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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
一周目 絆
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第十四ゲーム・犯人の心



ツキカゲは何故か廊下が騒がしい事に気づいた。それはのんびりとお茶を飲んでいた朝霧も同様だった。何事だと軽く腰を上げながら腰に携えた剣の柄に手を置く。ツキカゲに動かぬよう手で制してゆっくりと扉に近寄る。朝霧がドアノブに手をかけようとしたその瞬間、扉が勢いよく開け放たれた。


「団長!この二人が…」

「ツキカゲは無実って言ってんでしょ!証拠は此処よ此処!」


そうして現れたのは青年に肩を掴まれ、苦笑いを浮かべるレアンとその二人の前に両手に抱えた多くの証拠品を持つ湊だった。彼らの背後には同じく何事だと困惑した表情の他の団員達が「なんだなんだ」と集まりつつある。ツキカゲは湊の登場に驚愕し、思わず立ち上がった。と云うか、早くないか!?


「マスター!?どうしたの?」

「ツキカゲの無実を証明しに来たの!あと多分だけど主人公補正もあるわ!」

「え!?」


湊が無事なツキカゲを見て、嬉しそうに笑った。主人公補正うんねんは後回しだ。てか主人公補正はもしかして関係なしなんじゃね?異世界だし。…まぁいいや。全てを悟っていたであろう朝霧に視線を動かし、伏せた。部屋の中に足を踏み入れるとテーブルの上に証拠品をゆっくりとした手付きで置いた。説明しろと腕を組む朝霧に向かって右腕の青年がレアンを中へ促しながら、不思議そうな表情を浮かべる。


「団長、どういうことなんだい?この子は、容疑者のt「ツキカゲは犯人じゃない!」」


青年の言葉を湊は遮るとテーブルに置いた証拠品からブローチを取り出す。そのブローチを見た途端、青年の顔が歪んだ。悲しいと云うか嬉しいと云うか、なんであると疑問だと云うような、複雑な感情だった。その瞳の先にいるのは湊が持つブローチと朝霧と云う人物。嗚呼、やっぱり。そう思ったのは、答えに辿り着いたのは湊とツキカゲだけではなかった。青年は少々乱暴にレアンの肩を押した。その行動に動揺が読み取れて、レアンは驚いたように彼を振り返った後、湊のもとへと駆けて行った。


「続けろ」


朝霧が湊に顎でそう示す。扉が閉められた事によって廊下からの喧騒と遮断され、此処には五人しかいなくなった。真実を知る五人しか。湊は朝霧に視線を移し、青年に移し、ツキカゲに移した。そして深呼吸をし、心臓を落ち着かせる。ゆっくりと真剣に満ちた瞳を開く。さあ、教えて。君の、真実を。


「このブローチは証拠品を奪った魔物を追って手に入れた物。三体の魔物が守るかのように私達に攻撃して来た。その視線の先にあった物。恐らく、自警団が来た時は、魔物にその情報が行っていたために発見は不可能だったと思われる。でも、私達は情報なんかなかった。私が、この事件に関わる事は想定できても証拠があるところに行くだなんて思わないからね。私は、レアンの魔法で事件の全貌を見た。目撃情報もある意味無効。たまたまツキカゲと被っちゃったのかな。ねぇ、朝霧も見たんでしょ?それでも、証拠がないことには動けなかった」

「えっ」


ニヤリと笑った湊。その事実に声を漏らしたのは青年だった。団長である朝霧がレアンに協力を依頼していたなんて知らなかったのだろう。彼女に依頼したとしたら、此処まで事件は深刻化はしない。朝霧は湊の言葉にそうだと頷くとレアンに視線を向けた。隠している必要はないと云うのだろう。レアンは此処に来てから終始困惑気味だったが、朝霧にそう視線で言われた事から、その表情は消え失せた。


「…なんでわかったんですか?桜ちゃん」

「あのね、私、レアンちゃんが自警団の証であるマントを着てるの見たことあるんだよ。それに普通、あんな魔法がある人材を引き入れないなんてあり得ないもん」


半分はゲームでの知識、もう半分は考えて思った事である。レアンが自警団ではないと云う事もあるが、それは当たったようだ。レアンは小さく笑うとパチンと指を鳴らした。途端、バサッと音がして彼女の両肩に証である黒いマントがまるで羽のようについた。正解、のようだ。そのまま湊は続ける。


