がはいるようになってきた。そのすべてが、派遣中の米軍艦隊との連絡が途絶え、原因を探るものだった。
「どういうことでしょう。まるで、南西方面へ展開した部隊だけが、通信網から切り取られたようで」
「そんな馬鹿な!」
参謀は吐き捨てた。
じろりと文字だけの映っているモニターを見上げ、拳を握り締めた。
「なにかの妨害工作の可能性が考えられる。分析を進めるんだ」
ようやく作戦本部の全員が、参謀の言葉にわれに返ったように生き生きと活動し始めた。
その中で立ちつくす参謀は、結局原因不明のまま終わるのではないかと不安が募っていた。
また胃薬が必要になりそうだ……。




