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「なんでだよう!」
パソコンの画面をにらみ、青年はおもわず大声をあげてしまった。
いや、青年というのは若すぎまだ少年と言ったほうが正しい。年齢はまだ十代のなかばごろ。たぶん、高校も卒業していない。いまどきの少年らしく、部屋はきちんと整頓されているが、机の上には巨大なモニターがでんと据えられ、それでも足りないのかほかにも小規模のモニターが最新のゲームパソコンと接続されている。
画面に映されているのは、最新の大規模ネットワークRPGで、常時接続が数万人という規模を誇るゲームだった。そこでかれは、チームを組んでクエストをこなしていたのである。もちろん、クエストの仲間は世界各地のプレイヤーで、言葉の問題は同時翻訳の力で解消されていた。
いよいよクエストの終盤に近付き、最大の敵を倒す寸前まできていたのに、突然仲間の姿が凍り付き画面には「回線の異常によりゲーム続行不可能」というメッセージが現れたのである。
それだけでなく、肝心のゲーム画面も動かなくなっていた。このゲームはサーバー側でほとんどの処理を行うので、かれのパソコンでは単にコマンドを送信するだけの機能しか使わない。そのため低い処理能力のパソコンやゲーム機器でも遊べ、それが人気を後押ししていた。
少年のスマホが受信をしめすひそやかな音を立てた。
スマホを開き、メッセージ画面を表示させる。
”ゲーム止まっちまった!”
”回線異常ってなんだ?”
”動画も見られないぞ”
”そうかあ? こっちは引き続き視聴できている”
”今、車で移動中だけどGPSが動かない”
”何が起きているんだ、だれか教えてくれ!”
”わからん”
”わからん”
”わからん”
あとは混乱したメッセージが続々と表示されるだけだった。
少年はあわてて動画サイトを開いてみた。
メッセージにあるように、開けない動画と開ける動画がいくつかバラバラに存在していた。開けない多くは、海外発信のもののようだった。国内インフルエンサーの動画は、かなり視聴できていた。
ふと少年は窓を開き、外を覗きこんだ。
少年の部屋はマンションの上層階にあって、眼下に都会の風景が広がっている。
夜空を見上げ、少年は首をかしげた。
月が見えている。
半分だけ欠けた半月だった。
昨夜は満月だったはず……。
なんとなくだが、少年の胸に言い知れぬ不安が塊となって成長しているのを感じた。




