↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして、俺は扉を開けた 〜赤い部屋の契約者は怪異をもって怪異を狩る〜  作者: 御上ナモ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/40

28話

「——なんでだ!僕はずっと君のこと信じてたのに!」

「——ふっふっふ。はーはっはっは!」

 俺はアズサと家で映画を見ていた。

 テレビではなく、アズサの私物のホームシアターを使って。

 見ているのは去年の夏頃に話題になっていた洋画の続きもの。

 別に特別面白いとは思わなかったが、アズサが楽しそうにしているので俺も楽しい。

 実は、アズサは意外とこういう定番系の映画が好きだったりする。

 彼女の自室には中古で集めた数々の名作映画のDVDが綺麗にラックに並んでいるのだ。

 でも、俺の頭の中はサキとの喧嘩別れのときに話したことでいっぱいだった。

『……私は一人でも……黒炎事件を追う……誰の助けも借りない……』

 映画に意識を集中させようとしても、俺の思考は散り散りに乱れる。

『なーなーアズサと付き合えればそれでいいのか?』

 なぜか、昔の俺の声で、そんな言葉が聞こえる。

『……私の親友を殺した犯人は、私が絶対に見つけ出す』

 今度はそう言っているサキの声が聞こえた。

「——ぁ」

「——ぉ」

 映画のキャラクターが何を言っているのかがうまく聞き取れない。

 映像もよく分からないグチャグチャが濁流のように流れていくようで、まるっきり意味をなさない、ただの模様にしか見えなかった。

 アズサに見えないようにポケットのスマホを触ると、待受画面にはニュースサイトの通知がざっと並んでいた。

 黒炎事件の再来!?

 黒炎事件の犯人は警察上層部だった?

 黒炎事件は——。

 気づけば俺はスマホの電源を切っていた。

 昔の俺の検索履歴に応じて表示されてしまっているのだろう。あとで履歴を消しておかなければ。

 でも、もしフミが真犯人じゃなかったとしても。

 犯人が誰かなんて俺には関係ないんじゃないか?

「ねぇねぇ、トモ君。洋画のキスシーンって妙に長くない?」

 不意に聞こえたアズサの声で、俺は我に返った。

 画面に目を向けるとムーディーな音響の中で主人公とヒロインが熱烈にキスを交わしている。

 なんだか居心地が悪いような気がしてアズサの方を見ると、何かを察したようなアズサがそっと目を閉じてきた。

 あ?うえ!?そういう意味じゃないのに!

 混乱の渦に叩き込まれた俺がワタワタとしていると、急かすようにアズサがこちらへと手を伸ばしてきた。

 俺はアズサへと手を伸ばし、洋画のキャラたちとは違ってライトに、ただ触れるだけのキスをした。

 人生二回目のキスだった。

 顔を離したアズサは上気した頬に笑みを浮かべて囁く。

「2年生は明日から修学旅行だから、その分前借り」

 ホームシアターよりも眩しいアズサの顔は、いつにも増してカッコよくて可愛かった。

 そのあと、買い損ねたものがあると言ったアズサがどこかへ外出し、俺は微妙に頭が痛かったこともあってさっさと寝ることにした。

 そういえば寝る直前にふと思い出したことがある。

 どこか不安そうな色を紫紺の瞳に滲ませて上下黒の服に身を包んだ幼いアズサ。

 彼女に行った言葉。

 あのとき思い出せなかった、昔の俺が言った言葉。

「……お父さんもお母さんも、いなくなっちゃえばいいんだ!」

 そうだ、昔の俺は確か、そう言ったんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。