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飛行場では、オスプレイが着陸態勢へ入っていた。回転翼から叩きつけられる風が地表の土埃を巻き上げ、近づこうとしていた兵たちが思わず顔を背けた。帽子を押さえる者がいる。軍服の裾が激しくはためく。航空機は滑走することなく、その場でゆっくりと降下し、やがて車輪が地面へ触れた。
発動機は止まらなかった。
周囲へ兵が集まった。小銃を持った者もいる。将校が前へ出て機体を見上げ、別の兵が側面の日の丸を確認する。日の丸のほかにも日本語が書かれていたが、その所属名を見て誰もが首をかしげた。
陸上自衛隊。
聞いたことのない組織だった。
しばらくして回転翼の速度が落ち始めた。轟音が弱まり、巻き上げられていた土埃が地面へ戻っていく。それでも兵たちは機体を取り囲んだまま動かなかった。外板は滑らかで、鋲の並びもほとんど見えない。窓には透明な板がはめ込まれ、機首の形も軍用機らしくない。何より、翼端の発動機そのものが向きを変える構造になっていることが、近くで見ればはっきり分かった。
機体後部が動いた。
兵たちの小銃が一斉に持ち上がった。
後部扉がゆっくりと下がり、地面へ向かって傾斜路を作った。内部は外から見た以上に明るかった。そこから最初に現れたのは迷彩服姿の男だった。
日本人だった。
続いてもう一人。その後ろには背広姿の男たちがいる。
先頭の自衛官は傾斜路を下りると、取り囲む兵たちを見渡した。小銃を向けられても武器へ手を伸ばすことはなく、両手を見える位置に置いたまま立ち止まった。
「日本人か」
関東軍の将校が尋ねた。
「はい」
「所属は」
「陸上自衛隊です」
将校の眉間に皺が寄った。
「そんな部隊は知らん」
「承知しています」
「どこから来た」
「日本です」
「どこの部隊だと聞いている」
「20XX年の日本国から来ました」
周囲の兵たちがざわめいた。
将校の顔から表情が消えた。
「何だと?」
迷彩服の男の後ろから、背広姿の人物が前へ出た。
「日本国政府の特使です。関東軍司令官、梅津美治郎大将との面会をお願いします」
将校はしばらく何も言わなかった。
目の前の者たちは日本人にしか見えない。話している日本語にも外国人らしいところはない。しかし所属も、服装も、乗ってきた航空機も、何一つとして理解できなかった。
「身分を証明できるものは」
「あります」
特使は急な動きをしないよう注意しながら、書類を取り出した。
「ただし、これをご覧になっても、すぐには信用していただけないと思います」
「当然だ」
「ですから、司令部で説明させてください」
将校は書類を受け取った。
そこには日本語が書かれている。印刷は異様なほど鮮明で、紙質も見慣れない。日本国政府という文字があり、内閣総理大臣、高畠君枝の名が記されていた。
「女か」
将校が思わず漏らした。
「はい」
また一つ理解できないものが増えた。




