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そして、俺は扉を開けた 〜赤い部屋の契約者は怪異をもって怪異を狩る〜  作者: 御上ナモ


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27話

 その締め切られた空間には、ひどく不愉快な空気が充満していた。

 鬱屈。閉塞。八方塞がり。

 そんな言葉がモヤとなってその空間に満ちているようだった。

 コンクリートが剥き出しになった壁には1箇所だけ分厚いハーフミラーが嵌め込まれており、外部から一方的に内側を覗けるように加工されている。

「おい!そろそろ何か言ったらどうなんだ!」

 室内に置かれたそっけない椅子には不機嫌だと明確に顔で示している初老の男が拘束された状態で座らされていた。

 眉にも髪にも白いものが混じり始めたその男の顔はどこかフミに似ていた。

「……何もいうつもりはない。何度も言っているのだが、君には日本語が通じないようだ」

「ああ!?」

 対面の席にはキャッチ風の術師、鏡野レンヤが机をコツコツと叩きながらいくつかの質問を投げかけている。

 しかし、男は全くその質問に答えるそぶりを見せない。

 鏡野が何度か凄んで見せても、男は全く聞く耳を持たなかった。

「そもそも仮にフミが犯人なら最初の事件はどうなる?あの子があの事件の当日、海外に居たことくらい、調べがついているだろう?その部分はどうなっているんだ?」

 腹立たしげに机を叩いた鏡野がそう怒鳴るも、男はその様子を歯牙にもかけずに馬鹿にした様子を隠さない。

「……ッ」

「答えられなくなったらだんまりか?」

 苛立ちを抑えきれなくなった鏡野が机をバンバン叩きはじめた。

 反響した音が部屋の外に漏れ聞こえてくる。

 その様子を外からハーフミラー越しに覗き込んでいた白宇根マコは諦めたように呟いた。

「このままでは埒があきませんね……。状況証拠から見て、二階堂フミは自身の父親に犯行が勘付かれていることには気づいていなかったのでしょう。そして、あの男はスケープゴートを用意してからフミを幽閉でもするつもりだった、とみるのが自然です。まあ、ダメで元々です。とりあえず二階堂フミが死亡したことを伝えてみましょう」

 近くに控えていたスーツ姿の男性は、その冷え冷えとした発言を聞いて、近くにおいてあった受話器を取る。

 鏡野へ彼女の死亡について伝えるように指示を伝えた。

「ん?」

 耳元にイヤホンジャックを突っ込んでいた鏡野は一度口を閉じるとそれへ指を当てる。

「あーはいはい」

 鏡野の様子が変わったのをみて、男はぴくりと眉を動かした。

 鏡野は特に顔色を変えることなく、内容を復唱した。

「3日前、7月18日。二階堂フミ死亡——」

 鏡野の発言を聞いた男は話にならんというように鼻を鳴らす。

「それは脅しか何かのつもりか?趣旨が全く……」

「——死因は自身の異能による焼身自殺」

 そう言った後、鏡野は黙り込んだ。

 男は、鏡野の纏う雰囲気を見て、単なる脅しではないということを察したようで顔色を変える。

「……」

 鏡野は淡々と追加情報を付け加えた。

「彼女の脱走を企図した三谷ランゾウが彼女の拘束具を外し、二者は逃走。監視カメラには三谷が回収していた押収品のスマートフォンをフミが操作した後、能力を暴走させた彼女が自殺する様子が写っていた」

 鏡野が話し終える寸前、男は激昂したように怒鳴り始めた。

「適当なことを言うな!そんなこと、信じられる訳……」

「監視カメラの映像だ」

 ポケットから指定のスマートフォンを取り出した鏡野は、とある動画を再生してみせる。

 フミと男が立っていた。

 男から奪い取るようにスマートフォンを取り返したフミが手元を覗き込み、しばらくの間たたずんだ後、画面が真っ白になり——。

 ——そこで映像は途切れていた。

「……お、おぉ、フミ……」

 呆然と言葉をこぼした男は力無く項垂れた。

「……そんでさ。黒炎事件は最初からあんたとフミが共謀してやってたのか?目的は……」

「あの子は犯人じゃない!」

 男は唾を吐き散らして吠えた。

 嫌そうな顔をした鏡野が呆れた顔をして首を振る。

「そりゃ、無茶ってもんだろ。だいたい……」

「あの子は人を殺せるような子じゃない!なんでそんな簡単なことが分からない!?」

「……」

「フミじゃない、フミじゃない……」

 その後も同じ言葉を呟き続ける男を見ていた白宇根は、眉根を揉んでからため息をつく。

 彼女がその場から離れた後も、男の口からはただ否定の言葉が出てくるのみだった。

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