第二十六ゲーム・その思考、誰の思惑か
何か可笑しい。そう湊は思っていた。敵を蹴散らしながらその理由を探る。敵と戦う自分達以外の討伐隊は三階も解放して戦っている。最強の盾と言われるラボなだけあって優勢なのは間違いない。けれど、それ以上に敵の勢いは凄まじく敵の人数も多い。人数だけで云ったら容易に負けてしまっている。それに目的があるのか、恐ろしいほどに連携が取れている。湊は目を狙って突き出された刃物を紙一重でかわし、短剣を右胸に突き刺す。痛みに一瞬湊に寄りかかった敵を蹴り飛ばし、吹っ飛ばす。敵はまだまだ多い。湊は我知らず、舌打ちをかました。敵が多すぎる。逃げた方が良いか?だって自分達は巻き込まれただけのようなものだし。市民が避難しているであろう「ドーム」に逃げ込んだってバチは当たらないと思うのだが。
「(ん?ドーム?)」
そこで湊の脳内に何かが引っ掛かった。その引っ掛かりはなんなのか。敵が襲撃してくるのも気にも止めずに、湊は立ち止まり考え込む。今だと云うように敵が湊に向かって刃物を向けて来る。がそれらをツキカゲと清光が防ぎ、彼女に近づけさせないと言わんばかりの殺気を帯びた瞳を彼らに向ける。その瞳にゾワリと敵の背筋に悪寒が走ったのは、気のせいではない。
そんなこんな、湊は考え込む。一週間で諦めてしまった〈神狩〉の記憶を探る。ラボ、ドーム。擬人化した武器。私がやっていた一週間の中でラボに襲撃してきた事はあった?ない。それ以降にもあったと云う話は聞いていないからそこはそっくりじゃない。思い出せ思い出せ。彼らの狙いを。怨念を。…そういえば、このラボには大きな研究施設があった。確か、六階の大部分を締める研究施設でそこでは日々、怨念に乗っ取られた武器の研究が行われている。そこまで考えた時、視界の隅に見慣れたものがうつりこんだ。けれど、それは。まさか。その考えに辿り着いた湊は目を見開くしかなかった。でも、確証はない、けれど。
「ツキカゲ、清光、行くよ!」
「行く!?行くって何処に!?」
敵を殴り倒したツキカゲが驚愕しながら湊を振り返る。清光も驚愕したようで大きく目を見開いていたが、湊の指示に従うように彼女の前に踊り出ると乗れと促す。湊が清光の背に飛び乗り、ツキカゲも接近してきた敵を後退させた後、駆けると清光に飛び乗った。勢いよく飛び乗ったのでツキカゲ、湊と云う位置になった。ツキカゲがどういうこと?と湊を振り返りながら何気なく彼女の手を「何処か掴んで」と云うように掴む。湊は何気ないにも関わらず、少し頬を染め、彼に抱きつくようにして腰に手を回した。てか、今嬉しくて惚けている場合じゃない。
「このラボの中心部!清光、六階目指して!」
「なう、にゃ?」
湊の指示に清光は一応頷いて走り出した。しかし、納得がいっていないようで走りつつも首を傾げている。移動する湊達を敵が放っておくはずもなく、容赦なく攻撃してくる。それを駆ける清光が牙でその上からツキカゲが刀で攻撃し、蹴散らして行く。
「マスター、いきなりどうしたの?中心部に向かうだなんて…」
「あのね、彼らの本当の…かはわからないけど狙いが中心部じゃないかなって」
「?」
「えっとね、中心部に研究施設があってそこで擬人化した彼らの研究とかしてるの。怨念以外の理由だったらそこかなーって」
「なるほど。そこに何かあるって言いたいんだね」
「うん、あと、確認したいことがって」
「?」
同じとは限らない。けれど、あれがなかった時点でそう思わずにはいられなかった。ツキカゲがなにも言わない湊にわかったと前方を見ながら頷いた。いつの間にか、清光の足は四階を駆け回っていた。四階には敵はおらず、シーンと静まり返っている。湊はツキカゲの背後から顔を出しつつ、記憶を頼りに清光に指示を飛ばした。清光のお陰か、それとも湊の記憶のお陰か分からないがものの一、二分で六階に辿り着いた。階段を上りきった清光から飛び降り、「お疲れ」とツキカゲと一緒に頭を撫でると嬉しそうに喉を鳴らした。
「マスター、此処からどうするの?」
「え、えーと…」
ツキカゲの問いに湊は困惑した様子で六階を見渡した。階段を駆け上がった先には長い廊下が続いていた。その廊下の奥は全然見えない。どんだけ長いんだ。廊下の両脇には一定の距離を置いて観音開きの扉が設置されている。此処、六階は大部分の部屋は研究施設となっており、六階の半分、二十三室がそうである。うーんと湊は頭を抱えながら記憶を探る。ゲーム内で研究施設に入ったのはチュートリアルと武器をもらいに行く時だけで、他の部屋はよくゲームであるように「権限はありません」だの「会議中です」だの表示されて入れなかった。あれって嗚呼表示されても何回もやっちゃうよね、今度こそ入れるかなーと思って。
「た…確か…階段をのぼって右から数えて六つ目!その部屋には入れた!」
「ねぇマスター、研究施設になんでマスターは入れたの?」
ごもっともな質問がツキカゲから飛び出した。湊が数を数えながら歩く後ろに着いて行く。清光が鼻をピクピクさせながら湊の前に躍り出ていた。湊が言った右から数えて六つ目の扉から何かを嗅ぎ取ったらしい。
「怨念に乗っ取られた武器は倒された後、怨念が成仏したものに関しては手持ちの武器として入手出来るの。でも稀に研究施設を経由しないといけないのもあってね。まぁ私はほとんど出入りしなかったけど」
そっか、と何処か明後日の方向を見ながらケラケラ笑う湊に納得するツキカゲ。と、部屋に着いたらしい。清光がやはり何かを嗅ぎ取ったようで低い唸り声を上げている。やっぱり何かあるらしい。清光の様子から警戒心が膨らんでしまう。
「でも」
扉の少し前で小声で、少し低めの声で湊が云う。その声色にツキカゲの体に緊張が走った。
「何か、感じるの。確かめたいのも、きっとそこに共通してる」
「わかった、マスターがそこまで云うならなにかあるんでしょ。従うよ」
両肩を竦めながらツキカゲが云う。湊はその真剣な瞳に心底安心した。彼に否定されたら、何故か怖かった。自分でもわからないけれど。湊は深呼吸をし、扉から少し距離を取った。なんだなんだとツキカゲと清光が怪訝そうに湊を見つめる。湊は助走をつけて勢いよく駆け出し、扉に向かって飛び蹴りを放った。
「ご用じゃーーーー!!!!」
「叫ぶ!?そこ叫ぶ必要あったねぇ?!」
話は進みますよ~
大声上げたくなったんですよきっと。




