第八十一ゲーム・そして賽は裏返る。
湊はあれ?と怪訝そうに首を傾げた。何かが、そう何かが可笑しいと直感的に感じ取ってしまったのだ。いつもなら、異世界の何かを解決すれば意識が遠退き、『解決しました』だがなんだかと無機質な声が言って移動するのに。まぁ、自分達が解決したと思っていてもあちらの基準では違うのかもしれないし、少し休んでも良いと云うことかもしれない。そう思い、湊は貰ったカードをハナトに「良いでしょー?」と見せて二人で笑い合う。
「湊、頑張ってくださいね」
「ん?何を?」
「色々です!」
唐突にハナトがそう言って笑った。その笑みが何処か消えてしまいそうなほどに儚げで湊は面食らった。どう云うことだろうと湊は軽く首を傾げたが、以前とは二転三転も変わったハナトの事だ、きっと何か感じ取ったりしたのだろう。それか湊達との会話でそう勘違いさせてしまったか。湊がそう自身の中で納得して、うんと力強く頷いた、その時だった。まるでテレビの砂嵐のようにジジッ…ジジッ…とハナトが霞んだ。いや、霞んだと云う表現さえも合っているのかさえ不明だった。まさかの事態に目を丸くし、見間違いかな?と目を擦ったがハナトの体はいまだに霞んでいるし、砂嵐が舞っている。間違ってない、現実だ。
「ハ……ハナト!?」
「湊ちゃん?」
驚愕で裏返った湊の声にツキカゲ達がなんだと振り返る。「どうしたの?」と云う問いかけが口から飛び出る事はなかった。湊の視線に気付き、その方向を見たからだ。湊達が驚いている間にもハナトの体は砂嵐のように霞んでいく。ハナト自身はその事に気づいている様子が微塵もなく、摩訶不思議だった。その時、龍華がその異変の正体に気付いた。
「!?……え?」
「龍華、どうしたの?」
「止まってないかい?」
「んみゃ?」
え?龍華の言葉に湊は首を傾げた。そうして、目の前で微動だにしないハナトを凝視した。本当だ、動いていない。止まっている。まばたきもせずに徐々に消えて行くハナトの光景に湊自身、どうすることも出来ず、思わず手を伸ばした。が、そこで気がついた。ハナトだけではない。ハナトに何かあればなにかしら反応があるはずなのに、驚愕と混乱で忘れていた。慌てて振り返り、息を呑んだ。ウィンもヒイロもその周りにいた人々も街も動きを止めていたのだ。全てが砂嵐のように霞んでおり、砂嵐がなければ精巧な人形の街かと錯覚してしまう。何か異常事態が起きているのは容易に理解出来た。湊達は何を言うわけでもなく、背中合わせになり、死角をなくして行く。混乱と恐怖が彼らを支配する。まさか、ハナトはこの事に気付いていたとでも云うのか?!だが、動きを止めた彼に訊ねる手段はもうない、恐らく。
「どうなってるの?!」
「分かんない……突然…突然止まっちゃった!」
恐怖でそう叫ぶ湊を落ち着かせるようにツキカゲが彼女に小さく「大丈夫だよ」と笑いかける。四つ巡ったから、あの神様の何かが発動でもしたの?!でも、私を帰すって言うような雰囲気でもない!てか、何かってなに?!自分の脳内も混乱している。と、今度は止まっていた全ての人物、建物、異世界自体が粒子となって消滅し始めた。消えて行く友人に、動きを止めた友人に向かって湊とピィアレナが同時に手を伸ばす。それをツキカゲと龍華が止め、清光が甲高い声で鳴く。何が起こるか分からない以上、無用心に手を出すのは危険だった。
「ハナト!ウィン!ヒイロ!」
「マスター!待って!」
「なんで!?」
「異常事態だよ?容易に手を出すのは…」
「っ!」
ツキカゲに冷静に諭され、湊は我に返った。その間にも周囲の全てが粒子となって消えて行く。空は白く染まり、全てが白く染まる。いつの間にか四方八方真っ白な空間に湊達は取り残されていた。先程までいたハナトもウィンもヒイロも空も建物も街も綺麗さっぱりとなくなってしまっていた。それがまるで移動する時の意識を失うように感じ、湊は体を震わせた。そんな彼女をピィアレナが安心させるため、頭を撫でた。ツキカゲもやろうとして先を越されたらしく、こんな状況にも関わらず、少し拗ねていた。湊の足元に清光がすり寄る。もふもふと、ふわふわとした感触と信頼している彼らの存在に湊が安心して小さく笑った。そして、真剣な表情で周囲を見渡した。
「何が起こっているのか、湊ちゃん分かるかしら?」
「ごめん、私にも分かんないや」
「まぁ、四つ巡り終わったから…と云うのがしっくり来るだろうね。でもそれならそれで可笑しい事があるか」
「あたし達でしょ?龍華」
「…?あ、そっか、そうだもんね」
龍華とピィアレナの会話に湊は首を傾げていたが納得したのか頷いた。龍華の言う通り、巡り終わったからと云うことであるならば途中から連れて来た清光、龍華、ピィアレナは先程のハナト達と同じかどうかは分からないが元の異世界に送り返されても良いはずだ。しかし、それはなかったから可笑しいのだ。まぁ、この後に起こるとも限らないのだが。
「まぁでも、警戒に越した事はないでしょ?」
「にゃあ!」
警戒しながら周囲の真っ白な空間に視線を投げる。おっと、カードを持っていたのを忘れるところだった。湊がカードを懐の小さな袋に素早くしまう。それを横目に見ながらツキカゲは何処か不安そうな表情をしていた。まぁそうなるのは当たり前と云えば当たり前なのだが、ツキカゲにとっては少し違っていたのかもしれない。すると、清光がなにか気配を感じたのか小さく鳴いた。
「なぉーん」
「?清光?どうしたの?」
「んー」
湊が清光を見下ろすと清光はふわふわとした尻尾でなにもない真っ白な空間を指し示した。動物の勘か。信頼する獣の言葉に緊張が走る。思わず、短剣の柄に手をやる湊。ツキカゲの腕が我知らず湊を守っていた。シン…と静まり返った空間に彼らの緊張と警戒の息だけがむなしく、いや、愉快に響く。真っ白い空間に灰色の粒子が何処からともなく現れ、そこに風でも吹いているかのように小さな嵐を巻き起こす。粒子の嵐は次第になにかを湊達の目の前で形作っていく。灰色の粒子は、灰色だけでなく様々な色を足しながら、この空間になにかを作る。数秒、いや数十秒経っただろうか?真っ白な空間で時間感覚さえも狂わされる。そうして湊達の手前に形作られたのは
「……は?扉?」
此処ら辺、話数間違えてメモってたんですよ……間違えてそうで怖い。んでもうこんな数……ひぇぇ
てことで本日は一つだけで次は木曜日です!この頃、連続でやり過ぎた感があったんで!




