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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
二周目 悪なる正義、正義なる悪
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第二十三ゲーム・楽しい日々とその時と



鉄の大きな塊がまるで生きているかのように蠢いている。あの大きさの中に住んでいるのは人間達だ。あの大きさに住まないと彼らは安心できないのだ。そう、自分達の脅威から。それを表すように全員の顔を覆う布が風によってなびく。なんとも煩わしい。そう感じるのは、自分が()()しているからか。自分達の頂点…と云うのは明らかに語弊がある。()()、リーダー的存在となっている双子のようで双子じゃない二人が云う。


「あんなに大きな物を作って、馬鹿だよね」

「俺達に勝ってると思ってる。どう考えればそうなるんだろうな」

「「悪いのは、人類にんげんなのに」」


クスクスと笑う二人。そう思っているのはなにも二人だけではない。此処にいる全員がそう思っている。自分達が怨念に乗っ取られたのは、人類のせいだ。自分達は悪くない。本当に悪いのは、人類だ。嗚呼、ずっとそう思い込んでいれば、事実になる。どちらにしろ、それは。

深く考え込んでいると周りの声が聞こえなかったようだ。彼ら…同士達が雄叫びを上げている。一応、乗り遅れないためにも軽く雄叫びを上げておく。そうしないと後で色々言われてめんどくさいことになりかねない。


「(……馬鹿馬鹿しい)」


嗚呼、()()()がいてくれたならば。()()()は少しの間しかいなかったけれど、それでもあの時感じたのは紛れもなく幸せだった。


「(誰も、分かるはずなんてないのに。馬鹿らしい)」


彼らが全員、人類の最期の盾「ラボ」に向かって駆け出す。あそこには大切な人がいる。だから。

駆け出した彼らの後ろをゆっくりと着いて行く。顔にかかった白い布がとても邪魔だ。布を思わず叫びたくなった事を叫ぶ代わりに乱暴に奪い取った。


「あたしには、あたし()には必要ない。そうでしょ?」


…*…


湊によれば、自分達が今いる場所は怨念に乗っ取られた武器を元に戻す者達が集い、彼らから身を守っている建物「ラボ」だと云う。ラボは擬人化した物達にとってはラスボスとも云える建物であり、文字通り人類にとっても最期の盾となっている。しかし、それはただのまやかしである。湊達はそのラボのエントランスホールにやって来ていた。エントランスホールの片隅にある少し小綺麗なカフェで遅めの昼食を摂っていた。本音をいえば、此処に来たのは一昨日で遅かったので寝ていました、はい。そして昨日は一日中、部屋にいても大丈夫かと云う実験をしていたので暇でした、はい。また移動に時間がかかっていたらしいのかはたまた日時感覚が違うのか、前の異世界から一週間も経っていた。なんとも不思議である。それに転移だが移動だかした際に前の異世界で怪我をしていた箇所が治っていた。これには喜べば良いのか、よくわからなかったがとりあえずありがたくは思っておいた。これだけはな!他は駄目だ!


ツキカゲが食後の珈琲を飲みながら周囲に視線を巡らせる。その向かい側にはアイスを頬張る湊とそのアイスが欲しいのか、テーブルに両前足を乗っけた清光がいる。


「ツキカゲ、あんまり周囲に殺気もらしちゃ駄目だよ」

「敵がいるかもしれないじゃん。警戒したところで罰は当たんないでしょ?」

「まぁ、そうだけどね!あ、コラ清光!」

「?にゃあ?」


湊が食べようとしたアイスを狙ったのか、清光の片手がアイスをかすった。慌てた様子でアイスとスプーンを上へ持ち上げる。と清光は残念そうに湊の膝の上に座った。そんな様子を見てツキカゲはクスリと柔らかく笑った。珈琲を飲み終わり、同じく食べ終わったであろう湊を伺うと彼女も食べ終わったらしく、清光を抱き上げていた。視線だけで会話して、「行こっか」と立ち上がる。とりあえず、やることはないのだが、ただだらだらしているよりは早く解決して進む事が出来る。それに今回は前回と違い、ほとんど情報がないと云うこともある。何がそっくりか、分かるところだと良いが。


「何処行く?」

「んーとりあえずラボの中を探索しようよ。冒険冒険!」

「にゃあ!」

「ふふ、はいはい」


「行くぞー!」と片腕を上げてテンションが上がっている湊とそれに乗る清光。その顔がなんとも楽しそうでツキカゲは思わず、笑ってしまった。歩き出した湊の腕から抜け出し、清光がツキカゲの時のように肩に乗った。魔物から助けてもらったからか、特に湊になついている。彼女の肩に乗った清光を指先で優しく撫でると気持ち良さそうに目を細める。そのほわほわとした表情にツキカゲの表情も我知らず綻び、そんなツキカゲを見て湊も綻ぶ。


「さってと!んじゃまずは、二階にでも行ってみましょうか!」

「にゃぁん!」


清光が「賛成!」と言わんばかりに無き、尻尾をパタパタと動かした。と湊が思い出した、と言った表情でツキカゲを振り返った。


「そうだツキカゲ。今度、鍛練?して!」

「なんで?マスター」

「ん~少しでも強くなってた方が安心できるでしょ?だから!」


ツキカゲを振り返りながら言う湊。彼は優しく笑い、彼女の手を取った。最初の時と同じように手を繋いだ。あの時は嬉しくも恥ずかしかったが、今は違う。嬉しい、の一言だった。ギュッと繋ぎあったその強さが湊の提案を飲んでくれたことを示し、また信頼を与えてくれる。湊はツキカゲに見えぬよう顔を俯かせて小さく笑った。


「にゃ、にゃああああ!!」

「なに清光。君も鍛練したいの?」

「なん!」

「ハハ!頼もしいねぇ、ねーツキカゲ!」

「そうだね」


二人と一匹が笑い合う。そんな楽しくも美しい時間は、意図も簡単に壊れてしまうって事を、いつの世界でも知っていたはずなのに。忘れていたのは、傲慢か怠慢か。それとも


スパン!


平和か。


今日は此処までですかね。次は月曜日です!

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