25話
夏場はいつも作り置きをしている麦茶を飲んで一息をつく。
背は居間のソファに預けていた。
家に帰ってきてから、はしゃぎ疲れたらしいアズサはさっさと寝にいってしまった。
今日は二人で色々な場所に行ったし、カラオケでも歌っていたのはほとんどがアズサだった。
そして最後に……俺はアズサに想いを伝えて、アズサもそれに答えてくれて。
俺の心は生まれてから一番、満たされていた。
脳裏にアズサの声が蘇る
「そう、冗談。とりあえず、今日のうちはね」
今日のうちは、今日のうちはってなんだ。明日は、その、そういうコト的なアレなのか!?
そんなふうに騒ぎ出す脳内の俺をペシっと払いのけるように俺はソファから立ち上がると、キッチンへ向かう。
明日くらいは朝ごはんを豪華にしたってバチは当たるまい。
俺は冷蔵庫を開けて食材を取り出すと、いつもの癖でテレビをつける。
寝ているアズサを起こさないように音量を絞って。
フライパンに火をかけて、レンジに切った玉ねぎを入れて1分。
炊飯器に米をセットしてタイマーを設定して。
蛇口を捻って、手を拭いたところで、俺ははたと動きを止めた。
——何かが変だ。
パッキンに詰めたトマト煮込みの鶏肉を取り出すと味見をする。
うん、胡椒がもうちょっと強くてもいいけど、朝ごはんだしこのくらいでいい。
料理におかしなところはない。
食卓の上からエアコンのリモコンを取り出す。
設定温度はいつも通り二十七・五度。何も変じゃない。
残るはテレビ。
俺はテレビのリモコンを手に取り、音量を上げた。
どこかのライブ中継だ。
殺風景なコンクリートの建物の窓から炎が上がっている。
野次馬の騒ぐ声や、消防士が慌ただしく動き回る様子。
消防車のサイレンの音がテレビのスピーカーから漏れ聞こえてくる。
その見覚えのない建物の前でニュースキャスターが興奮した感じで話していた。
「——速報です。先ほど起こった火災で、黒炎事件の重要参考人として身柄を確保されていた——」
鈍い音を立てて足元に何かが転がる。
俺は自分が手に持っていたリモコンを落としたことにも気づかず、ただ愕然と目を見開いてテレビの画面を見つめていた。
「——二階堂フミさんが死亡したとの情報が入ってきました」
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