表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
五周目 本当のゲームの終わり
93/116

第八十二ゲーム・用意された箱庭



「扉?なんで?え?帰るためには扉が必要!…みたいなノリじゃないよね?」

「マスター落ち着いて」


湊達の手前に形作られたのは扉だった。観音開きになった巨大な扉で控えめだが美しい装飾が施されている。真っ白な空間と合うようにだろうか、黒と灰色を使い、ドアノブは何故か血のように真っ赤である。ドアノブだけが異様な不気味さを放ち、思わず身震いしてしまう。何故、扉。この空間にして扉の意味って一体。やっぱり出口とか?湊が混乱し、早口にそう言うとツキカゲが宥める。確かに湊の言い分もツキカゲの言い分も同意である。湊は警戒しながら突然形作られた扉を凝視する。やっぱり、神様の行動なのだろうか?


「これって、どうしたら良いのかしらね」

「オレに聞かないでおくれよ。うん……まぁ、そうだよね。どうしよ」


さすがの龍華とピィアレナもまさか扉とは思っても見なかったらしく、困惑した表情である。思わず手に握りしめた武器から力を抜いてしまう。だが 、ツキカゲ()()は警戒の姿勢を崩さなかった。そんな彼を清光が見上げていたが、扉も気になるのか視線は行ったり来たりを繰り返している。


「(……まさか、ね)」


唐突に頭に浮かんだものを振り払い、ツキカゲは一歩、足を踏み出した。それに湊が慌ててツキカゲの腕を掴んだ。危険と、いや、どう云うことか分からない以上行くのは危険だと湊の頭の中で警報が鳴っている。それを、危険と云うことをツキカゲも理解しているはずなのに、どうしたと云うのだろうか?


「ツキカゲ、危ないと思うよ!?」

「うん……でも立ち止まってちゃなにも出来ないし」

「でもさぁ」


不安そうな湊を振り返り、大丈夫だと笑いかけるツキカゲ。確かに彼の言う通りだ。でも…何かが引っ掛かってている。湊の中で。でもその何かさえも分からない。と、湊の肩に手を置き、後方に引く人物がいた。龍華だ。今にも飛び出して行ってしまいそうなツキカゲの隣に並び、湊とピィアレナ、清光に言う。


「オレも様子見てくる。それなら少しは安心だろう?主人」

「うん…だけどさぁ」

「ハイハイ、湊ちゃんが言い淀んでる間にさっさと済ませてらっしゃい」

「にゃあ」


ピィアレナがうーんうーんと踏ん張りがつかない湊を横目に二人に言う。と二人は一目散に扉に向かって駆け出した。それを見て湊はもう吹っ切れた。そしてピィアレナと顔を見合わせると清光を軽く促しながら二人を追ってゆっくりと歩き出した。この状況から抜け出すには少しでも危険を承知で行かなければならない。ただその踏ん張りがつかなかっただけだ。多分。歩き出した湊達の気配を後方から感じながらツキカゲは扉を少し手前で見上げていた。危険かもしれないのはこの空間に飛ばされた時から承知だ。だが……


「なんの意味があるんだろうね?この扉」

「っ、嗚呼、そうだね」


少し考え込んでしまっていたようだ。ちょっと遅れていたはずの龍華がいつの間にかツキカゲの隣におり、扉を見上げていた。ハッと我に返ったツキカゲを龍華はニヤリと笑って見上げる。その瞳にツキカゲの片足が後方に引かれかけた。また、あの全てを見透かしているかのような瞳だ。だが龍華がすぐにツキカゲから視線を外し、扉に視線を向けた。


「ドアノブが真っ赤。まるで血だ。入り口か出口か……何か知ってる?」

「なんで僕に訊くのさ」

「いや、ただ知ってるような気がしただけだよツキカゲ」


チリッ、とツキカゲと龍華の間で火花が散ったような気がした。いや、違う。比喩ではなくて、本当に散ったのだ。と同時に感じたある気配。それに気づいた二人は先程までの会話をやめ、自分達の方へと歩いて来ている湊達を勢いよく振り返った。幸いなことにあまり近づいてはいない。ツキカゲと龍華が視線で一瞬会話し、扉を視界に入れながら跳躍する。跳躍した時には二人共、武器を抜刀していた。ツキカゲに至っては詠唱だが。


