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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
一周目 絆
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第十一ゲーム・事件発生現場


殺人放火事件。発生が判明したのは一週間前の夜。皐月の月、六日の夜。近隣住民から通報があり自警団が駆けつけた。駆けつけた頃には全てが炎上していた。急速な対応によりそれ以上の被害は防がれた。鎮火した翌日ー夜だったのでー、自警団によって調査が行われた。被害者は屋敷に住む夫婦。近所からの評判は良く、何故殺されたのかと近隣住民は嘆いていた。死因は焼死ではなく、放火される前に刃物で切り殺されていたことによる斬殺。夫の方は大量出血が原因ともみられる。凶器は鋭い刃物。突いたのではなく切ったことから近接系の、ナイフやそういう類いの刃物が疑われた。犯人は証拠隠滅のために放火したのだと思われる。そのまま調査を進めようとした時、()()にも魔物が襲撃してくる。魔物の襲来により自警団の調査は混乱し、証拠となりそうなものもほとんど魔物によって奪わてしまう。犯人が放火では消せなかった証拠を抹消しようと魔物をどのようにかして放った可能性が高い。情報源も糸口もなくなった自警団は目撃情報を洗うことにした。そこで浮上したのが燃え盛る家から逃げるように出てきたと云う怪しい人影。炎の明かりで顔だけがはっきりと見えたと云う。そこから出来上がった似顔絵に一致する人物は、本日になるまで現れなかった。検問を敷いていたため街に入るのは可能でも、外に出るのは困難だ。その間にも怨恨の可能性はないかと自警団は調べていたようだが成果はなかったようだ。


「桜ちゃん、此処ですわ。何かあれば良いのですが…」


レアンに連れられて湊は事件現場にやって来ていた。事件現場の屋敷は真っ黒に焼け焦げていて、中が見えている。現場には四方八方、黄色いテープが貼れて今はいない野次馬を牽制している。目の前で殺人放火事件が起こったと云うのに湊の心中は驚くほど落ち着いていた。アバター仕様なのか。もう考えるのを諦める事にした。


「これって中入っちゃ駄目だよね?」


一応、と云うように湊がレアンに聞くと彼女は「そうですねぇ」と困ったように笑った。彼女が湊の事を桜と呼んでいたのは湊がゲームでよく使っていたネーム、黄泉桜よみざくらの略称である。湊と云う本名を告げて良いものかと悩んだ末に湊はそちらの名前を告げたのだ。結果「長いので桜ちゃんですね!」となったわけである。此処に来る間、事件の全貌を教えてもらったがオーナーの云う通り、レアンはよく知っている。自警団からの差し金かと一瞬疑った。そして、犯人では?とも疑ったがその根拠はない。ただ単にこの街の情報網が可笑しいだけ、と云うこともある。湊はドラマでよく見る立ち入り禁止のテープを注意深く見る。そして左右、周囲を見渡した。見張りの自警団も住民もいない。いるのは湊とレアンだけ。


「(……不法侵入、行っちゃうか?)」


そこまで考えて、何故かわくわくしてしまった湊だがすぐさま諦めた。自警団が既に調べ終わっているだろうし、それ以上の証拠は魔物の手のうちだ。新しいものはないに等しいだろう。出来る事と云ったら…


「魔物ってどっちに行ったか分かる?」

「確か、西の方角だったかと…少々お待ち下さい」


湊の問いにレアンはそう答えると手に持っていた杖を差し出した。その杖はレアンの身長を少しに越えるほど長く、先には非左右対称の大きな水晶のようなものがついており、その周りを小さな月と太陽が回っている。この現場に来る時から気になっていたものだ。恐らくは彼女の武器なのだろうと思っていたのだが、どういうものかさっぱり検討がつかない。とレアンはその水晶へ片手を掲げ、静かな声で言った。


「淡き月と輝く太陽よ、現在よりも遠く近い、この場の真実をうつしまえ…」


と、スゥと静かな音を奏でて水晶の周りを月と太陽が舞う。そして、水晶の中になにか映像が写し出された。湊はまさかと思い、叫んでしまった。


「まさか水晶これで事件見たの!?じゃあ犯人分かるんじゃないの!?」

「まぁ桜ちゃんの言い分は最もですね。事件は水晶これで知りましたし、他は情報網によって補いました。しかし、犯人は見れませんわ」

「?なんで?レーk…じゃないレアンちゃん」

「あたくしが見れるようにお願いできますのは、その場で起きた現状のみ。人は含まれないのです。まぁ死人は含まれてしまうようですが。ですが見れないと言いましても、そこに誰かがいたと云う証拠は手に入りますわよ?完璧な全体像を確認することは無理ですがね。それに今回は暗闇に溶け込んでいましたし…」

「………うえぇ…あー…」


まさかの制限に項垂れるしかない。制限がなければ、真犯人が分かりツキカゲの無実を証明できたかもしれない。まぁもしわかったとしても自警団ではない一般人の助言を彼らが受け入れるかどうかわからないので、解決しないが。しかも例え制限がなかったとしても現場は暗闇。犯人の姿すら分からない可能性もある。レアンは項垂れる湊に申し訳なさを感じつつ、杖を短く持つと手元に水晶を手繰り寄せる。そして二人して顔を見合わせると映像が写し出された水晶を覗き込む。水晶は真っ黒に染まり、ボゥと仄かな赤い色が黒い中を赤く染め上げて行く。事件発生時だろう。燃える屋敷の裏口から誰かが飛び出して来た。犯人だ。レアンの云う通り、犯人の全体像は見えない。燃え盛る炎があったとしてもその全体像は依然として見えない。だが確かにそこに誰かがいたと云う証拠にはなっていた。それに全体像は見えずとも、全体的にぼやけているのでどうにか特徴だけでも捉えられれば、良い方だろう。犯人は一目散に屋敷から逃げ出すと一瞬、燃える屋敷を見上げた。そして、逃げ出した。その後、火事に気づいた近隣住民が自警団を呼んだらしく、人が集まり出した。


「?(あれ…?)」


湊はその時、なにか違和感を持った。なんと云うか、()()()()と云うか、()()()()()()ような。気のせいか?いや、暗闇でも分かる、大きく広がった()()は、一瞬でも捉えられた()()は、本当に気のせいなのだろうか?そう思いながら映像に意識を戻す。映像の中では鎮火活動が終わり、調査に入っていた。その時、魔物の大群が現場を踏み荒らしながら進行して来た。そして団員が手に入れたであろう証拠を根こそぎ奪っていく。これでは解決出来ない。目撃情報だけが頼りになってしまうのも頷ける。魔物が立ち去った先はレアンの云う通り西の方角のようだ。生き残った魔物、証拠を持ち逃げした魔物は誰かの指示を受けているかのように軽々とした足取りであった。映像を見終わった後、二人を顔を見合わせ、魔物が行ったであろう方角を振り返った。


「……行きますか?」

「行くに決まってるじゃん。ツキカゲの無実は()()してるんだし!」


大きく足を踏み出し、レアンより先に時間が惜しいと云うように走り出す湊。そんな湊を慌てて振り返り、追いかけるレアン。レアンは自分よりも大きな杖を懸命に持ちながら走る。走りながら湊はツキカゲの無実を確信した。そして、犯人の見当もついた。残るは証拠。魔物に奪われた証拠のみ。至るところがゲームと違うこの地を湊は力強く蹴った。


今日はここまで!次は月曜日に投稿します!

あと此処、少し難しかったんです!

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