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そして、俺は扉を開けた 〜赤い部屋の契約者は怪異をもって怪異を狩る〜  作者: 御上ナモ


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30話

 そろそろ授業が始まる。

 もうアズサは出発した頃だろうか。

 向かう先は、確か関西。大阪と京都あたりを回る定番コースだ。

 昨日は早く寝たはずなのに、なんだか妙に疲れていた。

 隣の席にサキがいないことに気づいた俺は、あの日のサキを思い出す。

 あいつ、体調不良とかで欠席しないかな。あまり顔を合わせたくはない。

 そんな不謹慎なことを考えている自分が嫌だった。

 脳裏に「いなくなっちゃえばいいんだ」という幼少期の俺の甲高い声が響いた。

「あるわけ……」

 そう、笑おうとした自分の顔がこわばっていることに気づいた俺は、何よりもそのことにぎょっとした。

 おいおい、なにマジになってるんだ俺。落ち着け。

 そう冷静さを保とうとして周囲を見回すと、なんだか周りの様子が妙にうざったく感じてくる。

 こっちがイライラしていても、周りの世界はなんの問題もないです、と言わんばかりの様子で進んでいた。

 ざわついている周囲の会話が聞こえてこないように、俺はワイヤレスイヤホンから音楽を聴くことにした。

 画面をタップすると鳴り始めるのはアズサと言ったカラオケでもながしたあのアニソン。

 でも、今日は妙に周りがうるさかった。

 いつもなら音量はこのくらいで十分なはずなのに、全然歌詞が聞き取れない。

 逆にイライラが助長されているように感じた俺は諦めて音楽を止めた。

 どっちにせよそろそろ授業が始まる頃合いだ。

 一限目は白宇根先生。

 あの人も忙しいだろうに、何が楽しくてうちの教員なんかやってるんだろう。

 そんな風に思いながらも、俺は白宇根先生の授業がそこまで嫌いなわけではなかった。

 授業自体もちゃんとしているし、何よりも先生自体が経験豊富なエリートである。

 妙に実務的な話が多いなとは前から思っていたが、そのタネを見破ったような気がして、実のところ俺は結構彼女の授業を楽しみにしていた。

 だからこそ、教室のドアを開けて入ってきたのが後退した前髪の別教員だったときはがっかりした。

 なんだ、今日は休みか。

 そう落胆した俺とは裏腹に周りのざわめきが一層大きくなった。

「授業を始めます!静かに!静かに!」

 教壇の上に立った男性教員がそう声を張り上げているが生徒たちはまるでそれが聞こえていないかのようにスマートフォンの画面を見せ合っている。

 あれは、ニュースサイトか何かだ。

 流石に気になった俺も端末を取り出した。

 本来授業中は使ってはいけないことになっているが、周りがあれだけ堂々と使っていたら俺だけを取り上げてあれこれ言われることもないだろう。

 そしてニュースサイトを立ち上げた俺は凍りついた。

 クラスメートたちがあれこれと騒いでる記事がどれか、探す必要もなかった。

 ずらっと並ぶタイトルの上から三番目。

 現職術師、鏡野レンヤ(28)死亡。術師統制局付き術師の白宇根マコ、並びに彼女の教え子である崎宮サキが重傷。

 周りの声がやたらに反響して、頭の中を喚き散らしている。

 寒々とした隣の席は、何も言わずにただそこに存在しているだけだった。

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