↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
三周目 御伽噺ノ古城
59/116

第五十二ゲーム・メア家


湊達がいるのは、代々メア家が納めると云うナイト領である。そして、彼女達の前に現れた青年こそ、この領地の現領主でメア家当主であった。そんな彼の家で治療を受けさせてもらった彼らは青年に誘われてある部屋に案内されていた。ピィアレナの足の傷も治療され、自力で歩けるまでに回復していた。他の三人も清光も治療をしてもらっていた。此処の家の、いや、異世界の医療技術が他よりも発展しすぎじゃないかと驚くほどだった。ちょっと驚きを通り越して怖い。彼らが招かれた西洋の館は豪華絢爛であった。彼らが今まさに歩いている廊下には何処までも伸びる赤いカーペットが敷かれ、天井にはシャンデリア。壁にはいくつもの絵画が飾られている。全て高価なものなのだろうなぁ、と少し戸惑いを隠せない彼らに青年は顔だけを振り返らせてニッコリと笑う。


「ご安心ください。全て譲りもので、高価なものではありませんよ」

「そ…そう…」

「ウソでしょ。絶対ウソでしょ」

「うん。気を使わせているようだね」


青年がそう言っても私達の目は欺けませんぞ!そう言うように小声で湊と龍華が会話する。戸惑った声を上げたのはピィアレナである。青年は何処に自分達を案内する気なのだろう。少し不安である。


「なぁー!」

「清光、シィーだよシィー」

「なぁん?みゃー」

「え、静かにする必要ってある?マスター」

「なんとなくぅー?」


治療が施され、この中の誰よりも目立たない治療痕になった清光が鳴いた。と言っても清光の場合、案外塗り薬でどうにかなったというのもある。正直に言えば、黒の包帯とかがなかった。目立つからいやがった、以上。湊の言葉にツキカゲが不思議そうに言うと、なにも考えていなかったらしい湊はそう返答した。


「それよりもツキカゲ!あれ!」

「ん?嗚呼、花の…って桜!」

「桜?」


湊がある絵画を見つけ指を指す。その絵画には桃色の桜が紙一杯、一面に埋めつくすように描かれており、まるで桃色の絨毯のようであった。花びら一つ一つ、細かく描かれており、立体的に見え、とても美しい。〈乱殲らんせん闘魂とうこん〉では舞台が舞台なため、桜はよく出てきた。お花見イベントもあった。ツキカゲが懐かしそうに、それでいて()()()()()()()に表情を綻ばせた。悲しそうな方はほとんど分からなかったが。と云うのも龍華の疑問そうな「どれだい?」と云う声で上書きされてしまったからである。湊は「これこれ」と立ち止まって示すと龍華とピィアレナが興味深そうに桃色の絵画の方へ身を乗り出した。


「これ、桜っていうの」

「へぇー…あたし達のところにも昔は咲いていたのかしら?」

「多分。オレも見たことはないし…綺麗だね」

「でっしょー!この桜の下でね、お花見するんだよ!」

「にゃおん♪」


湊が楽しそうに言えば、清光もそうだと言わんばかりに尻尾をふわふわとさせる。楽しそうに桜の絵画の前で話す青年はそんな彼らを微笑ましそうに横目で見ていた。暫く盛り上がって、湊達は青年の案内の途中だったと思い出し、申し訳ない気持ちとはしゃいでしまった恥ずかしい気持ちで一杯になった。無論、湊とピィアレナはだが。


「ごめん。案内の途中だったね」

「いいえいいえ。喜んでもらえてこちらも嬉しい限りでございますので。こちらです」


青年はツキカゲの謝罪にニッコリと笑って答え、こっちだと促した。抜け目ない気がするのは自分だけか。そうして辿り着いたのは紺色の観音開きの扉の前だった。ドアノブは金で装飾され、高級感が増している。


「なんだい?此処」

「それは、入ってからのお楽しみです」


龍華が天井にまで届くのではないかと云うほどに大きい扉を見上げながら聞くと、青年は妖艶に笑って言った。何故かその笑みに()()()を持ったのは、此処がゲームとそっくりな世界設定を持っている異世界だからだろうか。

