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ただいま異世界巡回中!  作者: Riviy
一周目 絆
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第十ゲーム・自警団団長の思惑

証拠がないだけの事件もどきなんじゃから…ウチには事件なんて無理じゃった…




自警団に連行されたツキカゲは彼らの本部の館に連れて来られた。その後、普通に事情聴取されるのかと思ったら、ある部屋に通されたっきり、放置である。ツキカゲはそれに驚いてもいたが、なんとなく()()()()()()()事だったので、お客様対応で用意されたお茶を暢気に啜っていた。暫くすると、ツキカゲに攻撃して来た、また連行する発端となった男性ー湊は朝霧あさぎりと呼んでいた気がするーが入って来た。彼は無言のまま、ツキカゲの向かいの席に勢いよく腰かけるとお行儀悪く、片足をテーブルの上にドガッと乗っけた。彼が足を乗せるだろうと予想していたツキカゲは間一髪、湯呑みを取り、お茶を溢す事態を避けた。ツキカゲは少し不機嫌そうに顔を歪めた後、残ったお茶をイッキ飲みした。コトリ、と静かに湯呑みを置き、こちらが話し出すのを待っている様子である男性に目を向けた。


「事情聴取はしないの?」

「無実無根の輩に聞いても、なんにも獲得できぬことくらい、わかっておるわ」


自分を連行し、犯人であるとまで言った人物の発言かと一瞬、ツキカゲは耳を疑ったが、何故そうなったのか容易に想像できた。先程、お客様だと思って自警団の団員が出してくれたお茶を湯呑みに新たに注ぎ足し、もうひとつあったので男性の分も注ぐ。


「何故、と聞いておくよ。何故?」

「犯人は既にわかっておる。だが、その証拠がほとんど放火と魔物で消滅しておる…だから目撃情報しか今のところ、情報源も糸口もない。だが、貴様が事件に無関係なのはすぐにわかる。だたの形だ」


はい、と男性に熱々と注がれた湯呑みを渡すと彼は軽く会釈して湯呑みを手に取った。テーブルの上に乗っけていた足を下ろし、お茶を飲む。


「ただの形…自警団では僕が犯人って事になってるってこと?」

「嗚呼。貴様と亡くなった夫婦にはなんの接点もないのに、一生懸命になって探しておる。なんだが、哀れに思えてならん」

「教えてあげないの?」

「信じきっておるからな。俺が無実だと言ったところで裏付けも証拠も出てこなければ、意味はない」


二人同時にお茶を飲み、ホッと一息。ツキカゲはこんなにも簡単に自分に情報を流しても良いものかと一瞬、思考した。無実なのは事実だ。そして、彼の発言から犯人と目撃者は自警団の中におり、それも周りから信頼される立場の人物であると考えられる。自分の目の前にいる団長である男性もだが、自分にこうも簡単に情報を流しているところから犯人ではないだろう。もし彼が犯人ならば、ツキカゲの前に現れる必要などない。

男性は考え込むツキカゲを見て、一瞬少し悲しそうに顔を歪めた。


「巻き込んですまなかったな」

「ふふ、大丈夫だよ朝霧団長?」


悪戯っ子のような笑みでツキカゲが言えば、男性は一瞬キョトンとした。昨日この街に来たにしては湊同様よく知っているなとでも驚いているのだろう。それもそのはずだ。君は〈乱殲らんせん闘魂とうこん〉にいた人物なのだから。だから、マスターも勢い余って叫んでしまったのだろう。だが所詮、此処は()()()()()()()()()()()()()()()だ。君は、きっと彼とは違う。それは、()()そうだった。


「…まぁ、暫く貴様は此処にいることが決定している。犯人が見つかるまでの辛抱だ」


両肩を竦めて云う男性。ふとそこで彼が湊に向かって言った言葉を思い出した。そこで、此処に来るまでずっと冷静であった彼の行動の理由がわかった。わかってしまい、思わず小さく吹き出すと男性もわかったかと口角を綻ばせた。


「マスターに、第三者に調べさせても良いの?団長」

「俺が見抜いた目に偽りはない」


ツキカゲの言葉に男性は自信満々に自身の目を指差した。がその指先が震えていることにツキカゲは気づいていた。自分の目が間違っているかもしれないと云う壁に直面したのだから当たり前か。お茶を飲み終わった男性が足を組み直しながらツキカゲに訊く。


「大切な奴か」


誰の事なのか、聞かなくてもツキカゲはわかった。話の前後から云って湊のことを言っていると云うことは容易にわかる。ツキカゲはスッと瞳を伏せる。その姿はとても妖艶で、見る者を魅了する。


「うん。住む世界が異なろうとも、僕はずっと好きだった。だから、守るって決めたんだ」


真剣な、力強いその瞳に男性は、朝霧はクスリと笑った。それに答えるようにツキカゲは朝霧のように足を組んだ。

団長、朝霧は黒のショートでハーフアップ。黒から灰色になっているグラデーションで瞳はとき色。左耳にのみ髪と同じグラデーションになっていく三つの小さな球体が少し離れて連なっているイヤリングをしている。白のワイシャツを着、腹を軽く出ている事から短いのがわかる。前方から左腕と左半分を覆うように自警団の証である黒いマントが垂れている。濃藍色の長ズボンに黒の編み込みブーツ。


ツキカゲは朝霧に言った。


「僕に自警団の状況を教えても良いの?」

「嗚呼、貴様はもう部外者ではないのだからな。探偵の片割れ、とでも言えば良いか?」


ツキカゲの問いに朝霧はクスリと彼のように妖艶に笑った。それにツキカゲの中にあった疑問が一気に四散した。嗚呼、なんだ、そういうことか。


「じゃあ、この片割れに全て話してもらっても?」

「嗚呼、解決は決まっているからな」


朝霧の答えにツキカゲも笑った。嗚呼、そうだね。〈乱殲らんせん闘魂とうこん〉では、事件はすぐに解決しちゃうからね。将軍マスターの、恐ろしいほどの運と行動力で。そして朝霧はツキカゲに事件の全貌を話し出した。


もう一度言います。「もどき」です。ウチに事件は無理でしたぁ……

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