第三十ニゲーム・ハジメマショウ?
その時、彼らの会話を遮った殺気と気配があった。
「じゃあ、此処では何を解決すれば良いんだい?」
「んーそれが分からなくて…多分何かしらのk「みーつけた」?!」
その声は低いようで高い。龍華とピィアレナには心当たりがあるようですぐさま武器を手に立ち上がり、警戒した様子で辺りを見渡した。それを見たツキカゲも刀を出現させ握り締めながら湊を背に隠した。湊も慎重に四方八方に視線を巡らせつつ、短剣を抜き放つ。ツキカゲの腕の中から抜け出した清光にまだを様子見るよう湊が視線で指示を出すと、清光はそれに従い、何故かツキカゲの頭に上半身を乗っけた。そのよく分からない状況にピィアレナが緊張を破るように軽く吹き出したのは無理もない。
「…清光ー?」
「なうん!?にゃー!」
「あ、怒らないであげて!私が様子見てって言ったからー!」
慌てて言い訳を連ねる清光に湊が加勢する。しょうがなさそうにツキカゲはため息をつくと再び警戒に戻った。少し笑い出したピィアレナを龍華が止めているのを横目に見て、湊はまさかと考える。いや、考えていないわけではなかった。ただただ、無視していただけ。
「龍華、ピィアレナ、もしかして?」
「かな。案外そこまで執念深かったっけ、って思うくらいさ。なぁ、橘、楠?」
まるでおちょくるように龍華が云う。その途端、今まで感じ取れていなかった多くの殺気と気配が彼らを襲った。今までに感じた事もないその殺気に湊の背筋に悪寒が走り、思わず口から小さな悲鳴が漏れる。すかさずツキカゲが殺気から隠すように湊との距離を縮め、殺気と気配を感じ取った清光がツキカゲの頭の上で低い唸り声をあげる。頭の上なので威厳も恐怖もない。龍華の言葉に反応したかのように頭上の穴に数人の銃器と同化した敵が出現した。それを合図に湊達を囲むように多くの敵が現れた。何処に隠れていた!?と驚愕する。いやよく考えれば元々は武器なのだから、中には隠れるのが得意なものがいても不思議ではない、か?
彼らは湊達に向けて殺気を放つ。しかし、辛うじて一応でも仲間認識されていたであろう龍華とピィアレナには殺気と云うよりも戸惑いの視線が向けられていた。その中には何故か、同情も紛れ込んでいた。それに気付き、龍華は顔を歪めた。彼の体に巻き付く龍が声をあげた、気がした。龍の鳴き声に答えたのか、それとも龍華の言葉に答えたのかわからないが湊達の前にある二人が歩み出た。自分達に武器の切っ先を向けられている以上、警戒しかない。二人の顔にはやはり、布がはためいていた。湊はこの二人を見たことがあるような気がした。けれど、途中でやめてしまっている以上、その知識はほとんど使えない。軽く頭を振って追い出した。
「此処まで来るなんてね。暇なのかい?」
「ハハ、そんなわけないだろ?迎えに来たんだ」
「なんで、こっちに武器を向けているのかな?」
低い声と高い声を響かせながら二人に云う。信じて疑っていない、そんな雰囲気もあったがただ単に当たり前と云うものが強く、湊もツキカゲも首を傾げた。
「だって、貴方達とは敵だもの。あたし達の大切な者を狙うならそれは敵だわ」
「大切?それって、その人間の事?人間が敵でしょう?だって、怨念を与えた元凶なんだから」
「違う!!」
服装的に少女であろう人物にピィアレナが叫んだ。その瞳には敵意しか宿っていない。
「怨念は武器と人間、両者のせいよ。その償いを人間はしている。あたし達はそんな彼女に救われた。意味を見つけたの」
「……それでも理解出来ないならば、アンタたちにも教えてあげようか?オレの呪いの真実を」
