第五十ゲーム・舞色
ト、ト、ト、とピィアレナはよろめいた態勢を片足で立て直すとレイピアを顔面に縦に構えた。彼女に向かって上空から急降下し、攻撃してくる天使がいた。精神統一するピィアレナを嘲笑う。がそれはピィアレナも同じだった。カッと目を見開き、そして一歩足を踏み出した。カクン、と首を傾げるようにして天使の一突きを辛うじてかわし、レイピアをその胴体に向けて突き刺す。一騎討ちのような感覚。ピィアレナは小さく笑い、突き刺したレイピアを容赦なく回転させた。空中で動きを止めた天使が苦痛の声をあげて崩れ落ちた。その瞬間にレイピアを抜き、背後に迫った気配に向かって回し蹴りを放つ。首の辺りを狙ったのだが、敵に防がれてしまった。片足に響く痛みに軽く顔を歪ませながら、片足を引き、後退すると同時に刃物が振り下ろされた。コンクリートが抉られた瞬間、彼女の前に現れたのは悪魔。悪魔は大きな刃物、大剣を担ぎ、ピィアレナに向かって振り下ろした。バッと跳躍し、その一撃をかわすと横からレイピアを突いた。がそれよりも先に大剣がピィアレナを狙って振り回され、彼女は慌てて頭を抱えてしゃがみこんだ。
「…あ、あっぶないわね!」
思わずそんな文句がもれる。ブンッと振り切られた大剣の隙をついてピィアレナはしゃがみこんだ状態で片足を振り上げ、振り回した。横腹に激突したためか敵が後方によろめいた。ピィアレナは一気に懐に迫るとレイピアを仮面目掛けて振った。ピッと小さな音と共に仮面が吹き飛ぶ。ピィアレナは相手の状態などお構い無しに顎に向けて下から拳を突き上げた。仰け反る敵に追撃を与え、額に踵落としを食らわせる。フラッとまるで酔っぱらいのように倒れ込み、一瞬痙攣したのち動かなくなった敵を横目にピィアレナは横から突き出された攻撃を間一髪で後方に仰け反ってかわした。イナバウアー状態からコンクリートに床をつき、クルンと一回転。それにピィアレナと同じレイピアを持った敵が目を丸くしていた。
「なぁん♪」
「あら。早かったわね清光」
「…え?」
ニッコリと笑ったピィアレナに目の前の敵が目を丸くする。そして次の瞬間、その敵は大きく横に吹っ飛んだ。吹っ飛んだ敵は受け身を取れずに数回バウンドすると翼で空中へ体勢を立て直す。しかしその隙さえ与えないと言わんばかりに清光が爪を伸ばして飛びかかる。飛びかかって来た清光に向けて敵が刃物を突く。突然突かれたためか攻撃をかわすことが出来なかった。けれども、清光の鋭い爪は敵の翼を引き裂いた。バリバリ!とまるで雷が落ちたかのような音と共に敵の翼が引き千切れる。清光は二翼を牙と爪で引きちぎる。敵は甲高い悲鳴を上げながらよろよろと後方によろめく。
「清光、それペッしなさい。ペッ」
「ぬにゃん…に"ゃ」
口の中に入ってしまった翼をピィアレナの言う通り、吐き出す。不味い。飛んでるから美味しいと思ったんだと言わんばかりの清光の苦い表情にピィアレナはクスリと笑う。そして、一歩で先程の敵に迫る。敵の目が見開く前にレイピアを突き返し、トンと肩を押して離した。ドサッと倒れた敵の頭上をピィアレナと清光は飛び越えて行った。
目の前で火花が散り、目を開閉させる。敵はその隙をついて龍華に追撃を加えようと交差していた刃物から自分ののみを外した。だがそれはすなわち、龍華の脇差も自由になると云うことだ。敵が横から刃物を振るが龍華はそれをしゃがんでかわすとその足に脇差を突き刺した。敵が後方に軽く後退する。逃がすなんて、ない。そう言うように龍華がスッと敵の懐に一気に迫り、顔に向かって蹴りを放った。仮面が吹き飛び、敵すらも横に飛んで行く。飛んで行く敵の片腕に容赦なく脇差を振り下ろし、翼ごと切断する。飛んで行く敵の脇腹についでと云うように回し蹴りを放っておいた。その敵と入れ違いになって別の敵が刃物を振って来た。攻撃をかわし、脇差の切っ先を向ける。が、もう一人敵がいたらしく、空中から切っ先が落ちてきた。慌ててかわすが頬に軽く一線が滲んでしまった。龍華は脇差をクルリと回転させると目の前に迫りくる刃物の軌道をそらし、相手の後方へ大きく跳躍する。敵の肩を足場に空中で刃物を構えていた敵に向かって跳躍。突然飛んで来た龍華に驚いたようだったが、龍華は空中で体を捻り、攻撃をかわし脇差を振る。顔に向かって振られた一撃は防がれてしまったが、相手の手首に攻撃し、刃物を弾き飛ばす。落下した敵の刃物を近くにいた清光が尻尾で器用にキャッチした。そのキャッチした刃物で先程まで龍華が相手取っていた敵と交戦を始める。と、刃物を弾かれた敵が翼を刃物のように鋭く尖らせ、地面にいつの間にか着地した龍華に攻撃する。
「そう来るか」
ゾワリ、敵の動きを凄まじい殺気が阻む。龍華はニヤリと愉しげに笑った。震える足を懸命に動かし、龍華に向かって急降下する。龍華も龍華で脇差を低く構え、相手がやって来るのを今か今かと待ちわびる。そして、龍華と敵が接触し一拍の間があいた。ゆっくりと体勢を低くしていた龍華が立ち上がる。とそれと同時に敵は倒れてしまった。そんな敵を横目に、龍華は勝った事を喜ぶように小さく微笑んだ。
清光は龍華が相手取っていた敵と器用に刃物を使って交戦。相手の肩に仲間であろうものの刃物を突き刺す。そして間髪いれずに飛びかかった。コンクリートに打ち付けて、胸元や腹に牙と爪を食い込ませる。バサッと翼が清光を撤退させる。清光は大きく後方に跳躍する。敵が清光が退いたのを良いことに満身創痍で立ち上がろうとする。が、その瞬間、清光が「なぁん」と鳴いた。え、と思ったのも束の間、敵の首筋に背後から刃物が添えられ、横に引かれた。途端、敵は前方に崩れ落ちた。
「みゃん、なー」
「ふふ、そうだな清光」
敵の背後にいたのは龍華だった。脇差についた不気味な色の血を払い、清光に近づいた。清光の頭を優しく撫でる。とピィアレナがやって来た。二人が背中を合わせ、周囲の敵に警戒を配る。清光も二人を守るように低い唸り声を上げた。清光の唸り声は何処でも恐ろしく感じるらしく、敵の動きがぎこちない。それに二人はクスリと笑い、武器を構えた。少し遠くで湊とツキカゲが戦っている音がする。敵は騎士団の実力もあって少なくなっている。
「龍華、大丈夫ね?」
「嗚呼。聞かないでおくれ?」
「なぉん。にゃ!」
ピィアレナが聞くと脇差を構えながら龍華が笑った。清光も出来ます!と言わんばかりに尻尾を逆立てる。彼らはジリジリと周囲を固めてくる敵に向かって大きく跳躍した。
ピィアレナ「ペッしなさい、ペッ」
湊「ピィアレナお母さんみたいだよやっぱり」
清光「にゃん」




