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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
五周目 本当のゲームの終わり
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第八十五ゲーム ・黒い月


「でも、まだ謎は残るわよねーツキカゲが侵入しちゃったから本来のツキカゲは何処に行っちゃったのかーとか、結局、自称神様の目的はーとか。先に聞いちゃうけど、貴方は清光で合ってるのかしら?」


ピィアレナがもう一人のツキカゲを示しながら言う。そうである。彼女の言う通り、別世界からのツキカゲの話だけではまだ足りないピースがある。それに此処にいないのは清光で、代わりにいるのは真っ黒な彼。どう考えても清光と彼が結び付いてしまう。それに首にはツキカゲと同じチョーカーをしつつ、湊が清光に与えたアクセサリーも身に付けている。これで清光でなければどうやってそのアクセサリーをつけたと云う問題である。あのアクセサリーは湊がその場で拵えた一点物である。もう一人はピィアレナの問いにクスリと妖艶に笑った。見た目はツキカゲで湊自身もツキカゲだと思っているが、本人の口から語られない事にはどうにもならない。もう一人はうん、と小さく頷いて今まで開かなかった口を開いた。


「そうだよね、彼が言ったならば僕も話すのが礼儀であり当然だろうね。嗚呼、そうだよ、僕が清光で合ってる。でも、それは()()()()()だ」


スゥと今まで見えそうで見えなかった瞳を開ける。その瞳はオッドアイで、右目が湊とツキカゲと同じ碧色だった。そして、彼の言葉に再び彼らは息を呑んだ。もう一人が清光であるのは間違いようのない事実。彼の言う()()が人の姿を持った答えなのだろうか。湊は何処かでその可能性を考えていた。二人のツキカゲ。そのうち一人は別世界のツキカゲで、もう一人は……まさか。湊が言う。


「……そっくりってのもあったし、一発でツキカゲって断言できたのもあるけど、もしかして、本来顕現するはずだったツキカゲ?」

「?!え、じゃあ、えっ?!」


湊の考えにツキカゲが驚愕し、湊と彼を交互に見やる。ツキカゲの驚きようからして休息中の時に聞いたあの話の瞬間も清光の本当の姿に気づいていなかったのだろう。彼は、清光は湊の考えに静かに頷いた。その行為に誰がなんと言おうとも真実を突きつけられる。


「嗚呼、そうだよ()()()()。この姿では初めまして。でも、僕は怒ってないからね」

「で、でも…こっちの都合もあったとは云え、君の立場を奪ったんだよ!?どうしてそんなに「冷静かって?」」


清光にツキカゲが問い詰めると彼は伏せ目でツキカゲを見返しただけだった。それさえも答えになっているようで、なんだが自分の、湊とツキカゲが知るツキカゲではないようで一瞬たじろいだ。湊は清光を観察する。ツキカゲとは違う黒髪で短いながらの髪をかき集めてまとめ、短いポニーテールにしている。右が碧、左が翡翠のオッドアイ。服装はツキカゲとほぼ同じだが、首元にはチョーカーと共に湊が拵えたアクセサリーをし、ブーツは見る限り、踵が低い。紺色の着物をはだけて着ていると言うよりも少し羽織っていると言った方がしっくり来るような感じで、妖艶さを醸し出すように着物を着こなしている。ツキカゲであってツキカゲではない。けれど、彼を推しであり嫁として愛する湊にとっては確実にツキカゲと断言できる。それは彼から漂う空気か、それとも別の何かか。湊が自分を凝視しているのが疑問を解消できないと云う意図だと読み取ったのか清光は再び声を荒げようとするツキカゲを制して静かに話し始める。


「彼が侵入したことによって本来ならば顕現されるはずだったけれど弾き出されてしまったんだ。元々は魂だからね、とりあえずの処置として瀕死状態だった獣に憑依させたんだ。それが()()()()魔物に証拠を持っているからと拉致された不思議な生き物だったんだよ。瀕死状態だったから、本当に偶然、現場に居合わせた不運な子だったんだろうね…」

「そっか…あの子、本当にたまたま……!」

「まぁ、憑依させたからといってマスターに会える保証は何処にもなかったけれどね?僕は魂を憑依させたことで、異世界の体になり元の姿に戻れなかっんだ。でも、さっきの錬金術師…だっけ?の攻撃で元の姿に戻れた。元々、錬金術師が顕現しようとしていたから後々マスターと一緒に始末出来るよう細工でもされたんだろうね。それがこっちにとっては好都合だったけれど」