「私は、映像を見て違和感を覚えた。そしてその違和感は、犯人だからと云うことに気がついた。暗闇に紛れているはずなのにそれでも分かる違和感。片方の肩から垂れていた、夜の闇から少し浮いた黒いもの。此処では自警団以外に長いもの、マントはつけちゃいけない決まりになっているよね?それに自警団は夜にも活動するからパッと見では分からないけれど、肩口と裾に印がついてるよね?夜でも分かるような印。しかも、長いものは団員の証である両肩ではなく、右肩から垂れていた……これら二つが暗闇に紛れているはずなのにそれでも分かってしまった違和感。放火現場から逃げた犯人は再び、現場に戻って来た。自警団副団長と云う地位と共に。このブローチからもわかるようについているのは血。そして恐らく、焼け焦げた跡は最近のもの」


マントの情報は湊がゲームで得た知識だ。と云ってもキャラクタープロフィールで出てくるイラストを拡大して見ないと見えないくらいに細かいものだったので普通ならば見逃しているところだ。なにせ湊は〈乱殲らんせん闘魂とうこん〉が大好きなオタク少女だ。普通ならば見逃してしまいそうなところまで、余すことなく見てきたのだ。まさかその知識が此処で役に立つとは思いもしなかったが。

すると今まで黙っていた青年がゆっくりと口を開いた。その肩は怒りかそれとも恐怖かで震えている。


「………決定的なものがないのに…落としただけだよそのブローチ。あの事件のあとから行方不明で」

「ウソ」


青年の言葉を否定すると彼は大きく目を見開いた。湊は青年を見て、優しく笑った。テーブルにブローチを置き、証拠品の山から取り出したのは焼け焦げた一枚の写真。その写真を見た途端、青年は大きく片足を引いた。その顔には恐怖が宿り、ひきつっていた。明らかに動揺している。


「……そ、れは…」

「証拠品を抱き締めるようにしていた動物がくれた証拠品の一つ。親戚全員が集まった集合写真。被害者夫婦との接点、だね」


写真には大人数の人が写っており、その中には青年とその家族もいる。その大人数の中に、今回の事件の被害者夫婦が写っていた。だが、本家を真ん中にしているのか、夫婦は他よりも端の方に写っており、焼き所が悪ければ一生接点など見つからなかっただろう。そして、写真の中心にいるのは、紛れもなく、青年とその家族。つまり、青年宅が本家だったのだ。


「遠い親戚、ってところかな?何故、遠い親戚の燃えた家から証拠品を魔物が持って行ったかなんて、少し考えれば分かることだよね。犯人が、知られたくなかったから」


ツキカゲが湊をサポートするように云う。青年が拳を握り締め、朝霧を振り返った。朝霧はその瞳をゆっくりと受け止めた。真実は晒された、その真実は、()()()


「団長…ねぇ彼らを黙らせて。僕は」


必死なその乞いに朝霧は悲しそうに笑った。それを見た途端、青年の中でなにかが弾けた。


「俺は、貴様から聞きたかった」

「………え」

「信じてた。だからなおさら、俺は、貴様から聞きたかった、真実を」


朝霧は腕組みを解いて青年に近づきながら語る。それはツキカゲにした話と同じだ。


「……貴様が現場に一番に来てるのには当初から疑問があったのだ。いつもなら出掛けぬ時間帯、外にいるなんてあり得ぬ時間帯。なのに、何故()()()に限って。その日から、貴様は変わった。いつも以上に気分が良くなり、明るくなった。何にかが起きた事なんぞ、すぐにわかった……信じていた。だから、それを正当化するように情報屋から情報を買った」


歩くに連れて彼の肩が微かに震えていいっていることに湊は気づいた。写真を置きながら、泣いているのではないかと不安そうに眉を下げる。


「…朝霧」

「点と点が、繋がった。よく考えれば、全てのタイミングが可笑しすぎた。魔物が襲来したのは貴様が()()()()()()()、抜けた時。戦闘に現れず、終了時にやって来た。そして、事件翌日から消えたブローチといないはずの目撃情報…問うことなど到底出来ぬ。貴様が犯人ではない、そう思うたびに貴様自身がまるで犯人だと証拠を突きつけてくる。ツキカゲ(こいつ)が犯人だなんて思っておらん。この事件は、証拠さえあれば、裏付けさえ終われば全て解決してしまうのだから。なぁ、神代かみよ、嘘だと言え」


止まった朝霧の悲しみに、悲痛に歪む瞳が青年、神代かみよを貫いた。信じたくなかった。右腕だから。だから、いつか話してくれることを願って嘘を信じた。証拠を集めた。けれど、どうしても全て貴様に繋がってしまう。なぁ、教えてくれ。


此処も難しかったです……何回書き直したんやろ?

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