20話
車のヘッドライトが遠くに見える。
フミが乗っている車のライトだろう。
「鏡野……私の足を引っ張ったら……殺す」
「はっ、そいつはこっちのセリフだチビロリ」
俺は発現させた背の黒い毛を何となく撫でながら周囲の心の声を集める。
警官側の人員がかなり多いな……。
屋敷に入られたら令状やら何やらを取らないとどうしようもなくなってしまう。
さらにはフミの父親は警察組織のトップ。
実質的にフミに手を伸ばすことは不可能になるだろう。
だが、まだフミを乗せたリムジンは公道を走っている。
無理やりここでふんじばって仕舞えばどうにでも転がせるってことだ。
マコっちゃん——白宇根マコ、俺の直属の上司のロリ巨乳は初っ端は出張らず、俺とチビのJKがメインで戦うことになった。
そして比良坂トモは直接戦闘力はないのでボッシュート。
あいつ、呼んだ意味あったのか?とも思うがマコっちゃんはそういうところは抜け目ない。何か狙いがあるはずだ。
おそらく教師なんかをやっているのにも何らかの思惑があるんだろう。
多分、きっと。
単なる趣味だったらその分こっちに仕事来てるんだからぶっ殺す。
初手は、俺とサキによるフミの乗る車の襲撃。
そして奴をひっ捕らえてさっさと術師統制局に連れ込んでしまえばあとはこっちのもの。
「ということになっているが、向こうさんもそりゃそう簡単には通しちゃくれねぇよな」
俺は前方の人影たちを見てため息をついた。
明らかにこちらを認識している。
上に、それぞれにオーラを纏ったり体の一部が異形になっていたりとどう見ても術師だ。
こっちは数少ない手勢で強行してきたってのに、向こうは何人いるのやら。
一旦一当てしてみることにして一番心の声がびびっているやつを仕留めに行く。
だが、そいつは気弱そうな顔をしている割に防御が固い。
そして、周囲の奴らの援護がうぜぇ!
こっちの戦闘のテンポ感がバレてないうちに正面から突っ込んで一人くらい持っていきたかったがそうも簡単にいかない。
向こうもそれなりに手だれをそろえてきている。数だけじゃない。相手も本気を出してきているということだ。
そして、データベースから俺の弱点が割れている。
俺は先読みをして常に相手に有利を取って戦うのだが、同時に一人までしか未来を読めない。
俺が片方の動きを読んでも、残りの奴らがそこをカバーしてくるせいで、なかなか攻撃が当たらない。
「あーくっそ!こっちの内部情報が漏れてやがる!何やってんだよクソが!」
苛立ちに任せて一人の腹にソバットをぶちこんでやったら爽快に吹き飛んでいったが無理やり捩じ込んだせいで体勢が崩れてしまった。
そして最悪なことに周囲には二人の敵方の術師。
「やっべ!」
もんどり打って転がりながら一人の足を刈ったが、もう一人が明らかにヤバそうなオーラを纏った刃物を構えている様子が目に入る。
これは、まずい、かも知れねぇ——。
俺が痛みに耐えるために体にギュッと力を入れたとき、横合いから突っ込んできた人影がそいつをぶっ飛ばした。
「……ふん、鏡野とか雑魚……」
ドヤ顔をしたサキが峰打ちで相手をしこたま打ち据えたようだ。
うぜぇ。
「助かった。ただ、お前俺に負けてんだろ」
「……人が少ないか暗ければ負けてない」
「あー。マコっちゃんにいいとこ見せるチャンスなのに最悪だ!」
「この貸しは炒飯一杯分」
「これが終わったら一杯でも十杯でも作ってやらぁ!」
俺はむしゃくしゃを相手にぶつけるために怒鳴りながら立ち上がると増援がわらわら湧いてきた。
ただ、こっちに注目を集めるほど、マコっちゃんは動きやすくなるはずだ。
「おい、チビ。ここが正念場だ。気張れよ」
「……はっ」
「お前、今に覚えてろよクソが」
俺は悪態をつきながら構えをとった。




