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洗濯バサミ2

第二話


「なんで挟んだ」


老人の家。



古い。



以上。



ユウの感想だった。



畳。


ちゃぶ台。


扇風機。


テレビ。


新聞。



全部ある。



全部古い。



老人が麦茶を置く。



「飲め。」



ユウは飲む。



老人も飲む。



沈黙。



飲む。



沈黙。



飲む。



沈黙。



ユウ


「帰るわ。」



老人


「待て。」



ユウ


「嫌な予感する。」



老人


「一つだけ聞く。」



ユウ


「何。」



老人


「お前、なんで洗濯ばさみ挟んだ。」



ユウ


「は?」



老人


「なんでじゃ。」



ユウ


「なんでって。」



ユウは考える。



「いつもやっとるやん。」



老人


「うむ。」



「だから。」



老人


「だから?」



ユウ


「いや。」



「挟むもんなんかなって。」



老人


「ほう。」



ユウ


「ていうか。」



ユウは身を乗り出した。



「なんで泣いてたん。」



老人


「それは。」



少し考える。



「終わったと思ったから。」



ユウ


「何が。」



老人


「分からん。」



ユウ


「分からんのかい。」



老人


「うむ。」



ユウ


「何なんお前。」



老人


「わしもそう思う。」



沈黙。



扇風機が回る。



カタ。



カタ。



カタ。



老人


「お前、思い出あるか。」



ユウ


「急やな。」



老人


「あるか。」



ユウ


「あるやろそりゃ。」



老人


「一個言え。」



ユウ


「嫌や。」



老人


「ケチ。」



ユウ


「何でジジイに言わなあかんねん。」



老人


「そうか。」



老人は麦茶を飲む。



ユウも飲む。



沈黙。



その時。



ふと。



本当にふと。



じいちゃんを思い出した。



大きなくしゃみ。



テレビ見ながら寝る姿。



みかん。



冬。



一秒。



それだけ。



ユウ


「……。」



老人


「あるようじゃな。」



ユウ


「何が。」



老人


「思い出。」



ユウ


「別に今のは。」



老人


「じいちゃんか。」



ユウ


「なんで分かった。」



老人


「当たった。」



ユウ


「当てずっぽうやん。」



老人


「うむ。」



老人は少し嬉しそうだった。



ユウ


「気持ち悪いな。」



老人


「そうか。」



ユウ


「てか結局なんなん。」



老人


「何が。」



ユウ


「洗濯ばさみ。」



老人


「洗濯ばさみじゃ。」



ユウ


「そういう話ちゃう。」



老人


「赤い。」



ユウ


「見たら分かる。」



老人


「百均にもある。」



ユウ


「知っとる。」



老人


「じゃろ。」



ユウ


「じゃろじゃない。」



沈黙。



老人は窓の外を見る。



橋が少し見えた。



老人


「明日も行く。」



ユウ


「橋?」



老人


「うむ。」



ユウ


「挟みに?」



老人


「うむ。」



ユウ


「雨でも?」



老人


「うむ。」



ユウ


「台風でも?」



老人


「一回飛んだ。」



ユウ


「飛んだんかい。」



老人


「追いかけた。」



ユウ


「アホや。」



老人


「うむ。」



少しだけ。



少しだけ笑った。



ユウ


「帰るわ。」



老人


「うむ。」



ユウは立ち上がる。



玄関へ向かう。



すると後ろから声がした。



老人


「明日も来るか。」



ユウ


「行かん。」



老人


「そうか。」



ユウ


「絶対行かん。」



老人


「そうじゃろうな。」



ユウは帰った。



帰り道。



橋を通る。



赤い洗濯ばさみが一つ。



風に揺れていた。



ユウは少しだけ立ち止まる。



そして思う。



「ほんまに何なんやあれ。」



第二話 終。


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