第五十六ゲーム・謎、解明
そこにいたのは、明らかにシンデレラだった。片目、左目に何重にも包帯を巻いてはいるが自分達をこの館に招き入れた本人だった。包帯には微かに血が滲んでいるのか、少し紅く染まっている。ってことは、メアが言っていた眼球から抉り取られると云う大怪我はこの事?湊は驚愕する思考を無理矢理動かしてそう考えつく。それは他の彼らも同じだった。
「どうする?」
「どうするって…謎がまた謎を呼んだよね…」
ピィアレナが震える声で問いかけると龍華が困惑した様子で言った。そう、その通りだ。先程までの仮説は簡単に崩れ去ってしまった。その代わりに浮かび上がって来たのは新たな謎。目の前にある情報と事実から再び、真実を作り出そうとする。が、目の前の光景が驚愕すぎて、思考が回らない。ソファーに身を委ねるシンデレラが小さく呻き声をあげた。その痛々しい声に脳をフル回転させていた彼らは我に返った。
「逃げる?メア呼びに行く?」
「一番良いのは、メアだよね。でも、何処にいるか分からないし。館の中をよく知らない僕達が闇雲に動き回ってもすれ違いになる確率の方が高いし…」
湊の考えにツキカゲが冷静さを取り戻し、そう分析する。確かに彼の言うことはもっともだ。でも、他に方法が思い付かない。誰かが此処に残ると云う手もあるが、迷ってしまう可能性の方が高い。自分達が危険な目に合ってしまっては元も子もない。どうしようかと考え込む彼ら。一応、目の前の彼も警戒に入れて置くが、包帯を巻いている以上、本物という可能性もある。いや、本来ならば外出しているはずのシンデレラか?嗚呼、もう訳がわからない。混乱する彼らはとりあえずの方法を取る事にした。
「マスター、一旦離れよう?あの時の異端児じゃなくて怪我を負ったシンデレラがいる以上、仮説が全て崩れた以上、此処にいるのは危険だよ」
「ツキカゲにオレも同意だよ。一旦離れてからもう一度、考え直した方が良いだろうね。メアを探しに行こう」
ツキカゲと龍華が示した案に湊は何も言わずに頷いた。同じように頷くピィアレナと清光。方向性は決まった。ならば。そういうように全員が一斉に扉の方を振り返った、その瞬間、清光の激しい唸り声が大きく響き渡った。なんだと再び思ったのも束の間、クツクツと喉の奥から笑っている不気味な、それでいて何処か妖艶な笑い声が響いた。その声には何処か、少しの苛立ちが紛れているように聞こえたのは気のせいだろうか。
「ふふふ、見つけちゃったようですね」
その声はまさに自分達が最初に聞いたシンデレラの声だった。その声がした方向はソファーに身を委ねるシンデレラがいる方からしていた。バッと勢いよく今度はそちらを振り返ると彼の隣に外出しているはずの「もう一人」のシンデレラが座っていた。何故?てかどうやってこの部屋に入った?!ソファーに座る二人のシンデレラ。片方の顔の半分を覆う包帯がなければ、どっちがどっちかわからなくなっていたであろう。
「…どうやって、どうやって入ったのかしら?扉の前にはあたし達がいたし、開く音は一切していなかった。魔法って云うのかしら?」
「可能性としてはあるかも」
ピィアレナの問いに龍華がクスリと笑う。シンデレラー外出していたはずの方はシンデレラ、もう一人は彼と表記するーはソファーから立ち上がり、まるで湊達をからかうようにクスクスと笑うと両腕を広げて説明を始めた。緊張と、警戒が暗闇の部屋に蔓延する。それを知らないのは、クスクスと笑うシンデレラだけだった。
「魔法、魔法。うん、ボクは魔法が使えますから、そうなりますね。ふふ、なんであの時言ったご主人様が、ボクの容姿をしているか疑問なのでしょう?お答えして差し上げます」
クスリと笑った彼の笑みに清光の唸り声が大きくなる。その唸り声にツキカゲが清光をチラリと見、シンデレラを睨み付けた。いつの間にか、片手には刀が握られており、湊の肩を軽く掴んで背後に隠す。湊はそれを流れるように受けながらシンデレラの話を聞き逃さぬよう、睨み付けている。何処かで、何処かが違う。何が、何が違うの?シンデレラは彼を示しながら、少し悲しそうにその美しい顔を歪める。
「…ボクのせいで彼は動かなくなってしまいましたから。だから、ボクが彼の代わりに彼を演じているのです。演じるのは、得意だから」
「………何があったって云うの?君達の間に。シンデレラは、悪魔と天使との交戦で大怪我を負った。それは、メアの言葉でも確かだけど…」
「そうだよ。マスターの云う通りそうであるなら、君は…」
誰?湊とツキカゲの問いは最もだった。例え、シンデレラが彼の代わりを演じていたとしても二人の関係性が分からなければ、疑惑は晴れない。シンデレラは何も云う気はないと云うようにクスリと笑ったきりだった。
「(あ、そういえば)」
湊は二人のシンデレラを見据えたその時、あることを思い出した。〈bloody red † bloody rose〉にハマっていた友人が興奮した様子で私に話してくれた本編のお話。私はそこまで行ってなかったけれど、鼻息荒く話していた。それは血の減少で一時的に身動きが取れなくなった異端児を悪魔と天使が襲い、連れ去ってしまうというもの。その時、仲間達は敵を混乱させる作戦として異端児に背格好が似ているシンデレラと、ある少女を身代わりに仕立てあげ、敵が混乱している隙に異端児を救出する…というもの。ストーリー的に言えばそれは大成功であり、身代わりも成功した。その身代わりをシンデレラと仮定すれば、なんとなく似ている。此処では異端児が彼と云うことだろう。でも、そうだとすれば、此処にいる動かない彼が本物で、身代わりを演じているのが偽物となる。なら偽物とは一体、誰だ?
湊が考えている事に、シンデレラの意味深な言葉からツキカゲ達も気づき始める。しかし、それでも疑問は残る。多くの真実のピースが一つの真相を作り上げようとする中、そこには紛れもなく別の何かが紛れ込んでいる。それが、真相を霞ませている。武器を構えながら彼らは軽く片腕を広げるシンデレラを睨み付ける。恐らく、シンデレラに問うても関係性を「ご主人様」としか言わないのだろう。はてさて、どうしたものか。
「オレたちをどうする気だい?」
龍華が警戒した様子で問うとシンデレラは喉の奥から笑い声を上げる。それがなんとも不気味で、なんともこの後の嫌な事を思わせて来て気が気じゃない。湊が彼らに視線で指示を送る。彼女の考えに全員がわかったようで気づかれぬよう小さく頷いた。
その時だった。
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