青年、シンデレラ・ナイトメア。灰青色のセミロングで髪の切っ先がフロスティブルー色をしている。紅碧べにみどり色の瞳。家の家紋であろうものが刻まれたペンダントをし、左手首には瞳と同じ色のリストバンドをしている。クリーム色のオフショルダー(半袖)で、首元のうなじ辺りと肩にオフショルダーに向かって伸び、繋がっている布がある。うなじ辺りの方はクロスしている。ベルトに青色のジーンズでくるぶし辺りが大きく広がっている。茶色のヒールが高いブーツ。ズボンの裾辺りにはこちらは領地の紋であろう装飾がある。


シンデレラは湊達を部屋の中に招き入れた。その部屋は真っ暗で辛うじてカーテンの隙間から月明かりが差し込んでくる以外、明かりはなにもない。いや、あった。暗い中、妖艶に浮かび上がる魔法陣。その仄かな光は見る者全てを恐怖させ、魅了する。ツキカゲが瞬間的に湊を背中に隠す。がその直前、湊は魔法陣の上に置かれた豪華な、そして古びた赤色のソファーに糸が切れた操り人形のように座っている()()に目を奪われた。あり得ない…どういうこと?一体、どういうこと!?ギュッと腕に抱える清光を抱き締める。清光が湊の感情を感じ取り、オッドアイを細めた。シンデレラはそんな彼女の驚愕を余所にその人物の元に歩み寄ると、後ろから抱き締めた。と言ってもソファーに身を委ねているため、シンデレラの両腕がその人物の肩ら辺を抱いた、と云う方がしっくりくるが。シンデレラはクスリと、暗い中、驚く湊達を見て言った。


「ボクの、()()()()です」


歪んだ瞳が湊達を貫いた。何を言っているんだ?全員が全員、頭に疑問符を浮かべそして、その異常さに気づく。先程まであった親しみ深い、領民や騎士に慕われていたであろうシンデレラの面影は何処にもなかった。ただただ、首を凭れる、糸が切れた操り人形のような人物に異常なまでの歪んだ眼差しを向けているだけ。


「ひっ」

「ピィアレナ」


その歪んだ瞳に思わず恐怖が芽生えたのは無理もない。ピィアレナが小さく悲鳴を上げると龍華が彼女を背に庇った。ツキカゲも先程から湊を庇っているが、湊の脳内では高速でゲーム情報が巡っていた。ツキカゲが心配になり、湊に声をかけようと振り返りかけた、その時。


「グルル…グルル…」

「…清光?」


低い低い、まるで地面の底から響いているのではないかと錯覚してしまうほどの唸り声が湊の腕からした。そこにいるのは清光で。だが清光は湊の制止を振り切り、大きく跳躍すると空中で回転しながら大きくなった。


「清光!?」


何処か悦に入った様子のシンデレラと人物の前に着地すると清光はオッドアイを細め、唸り声を上げた。シンデレラが訝しげな表情で清光を見下ろした。途端に清光の唸り声が大きくなる。止めなくては。そう思った湊がツキカゲの脇を通りすぎようとする。が、ツキカゲが湊を止め、自分が行くと視線で言う。しかし、それよりも先に清光が飛び出した。狙いは、()()()()()()()()。大きく振りかぶられた鋭い爪が届くよりも前に、シンデレラがフイッと指を振った。途端、清光を泡のようなものが包み込んだ。清光がなんだと必死に抵抗するが、泡は清光を離さない。ツキカゲが前方に踊り出て、泡共々清光を抱き上げると清光は仮猫の大きさに戻ってしまった。泡に閉じ込められたままである。


「!ツキカゲ!」


龍華の悲鳴にも似た声にツキカゲは我に返り、前方を見たが遅かった。目の前に清光を捕らえたものよりも大きな四つの泡が浮かび上がっていたのだ。こんなので誰が緊急事態じゃないと言える。逃げれば良かった。しかし、そう思うのは今さらで遅かったのだが。


「あーあ、せっかくご主人様も入れようと思っていましたのに。ボクの…そう、()()の、ご主人様に手を出すなんて、野蛮ですね…()()()()()()()。ならず者は、反省しろ」


シンデレラはその美しい顔を怒りに歪ませて言う。湊は胸騒ぎと云うか、違和感を感じた理由はこれかと感じながら、ツキカゲ達に手を伸ばした。その瞬間、湊の視界は突然、暗転し、次の瞬間、視界一杯に広がっていたのは冷たいコンクリートだった。

…………一言言って宜しいか?はぁ?(困惑)


ゲームにお花見イベントとかってありませんでした?……イベントぉ……そうして、突然の変貌ぉ……ひぇえ

ところで、次回は月曜日です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。