クスクスと清光は楽しそうに笑う。つまり、弾き出されて瀕死状態の獣を見つけ憑依。異世界の体が魂と定着し、戻れなかった。だが、湊を利用しようとしてたーいや、もうしているのかー錬金術師の細工により元の姿を取り戻した、というわけだ。だから錬金術師の攻撃を受け、細工がされていなかった侵入者であるツキカゲには効果が薄かったのだろう。効かない、と云う可能性がないことにはないが確実に息の根を止めずに行った事から彼さえも始末する手段があると窺える。うんうん、と事実を咀嚼していた湊だったがふと、清光は…本来であれば自分と共に巡るはずだったツキカゲは、侵入してきた異邦人であるツキカゲをどう思っているのだろうか?先程の物言いからして怒っているわけではないようだが。と、ツキカゲが沈黙に耐えきれなかったのか、言う。


「僕が、憎い?」

「いいや?確かに彼の云う通り、最初は相棒であるはずの、僕がいるはずの場所を奪われた事に多少は恨みも怒りもあったさ。でも、君はマスターを守り、寄り添い、力を貸し、敬愛し、友愛した。君は僕と同じ、いや自分達と同じようにマスターを慕い愛してくれた。その事に違う世界だとかそういうのは関係ないよ。それに一緒にやって来た仲間でしょ?敢えて云うなら同じ姿でいられないことくらいだよ。マスターもさっき言ってたでしょ」

「そうだよ!全員私の嫁に変わりなーしっ!」

「まぁ!」


クスクスと、からかうように口元を袖口で隠して笑う清光と胸を張って告げた湊にツキカゲはポカン…としていたが次第に理解したのか彼と同じように笑った。清光も嬉しそうに笑う。龍華とピィアレナもクスクスと笑い、湊は満面の笑みを浮かべる。暫く笑い合い、龍華が疑問に感じた事があったようで挙手して問いかけた。


「同じ姿でいられないって?それに獣のあれも…」

「うん。獣になったり小さくなったりはあの子の体質。僕が憑依した時にはこの異世界ではどうだか分からないけれど、中身が空っぽだったんだ。だから憑依したとも云うんだけど。多分、本当は瀕死状態じゃなくて死んでたんだと思う。そこに僕が憑依はいってしまったからもう一度息を吹き返したんじゃないかな…と僕は考えてる。本当かどうかは分からないけどね。それと同じ姿ってのは、彼と見分けがつくようにだよ。マスターは見分けがつくだろうけど、龍華やピィアレナには難問になるからね。マスターが知ってる姿よりもちょっと成長させて違いを出してみたんだ♪」

「あら、それはお手数をかけちゃったわね。にしても湊ちゃん、大好きすぎね」

「えっへん!」

「威張るところじゃないわよ」


ピィアレナに言われ、あれー?と胸を張っていた湊が首を傾げた。


「成長したってことは大人バージョン(レア)じゃん!?うっわー!感激!あ、そんな場合じゃない…」


ゲームでは知れなかった知られざるツキカゲの姿に一瞬舞い上がった湊だったが、よく考えればそんな場合じゃなくね…?と突然冷静になった。それが面白かったのかピィアレナがクスリと笑い、場の空気が少し軽くなった。少し和んだ(?)空気の中、湊が「はい!」と挙手した。


「あのさ、悪魔に取り付かれた時のアレって?元の姿に戻れなかったんでしょ?ツキカゲ…ん?ツキカゲ二人だから清光?」

「そこに行っちゃう?マスター。まぁでも、清光で良いよ。マスターが僕のために考えてくれた名前だし、元々その名前になるかもしれなかったんだからね」


「んー?」とどう呼んだら良いのかと首を傾げた湊の頭をまるで妹を可愛がるように撫でる。清光の言葉にゲームを熟知している湊は「そうだねー」と彼に笑いかけるが当の三人はさっぱりである。


「えーと、湊ちゃん?どういう事かしら…?」

「あ、清光の名前の件でしょ?あのね、ゲームでの、〈乱殲らんせん闘魂とうこん〉での登場人物の名前の最終候補に上がってた一つが清光セイコウだったんだ。私は攻略サイト見まくってたら偶然知ったんだけどね。名前の通りの"清らかな光"、月の光の名前。動物だった時に私達と同じ目の色してたし、毛並みも黒かったから思わず候補から引っ張って来ちゃいました!」