ピィアレナの強い決意に二人は息を呑んだようだった。それに感化され、龍華が重たい口を開いた。その話を知っている湊にしてみれば、大丈夫かと心配するようなものである。頭上の敵にも警戒を配りながら龍華を振り返る。すると彼は大丈夫、と儚く笑いかけた。露になった、右腕に、体の右半分に巻き付き食い込んだ龍を全員に見せるかのように龍華は右腕を掲げる。全員の、敵の視線が彼に注がれた。それをものともせずに彼は告げる。
「オレね、人間にも武器にも家族、兄弟、親友を奪われたんだ。ねぇ、それでも悪いのは人間だけだと言えるかい?オレは両者に復讐の念を抱いたんだよ。そうして、龍は…呪いは死を意味するように四になった。これでも、これでもアンタたちはそう思うか!」
湊は龍華の悲鳴じみた言葉に顔を歪ませた。それはツキカゲも清光もだった。そう、龍華の家族は人間、兄弟は同士、親友は両者に殺された。そのため彼は両者に恨みを抱いている。誰もが相手が悪いと云うが、悪いのは両者なのだ。それを彼は身を持って知った。だから、この世に失望したのだ。憎悪が憎悪を引き寄せ、真実を見えなくする。嘘と怨念に塗り固められたのは、きっと両者だ。だがしかし、その悲痛な思いは短い間でさえ同士となっていた、長年怨念に乗っ取られすぎた彼らには届くことはなかった。顔を覆う布が風によって揺れた。その隙間から見えた瞳と表情に宿っていたのは、完全なる敵意。彼らはこの瞬間をもって敵対した。
「それがどうかしたか?それでも、悪いのは人間だ」
それでも、その非を認めぬか。服装的に少年であろう人物が「それがなに?」と云った感じで告げる。だがその彼らのうち数人はなにか思うところがあったらしく、湊達に向けていた武器をおろした。嗚呼、伝わる人には伝わるのか。しかし残りは完全に敵対状態だった。少女であろう人物は驚いたようで軽く声をあげていたが、考え直すまでには至っていないようだった。
「悪い人間は、洗脳している人間は殺さなくちゃね」
「嗚呼、悪いのは、人間だから」
「っ、アンタたちはそれでも『双剣ノ華』かい?」
龍華が右腕を下ろしながら訊く。その言葉に湊は聞いたことあるような…と軽く首を傾げた。湊達の言葉に数人が後退り、次々に撤退していく。戦いたくない。そう言っているのがひしひしと伝わってきた。そんな彼らを一瞥し、少年であろう人物は云う。
「嗚呼。でも今は、『神楽咲』だ。怨念によって、な」
「逃げ出しちゃった姉弟は良いよ。ぼくたちだけで助けちゃうから」
クスクスと、こちらが正しいと言わんばかりに自信満々だ。何処からそんな自信が出てくるのだろう。それほどまでに怨念に…。そう思ってしまう。
「……もう、説得は聞かないところまで来ちゃったんだね」
「そうみたいよ湊ちゃん」
湊の悲しそうな呟きにピィアレナが同意した。それが合図のようだった。全員が武器を構え出す。清光がツキカゲの上から飛び降り、獣となる。態勢を低くし、唸り声をあげる。それに少年であろう人物がクツクツと喉の奥で嗤った。
「逃げた兄妹は後回しだ。最初に、この人間共を殺そう。そうすれば全て元通り」
「そう云うなら、あたし達は全てをもって抵抗するわ。幸せなあの時を、この時を奪わせはしない!」
少年であろう人物の憎々しげと云った言葉にピィアレナも対抗するように叫ぶ。さあ、彼らの亀裂は引き裂かれた。あるのは勝敗。武器を構え、緊張が支配する。そうして、誰とも云うこともなく武器を交差する甲高い音が響いた。
そして彼らは戦うのです。自らの目的が達成されるその日まで。例え、自分の魂を捨てようとも。例え、貴女を失おうとも。例え、意味を見失ったとしても。さあ、戦いましょう。これは、彼らが待ち望んだ仇討ち。
前回の話になっちゃうんですけど、爪に色が塗られるって書いたじゃないですか。「見分けー」って考えていたら二人共妖艶っぽいから着けちゃったんだぁ……反省はしてない(キリッ)
次回は木曜日です!




