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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
四周目 ある人達の話
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誰かの思い出話について




渡された「一つだけの仕事」を終わらせ、一人自室でゆっくりしていた。ゆっくりしていた、と云ってもやることもないし、ほとんどボーッとしていたと云う方が合ってる気がするけれど。本とか借りれば良かったかな?嗚呼、借りた本によってはまた誰かに「休んで!」って言われそうだけど。ふふ……こんな風に一人でゆっくり休むなんて久しぶりだな。いつも、頑張って…自分で言うのもなんだけど頑張ってたから余計にこの時間が嬉しい。その事に皆、もしかすると気付いていたのかな?気づいていなかったのは、自分、だけ。

嗚呼、またネガティブな思考になっちゃった。大丈夫っと。足音が聞こえて来た。なんだろう?と思って扉の方へ目を向けたちょうどその時、スパーンッ!と良い音を出して横に開いた。この部屋は和室だから襖になっている。けど、そんなに良い音を出しながら開けなくても良いのに。


『元気~?お兄ちゃん!』

『夕飯持って来たぞ』


襖を開けた前に仁王立ちして立っていたのは一人の少女と彼女の背後に立つ男性だった。いや、正確に言えば二人とも()()と云うよりも()()()()()。こんな可笑しな状態になっているのは記憶の中でも彼らの中でも数少ない。男性が丸いお盆を持っているところと少女の言葉からでももう夕食の時間帯だと云うことは容易に分かった。


「もうそんな時間なんだね。今日の夕飯はなに?」

『お前だけ別メニューだ』

『あ、でもお粥ってわけじゃないよ!』

「ふふ、お粥でも嬉しいけどね」


男性が少女と共に中に入ってくると布団の傍らにお盆を置いた。美味しそうな湯気が料理から漂っていて、思わずヨダレが出てしまいそうになる。って、あれ?なんで閉めないんだろ?そう思っていると少女が空中でクルクルと側転を披露する。披露する少女の向こう側からもう一人が部屋に入って来た。走って来たのか肩が上下に動き、息が少し激しい。もう一人、少年はこちらに軽く頭を下げると襖を閉め、いまだにクルクル回る少女に注意した。一番、成長したと思う人物だと勝手に思っているんだ、彼を。


「ヒイロ、回るのも良いけれど病人の前だし移動の邪魔になるからやめなさい。もっと広い場所でやって」

『ん、はーいハナトお兄ちゃん』

「すみません。夕食を届けるついでに資料を回収しに来ました。体調はいかがですか?倒れてしまったと聞きましたが」

「うん。寝たから大分良くなったよ。心配かけてごめんね」


少女は注意されて少し不貞腐れていたが、少年の云う事も最もだと分かっていたらしく空中を浮遊して男性の元に移動すると背中から彼に抱きついた。男性はしょうがないなぁと云うように自分の肩口から顔を出している少女の頭を撫でた。ふふ、仲が良いなぁ。互いに互いを甘やかせられる人がいるって良いことだと思う。()()……っ、とまたやっちゃったみたい。いつの間にか反対側に回り込んでいた少年が心配そうに自分を覗き込んでいた。大丈夫、君達がいる。


「大丈夫ですか?まだ寝ていた方が良いのでは…」

「大丈夫大丈夫。ちょっと考え事してただけだから」


「そうですか」とあまり納得が行っていなさそうな表情をする少年に一つだけ許された仕事の紙を渡す。少年は「頂戴します」と言って両腕に抱き抱えていたファイルに紙を差し入れた。中には別の紙が入っているようで今日、自分がするはずだった仕事だとすぐに分かった。申し訳ないな…そう思っていると男性が『頼れ』と小さく呟いた。はからずもなんの事だが容易に分かってしまう。っていうか、前も言われたような?


「ウィンの言う通りです。私達はアナタを信じています。だから、頼ってください」

『そうだよそうだよ!ヒイロちゃんたちだって強いんだよ!』

「分かってるよ」


ちゃんと分かってる。今回ではっきりと分かったし。何処かで無理しちゃってたのかもね……でも、まだ自分に自信が持てなくて、乗り越えられなくて……手の届かない苦しみと云うか、憧れが、引っ掛かってて……。少年はそんな様子に肩を竦めた。分かっている、と告げているようでちょっと安心した。


「皆、アナタのように()()()()()()()()()()

「………」


その声が、今にも消えそうでまるで()()()を思い出した。細かいところまで言わなくても分かってる。でも……いや、嗚呼、きっともう()()()()()()()。自分の事なんて。これは、この行動は、思考は、自分のためでみんなのためで、きっと……

少し重くなった空気を打ち消すように男性が持って来たお盆に手を伸ばす。いまだに少女は男性に抱きついて甘えていた。少年がこちらの様子に安心したように頷きながら立ち上がった。


「さて、ボクたち…私達はそろそろ戻りましょう、ウィン、ヒイロ」

『えー?もう行くのー?』

『休ませてやらなくちゃな。それにまた入れ違いで別の奴が来るだろうし』

「それに私はこれから仕事ですが、二人は夕食の時間ですからね」

「え、夕飯まだだったの?もう終わってるもんだと思ってた…」


なんだか引き止めてたみたいで悪いな。そう思って頭を下げると男性が笑って言う。


『俺達が居座ってたんだ、気にするな』


じゃあ、それに甘えようかな。少年が「行くよ」と二人を連れて襖の方へ移動する。移動と云っても二人とも浮遊だけど。


『たっくさん食べて、早く元気になってねお兄ちゃん!』

『心配せずに休んでろ。そんでさっさと本調子に戻れ』

「それでは、失礼します。お大事に」


彼らが部屋から出ていくのを手を振って見送る。その傍ら食事に手を伸ばすと少女が楽しそうに笑った。君も、無理しないでね。そう言うように笑えば、彼は気づいたのか笑って頭を下げた。と、その時、誰かが自室に駆け込んで来た。相当慌てているのが、足音だけでも分かった。そうしてこれが、始まりだった。


予備日をまた使おうかと思いつつ……いーや、使っちまえー!ってことで、次は水曜日です!

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