まさかのゲームの裏事情に三人は驚きを隠せなかった。もしかしたら、僕も清光になってた…?とツキカゲは一瞬思ったとか思わなかったとか。清光は口元に人差し指を当てて、妖艶に笑って云う。


「で、マスターの質問だけど、一瞬でも死に間際になったから本当の姿になれたんだと思うよ」

「…じゃあ、あの時の声は…」

「?あの時の声?」


清光の答えを聞きながら龍華が呟くとツキカゲがおうむ返しした。あの時の声、とは十中八九ハナトの感情爆発時の事だろう。湊はまさか自分以外にも聞こえていたことに驚いたようだったがピィアレナも「そう言えば…」と呟いた。どうなの?とピィアレナに首を傾げてみせると彼女は「うーん」と怪訝そうに答えた。


「小さくよ、小さく。なんか違う声がしたようなって感じ」

「へぇー」

「嗚呼、それはね、僕の感情が爆発っていうかそんな感じなんだ」

「「ん?」」


照れたような、困ったような複雑な表情を浮かべた清光に湊とピィアレナが首を傾げる。


「うんとね、その場にいた人物の感情に強く引き寄せられて、ある出来事を連想しちゃったんだ。それでイレギュラーな現象が起きて、」

「声が聞こえる状態になった…」

「そういうこと」

「じゃあ、シンデレラの時も?」

「うん」


なるほど納得!うんうんと頷く湊にピィアレナが「シンデレラの時もって?」と首を傾げていた。ので「清光が飛び出して行った時に聞こえたの」と答えると彼女も納得したようだった。湊はツキカゲの方へ近寄るとちょいちょいと手招きした。なんだとツキカゲが腰を屈めたそこに湊は疑問をぶつける。


「ツキカゲ、清光が本来のツキカゲって気づいてなかったから神さm…じゃない、錬金術師からの刺客とかって考えてたの?」

「!?えっ」

「あ、えっと、私、転んだ時あったじゃん?ごめんなさい聞いてしまいましたぁー!」


ツキカゲの驚愕した顔に湊が素直に謝る。まぁ、それくらい。ツキカゲは大丈夫と儚げに笑い、湊の肩を掴むと「顔を上げて」と上げさせた。恐る恐る、先程とは逆の体勢で湊がツキカゲを振り返る。


「聞かれちゃってたかぁ。うん、そうだね。最初はタイミング的に疑ってたけど、うん、本来のマスターの相棒なら納得だよね…」


少し、ツキカゲの表情が悲しそうに見えた。嗚呼、そうか、君の本当の相棒は、君は。湊は思わず、背伸びをすると彼の両頬をビヨーンとつねった。あまりにも突然な出来事にツキカゲがポカーンとしつつ、つねられて赤くなった頬を触る。それを見た清光は笑いを堪えるのに必死なのか、痙攣していた。そして、湊の意図にもツキカゲの表情の意味にもいち早く気づく。


「…えっ、と…?」

「あのねーツキカゲ。今の私達の関係はなーんだ」

「えーと…他人?」

「違うよ。仲間。さっきも言ったでしょ?それに私の相棒は()()()()なの。意味、分かる?」


ツキカゲは湊の言葉に不思議そうに首を傾げていたが理解したのか、悲しそうだった顔は、徐々に口元に綻びを生み出していく。


「で、でも」

「ふふ、僕はね、認めているんだよ?君の事。だって、違う存在のツキカゲ()とは言え、目的は違うとは言え、君はマスターを導いた。きっと、君みたいな事、僕もするよ?でも、此処では僕は清光と云う一人の人物なんだ」

「ほら、清光もこう言ってる。清光は相棒だよ。マスターである将軍()の。でもね、この世界では君なんだよ。最初に私、言ったよね?もう一回言わせる気?"私が君を選んだ事、後悔させたことないだろ?"」


嗚呼、ニヤリと笑った顔にあの時の思い出が甦り、二人の言葉に涙が溢れて来る。湊はニッコリと笑って云う。


「それにさっきも言ったけど、此処にいるのは仲間。全員、私の大好きな嫁だけど、此処でもそれは変わらないし、仲間なの」

「………分かった、分かったよ」


ツキカゲが心の底から分かったと頷いた。それに満足そうに湊も清光も頷いた。だが次の瞬間には真剣な表情に変わっていた。さあ、此処からがもう一つの本題だ。


「自称神様、錬金術師の目的は?」



ごめんなさい!次は水曜日って言ったのに、完全に忘れてました……こんな遅く(?)にすみませんが投稿です!

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