第十六ゲーム・彼らの戦いは、
「我が願いに答えし満月の化身よ、その力を与え、愛しき者を救いたまえ」
ツキカゲが低い声で、優しい声でその言葉を紡ぐ。そして胸元に掲げていた片手を横に引いた。するとその空間にツキカゲの願いに応じて『黄金の剣』、黄金の刀が姿を現した。その姿は美しくも何処か恐ろしい。紫色の夜を纏いながらその刀はツキカゲに寄り添いながら手中に収まる。それを手中に収まった事を確認するツキカゲの前方に魔物が襲いかかる。彼はバサッと脇を通り過ぎるように軽く刀を振った。途端に魔物は真っ二つに切断されてしまった。その光景を見ていた湊は自分の鼓動が大きく響く音を聞いた。嗚呼、美しい。湊も負けじと短剣を近くに来た魔物に振る。だがそれは相手の刃物に意図も簡単に絡め取られてしまった。湊は引いても押しても動かない短剣にも魔物にも痺れを切らし、短剣から軽く手を離した。驚く魔物の前で軽く片足を引き、大きく跳躍する。そして短剣ごと魔物を蹴り飛ばした。
「私だってこんくらい出来るわ!」
ニヒヒ、と自慢げに笑う湊の手中に空中を舞って短剣が戻ってくる。後方に仰け反っている魔物に向かって「ワン、ツー、スリー!」とステップを踏んで直進する。トン、トン、と階段を駆け上がるように魔物の腕と刃物を足場に跳躍し、頭上から短剣を突き刺した。だが、それでもまだ倒れないのは、自分が弱いからか。魔物の次の攻撃を避け、空中で後転しながら着地する。顔を狙って蹴りを放つがその足を掴まれ、払うように吹っ飛ばされる。その際に攻撃をしたらしく湊の頬に軽く痛みが走った。彼女は床に足を付けてスピードを落とすと態勢を立て直し、勢いをつけて駆け出し、跳躍しながら大きく短剣を振り下ろす。しかし、その一撃は魔物の腕に同化した刃物によって防がれてしまう。バッと振られた魔物の刃物に湊の短剣が引っ掛かり、思わず前のめりになる。とその背後にツキカゲが見えた。彼はニッコリと笑いかけると刀を振り下ろした。引っ掛かっていた短剣ごと魔物の腕が切り落とされ、そのまま追撃で頭も切り落とされる。湊は落としそうになった短剣を持ち直し、いつの間にか足元に接近していた小さな魔物に気付き、回し蹴りを放ち吹っ飛ばす。だが足を間一髪で掴まれしまう。しかし湊は冷静に短剣を頭に突き刺し、撃破する。ツキカゲも上段から飛ぶようにやって来た魔物へ刀を縦に構えて応戦する。体の半分を削られた魔物が半分でも襲うかかるのを蹴りで防ぎつつ、武器を刀で奪い取り、その刃物を使ってとどめをさす。二人は背中合わせになり、次々に来る魔物の波を睨み付ける。
「マスター、戦えたんだね」
「戦えたって云うか…弱いけどね!」
えっへん、と胸を張って言う湊。胸を張るような事ではないはずなのだが。ツキカゲはクスリとその言葉に笑い、「頼もしいね」と呟いた。その一言に湊の頬が紅くなる。嗚呼、そう言ってくれるなんて嬉しい。湊は短剣を握りしめ、自分達を囲み始める魔物を睨み付ける。魔物が数対一気に飛び出して来た。それと同時に湊も飛び出す。が一体がまるで滑るような動きで湊に接近してきた。懐にまで一気に攻められ、大振りな刃物が勢いよく振り回される。その一撃を間一髪防ぐが、重いものは重い。その間にツキカゲの方にも魔物が襲いかかっていた。そのため、一瞬にして湊が危険だと横目で判断できた。だが、自分に向かって行かせないとでも云うように一気に振り下ろされた刃物を刀で防ぐのに精一杯である。湊は振り下ろされた刃物を持つ魔物の腕に向かって足を振り上げると踵を引っかけ、そのままクルンと起き上がる。頭上へ登った湊に向かって他の魔物が攻撃する。それを上へ飛んでかわし、魔物同士がぶつかって山へとなって行く。攻撃を次々とかわし、大きく跳躍し着地した。そして、振り返り様に重なりあった魔物達に向かって短剣を振った。
「?!マジか!!」
「マスター!?」
重なりあった魔物達の前に別の魔物が滑り込んで来た。そして湊の短剣を防いだのだ。短剣を勢いよく弾き飛ばす。湊はすぐさま受け身が取れず、短剣を握り直した時には既に魔物が目の前に迫っていた。ツキカゲが襲ってきた魔物を一刀両断して切り捨てると振り返りながら跳躍した。湊に向かって振り回されそうになっている攻撃は確実に彼女に当たる。ツキカゲが助っ人に行こうとするのを阻むように魔物が壁を作って彼の前に立ちはだかる。
「くっ、邪魔だy…」
その時、ツキカゲの視界に黒いものがうつった。その瞬間、ツキカゲは叫んでいた。
「行って!」
ソファーの背もたれを足場に大きく跳躍した動物が頭上から湊に向けられた攻撃をその牙で食い止める。と片手の爪を大きく振りかぶり、魔物の顔を引き裂いた。一旦後退した魔物に追い討ちをかけるように跳躍し、その爪を振り下ろす。そして、重なりあっていた魔物達にも両の爪で容赦なく攻撃を加え、亡骸とする。湊は攻撃される、かわせないと思って両腕で顔を覆っていたが動物のまさかの介入に呆けた表情だった。だが、頼もしい助っ人の登場に我知らず口角があがっていくのがわかった。湊は「ありがと!」と動物の頭をクシャリと撫で回し、短剣を再び構えた。ツキカゲも壁を作った魔物達を討伐し、彼らのところへとやって来た。湊は朝霧とレアンを振り返った。もう少しで、魔物を恐らく無意識のうちに暴走させている神代に到達する。だがそれは感情によって大量増殖している魔物によって阻まれている。湊はツキカゲに視線を向け、言う。
「あれ、間に合わせるよ!」
「了解。でも、どうやるの?」
ツキカゲにそう問われて湊はふふん♪と鼻を鳴らした。そして動物の、獣の頭を優しく撫で、その耳元で囁いた。承諾したようで獣は助走をつけて駆け出した。なんとなくわかったツキカゲも回るようにして足に力を入れると、あとを追って跳躍した。それを見送り、湊は振り返り、叫んだ。
「レアンちゃん!」
書き溜めも多いので今日で一周目終わらせます!うん!いつも通り!




