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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
二周目 悪なる正義、正義なる悪
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第三十七ゲーム・気づいたか、それとも気づけなかったか


暫く戦い、互いに息が切れかけて来た頃。気絶していた多くの敵も意識を取り戻し、立ち上がり出すのを横目に見てツキカゲは苦々しげに唇を噛んだ。これでは最初の二の舞だ。体力が減っている状況でまた大勢と相手をするなんて、どちらが負けるか決まったようなものだ。それを龍華に視線で伝えると彼も分かっているようで頷き返して来た。上にいる湊とピィアレナとどうにかして連絡し、この状況を抜け出さなければならない。はてさてどうしたら…?武器を構え、身構えながら思考を巡らせる。その時、ドガン!!と地響きが響き、土煙が突然舞った。その二つは二階へと続く大きな穴付近からまるで落ちてくるように響いて来ていた。敵味方関係なしに「何事!?」と一斉に振り返った。恐らく、上から攻撃によって誰かが落下したのだろう事は理解出来た。土煙がゆっくりと晴れて行く。敵か味方かはっきりさせたくて全員の視線が向けられる。土煙が晴れたその向こう側、瓦礫の山に埋もれるようにして楠とピィアレナが重なりあって倒れていた。楠の背中へ巨木の根っこが落ちた衝撃で吸い込まれて行く途中で、その上にピィアレナが重なって倒れている。


「ピィアレナ!」

「楠!?」


まさかの人物に片割れが思わず声をあげると、ピィアレナが気付き、「イタタ」と頭を押さえながら楠の上に起き上がった。そして、自分を見ている気配に気付き、呆けた様子で彼らの方へ顔を向けた。まさか両者の攻撃のぶつかり合いで一階までに落ちてくるとは思ってもみなかったようで、一瞬驚いて動きを止めた後、冷静に行動を開始しようとし始めた。が、


「…んー…ピィアレナ、どいて」

「あ、ごめんなさい」


ピィアレナの下敷きになっていた楠が意識を取り戻し、彼女に声をかけた。寝起きのようなくぐもった声にピィアレナは思わず謝罪してまった。一瞬の間のあと、なんであたしは敵に謝った?と彼の上で疑問で首を傾げた。がすぐさまどき、瓦礫を足場に跳躍するとツキカゲ達のところへと移動した。


「ピィアレナ、大丈夫?」

「ええ、まさか落ちるとは…」


あはは、と空元気に笑うピィアレナ。起き上がった楠に別の敵が手を貸しているのが見えた。


「マスターは?!」

「私はこっこー!」


ツキカゲが湊の存在に気付き、心配で声を荒げるとこの状況には合わなそうな明るい声がした。その方向をツキカゲが見るといつの間にか清光の背に乗った湊が二階の階段から降りてくるところだった。近場の壁を斜め飛びしながら清光が彼らのもとに飛んで来る。跳躍の反動に湊が振り落とされそうになったが、間一髪必死にしがみつき、落下を逃れる。


「マスター、大丈夫?ピィアレナが上から落ちてきたから…それに」

「大丈夫だよツキカゲ!私、ピィアレナと少し離れた場所にいたから巻き込まれなかったみたい」


心配するツキカゲを安心させるために湊が彼の手を両手で優しく包みあげる。嗚呼、()()だ。その事実が手を通じて伝わって来て湊もツキカゲもホッと胸を撫で下ろした。龍華はその光景を見て、視線を外し、敵の方へ向けた。ツキカゲが清光にお手柄だと片手をあげるとその手に清光は鼻を擦り付けた。


「主人、どうするんだい?敵が起き始めている。逃げる気ならチャンスは一回しかないよ」

「ん?一回?龍華どういうこと?」


湊が不思議そうに龍華に訊く。すると何故か龍華ではなくピィアレナが自慢げに胸を張った。敵は次々に起きてきている。決断は早くしなければ。


「…無様だな」

「なんて言った?」


その時、橘がほとんど呟くように言った。その無様と云うのが自分達を救ってくれた湊に向けられたものだと気付き、ピィアレナの低い声が響いた。ゾワリ、何処かで悪寒に怖じ気つく気配がする。


「長い間、怨念だけにしがみついているだけのような人達よりはマシよ」


挑発するようにピィアレナが言い放ちニヤリと笑う。湊もツキカゲもヤバイんじゃないかとハラハラとした面持ちで見守っていた。だがその挑発に橘は反応を返さなかった。それは楠も同じだった。反応がないことに逆に敵は面食らった様子もあったし、同じように動きを止めたものもいた。あ、今がチャンスだ。そう思ったのは何も湊だけではなかった。それはツキカゲもそうだった。瞬時に龍華に視線を送り、逃げる事を知らせると頷いた。彼なりの逃げ道を用意していたのかもしれないが、今が最高に好都合だ。龍華は相手を睨み付けるようにしているピィアレナの手首を掴むと清光の方へ引き上げた。湊も手伝い、自分の後ろにピィアレナを乗せると清光に「今!」と叫んだ。その声に橘と楠、敵達はハッと我に返った。だが、もう遅い。ほぼ全力疾走で清光が敵の間を駆け抜ける。その後をツキカゲと龍華も追いかける。ちなみにほとんど清光と同じくらいの速度だった。速いな。


「清光、突っ切って!」

「なうん!」

「あ、おい!」


我に返った敵達が武器を片手に動き出そうとし始める。しかしそれを橘が片腕を横に出して制した。それは湊達には見えなかった。彼女達は誰も追ってこない事を良いことに背後を振り返る事なく、逃げて行った。小さくなって行く彼女達の背中を見送りながら、楠が橘の方へ手を借りながらやって来る。


「…良いんですか?」


そう橘に敵の一人が訊く。それに彼は何も言わずに微笑んだ。そして楠と共に我らが兄妹達を振り返った。嗚呼、お前達の言いたいことは良くわかった。


「ふふ、橘。どうするの?」

「さぁな。でもまぁ先に」


手元から落ちた誰かの刃物が足元に転がっている。その刃物を拾い上げ、楠に投げ渡す。慌ててキャッチした楠はその刃物を見て、クスリと笑った。双子のようで双子ではない二人のその心情を、そこにいる全員が知っていた。けれども、何処か納得行っていない部分もあって。嗚呼でも、


「「お前達/きみたちの行く末に」」



本当のところ、この二人は気づいていたのか否や……彼らしか知りません。

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