「マスター!ピィアレナ!清光!」

「止まれ!」

「?二人共どうしt「フシャアアアア!!!」?!」


ツキカゲと龍華の険しくも緊迫した表情と声に湊が首を傾げて止まった途端、だった。足元から清光が大声で唸り声をあげ、二人がやって来る方向にある扉に向かって唸り出した。二人が抜刀している事にも気付き、彼女達も武器を構える。清光も獣と化す。二人が彼女達を守るように前方に滑り込んで来たその瞬間、扉の前を陣取るように大量の粒子が逆流の嵐を巻き起こした。そのとてつもない量の粒子を湊とツキカゲは知っている。短剣を握る手に思わず力が入る。


「……神様あいつ…!」


誰の言葉だったのか。恐らくツキカゲだったような気がする。パァ、とまるで翼を広げるようにして粒子が消え、そこから現れたのはフードを被った神様みぃちゃん。トンッと軽やかに着地するその姿は美しいようにも感じるが、何処か恐怖を煽る。みぃちゃんは湊達に目を配ることなく、扉を振り返り、心酔の瞳を向けた。ゾワリ。背筋に走った悪寒であって悪寒ではない恐怖。嗚呼、これは、どういうこと?湊には一つだけ分かった気がした。何かが、可笑しい!みぃちゃんはフードで表情が隠れて見えないにも関わらず、なんとも嬉しそうにそれでいて何処か無機質な声で摩訶不思議な扉と空間を見て言う。


「ふふ……嗚呼、やっとこの時が…この時が来た!()()、やって来れた、『異空間の神世界』に!干渉を禁止された時は驚いたが、どうってことない。ハハ……達成まで()()()()っ!」


グルリと辺りを優越感と心酔感を表しながら見回したみぃちゃんの瞳がようやっと湊達を捉えた。湊達を捉え、みぃちゃんは「いたんだ」と云うように今更ながらに気づいたようだった。表情が見えないため、何が起こっているのか余計に恐怖を煽っているように感じる。湊は、思い切って問う。


「……帰してくれるの?」

「えぇ~?」


みぃちゃんは初めて会った時のように歪な笑みを顔に張り付け、低い声で言い放つ。


「んなわけないだろ?」

「はぁ!?」

「"元の世界に帰してあげる"とは言ったけれど、約束はしてないしな」

「っ、へ、屁理屈!」


何処かで、言葉の中身が嘘なのではないかと感じていた。けれど、まさかそこだとは思わないし!確かに「約束」だなんて言ってなかったけどさぁ!でもさぁ!湊が衝撃の余り、身を乗り出して叫べば、みぃちゃんは知ったことかと肩を竦めた。身を乗り出す湊を抑えつつ、彼女の怒りも最もだとツキカゲは思った。が、それ以上に、今は危険だった。みぃちゃん(相手)が、最初の時以上に読めない。それは一応初対面である龍華やピィアレナ、清光もそうだった。しかし、みぃちゃんは最初より明らかに増えた仲間に見向きもせず、愉快そうに言う。いや、見向きしなかったのではなく、興味がなかったのだ。


「ま、だってそうだもん。お前達は、捨て駒。目的達成のための礎。帰れなくて、悪いな……だって、此処で死ぬんだから。ご苦労・さ・ま♪」

「「「「「?!」」」」」


みぃちゃんがニタリと嗤い、こちらを指差し、パチンと指を鳴らした。途端、何処からともなく現れた大量の粒子が湊達を襲った。細かな粒が刃物のように尖り、湊達の体力を奪い去って行く。武器で弾こうにも細かすぎるためにほとんどが弾けない。再び突然、バンッッッッ!!と続いて爆発音が耳元で鳴り響き、湊は体中に走る痛みと共に倒れ込んだ。


……誰か気づいてたりしました?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