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第3話

「ここが私たちMDF、マジェスティック・ディフェンス・フォースの秘密基地よ。」

地下に作られた広大な秘密基地。

真樹れいはアラシとユリに導かれて今、そこにいる。


「マジェ、マジェ、マジック?」

真樹れいの問いにアラシ、答える。

「MDF、って呼んでくれ。その方がいいやすいだろう。」

目を丸くして広大な秘密基地を凝視する真樹れい。

「宇宙人じゃなかったんだ。てか宇宙人の秘密基地っぽい。」

アラシの腰が砕ける。

「まだそんなこと言ってるし。」


疑問に思った真樹れい、素朴に問いかける。

「秘密基地ってことは、秘密でしょ? 何で私ここに連れてこられたの?

キャトルミューテーション? それとも人体改造とか?」

すぐ横にいるユリが笑いながら答える。

「そんなことしないわよ。と言うか、あなた、河川敷でのこと憶えているの?」

真樹れいの顔を覗き込み観察するユリ。

「え? ああ。ショッピングモールであなたたち見た時に、ズバッと全部思い出したの。」

その言葉にアラシとユリ、顔を見合わせる。

「記憶抹消剤、効かなかったのか。」

「イビールがこの子を狙う理由、それもあるかもね。」

謎の単語を聞いて、より一層?マークの表情を浮かべる真樹れい。

「イビール?」

「一緒についてきて。」

ユリが疑問の表情を浮かべる真樹れいをやさしく案内する。


「ここがMDF秘密基地内にある、我ら選抜部隊マジェスティック・シックスMJ6の司令室だ。」

秘密基地通路を歩くアラシが、胸を張り自信を持って開いたドアの中へ

真樹れいを案内する。

洗練された機能性。

先進的で実務的な機器の数々。

効率的で斬新なデザイン。

それはまるで。

「なんかUFOの中みたい。やっぱりあなたたち宇宙人じゃ。」

真樹れいがぼそっと呟く。

「まだ言ってる。」

肩をすくめてユリは他のメンバーたちを紹介する。


「私たちは未知の侵略者と戦うために、特別に選抜された部隊なの。」

その言葉に顔をしかめる真樹れい。

「何で私がここにいるわけ?」

不満そうな真樹れい。

父親のプレゼントのために買ったマフラーを自身の首に巻き、疑問の表情を浮かべる。

「あなたは私たちが使った記憶抹消剤が効かなかったわ。普通だったら、

未知の侵略者との接触遭遇は機密事項だから記憶が消えるはずなのに。」

あー、だから河川敷で戦ったヤカラ3バカトリオは記憶なかったのか。

真樹れいはマフラーを指でいじりながら心で頷いた。


アラシが続ける。

「敵である未知の侵略者は君の、その強い力に興味があるようだ。

河川敷と言い、ショッピングモールと言い、二度狙われている。」

「だって私はうちの空手道場のエースだもん。」

真樹れいはマフラーを指でいじりながら小さく呟いた。


ユリが続ける。

「このままではあなたは狙われる。私たちのサポートも限界がある。

だから一旦ここに来てもらったの。」

ユリは親切そうに同性のお姉さんポジションで真樹れいをなだめようとしている。

いろいろと不安と不満が交差する真樹れい、素朴な疑問をぶつけてみる。

「て言うか、未知の侵略者ってなに? 宇宙からのインベーダー?

あの『手』とか『髪の毛』とかの幽霊お化けが戦う相手じゃないの?」

その問いにMJ6の中で、今までじっとだまって見ていた、

隊長風の人物が真樹れいに声をかける。

「我々の敵、君を狙った犯人、それは異次元人イビールだ。」


予想もしない言葉。

予想もしない事態。

真樹れいの頭は混乱していた。

だが事態は、真樹れいをもっと混乱させることとなった。


司令室内の他のMJ6のメンバーが隊長風の人物に告げる。

「隊長! イビール人からのメッセージです。」

隊長が驚いて思わず声を上げる。

「なに!」


MDF秘密基地内MJ6の作戦室の巨大モニターに何かが表示される。

電波状態が不安定なのか、受信データのコーデックが合わないのか、

しばらくノイズ画面が走る。

洞窟内で聞くような深く重い風の音なのか、

不気味な生き物か狂気人間の笑い声なのか、

不明瞭な音声が続く。


成り行き上、真樹れいはMJ6の一員ではないが、アラシやユリとともに

「イビール人のメッセージ」を視聴することとなる。

「同調どうだ? コーデック符号はシンクロマッチしたか?」

先ほどの隊長がMJ6のメンバーに問いただす。

「コーデック確認。符号化完了、画面と音声でます。」

その言葉を聞いたMJ6の一同と真樹れいは作戦室内の巨大モニターを注視する。

彼らの目に映ったモノ。

それは。


「え? イカ? タコの、宇宙人?」

真樹れいは思わず呟いてしまった。

その横でずっと彼女をフォローしていたユリが告げる。

「違うわ。私たちが戦う相手、異次元からの侵略者イビール人よ。」


異次元からの侵略者?

イビール人って何だ?

何か最近、ずっと無茶苦茶なことが起きている。

そんな『異次元からの侵略者イビール人』は無茶苦茶で自分勝手な要求を繰り出した。


虹色の光が波打っている『世界』。

そこの空中で、ふわふわと浮いている異次元の侵略者イビール人。

まるで海の中を浮いているようだ。

高気圧で高重力の世界なのかもしれない。

そんなこと、真樹れいには理解できなかった。

それに異次元からの侵略者イビール人は無茶苦茶で自分勝手な要求を繰り出した。


彼らのメッセージを要約すると、こういうことだ。

・我々はすぐれた種族だ。

・知能が進んだ結果、頭部が大きくなり身体が小さくなり身体が弱い。

・我々のための労働力が必要だ。

・これまで死体等を利用していたが、やはり生きている物の方が活力がある。

・故に、おまえらの世界の中から、体力がある物、強き者たちをよこせ。

・我々のために働け。


「はあ? 何言ってるの?」

真樹れいは部外者である。

真樹れいはMJ6の一員ではない。

だが彼女には発言権がある。

なぜなら二度にわたって被害を被ったからである。

「このイカかタコの宇宙人め! さばいてお好み焼きにすんぞ!」

真樹れいのその言葉に横に立つユリが突っ込む。

「異次元人、ね。」

真樹れいにとって「異次元人」も「幽霊」も「宇宙人」も一緒であった。


隊長が状況を確認する。

「敵のイビール・ゾーンの座標は確認しているのか?」

MJ6のスタッフが素早く答える。

「イビール・ゾーンの空間座標は把握しています。」

その言葉に隊長が威勢よく指示を出す。

「よし! 待っていても仕方ない。これより敵イビール・ゾーンに

撃って出るぞ! 出撃だ!」

異次元からの侵略・イビール人に対抗するため、MJ6は行動を開始した。


ズンズンと低重音が鈍く響く。

自分自身の身体に振動が足元から伝わってくる。

まるでライブ会場のようだ。

だが、ここは違う。

地下に作られた巨大な変電変圧施設のよう。

無骨な巨大トランスが整然と並ぶ。


真樹れいはユリに案内されてその場所に来る。

「うわっ! 広! 地下にこんな巨大なホールに、よくわからない機器がいっぱい。」

真樹れいは部外者ではあるが、詳細を知る権利はある。

ユリはそう信じ、真樹れいに説明を続ける。

「ここは転送室よ。向こう側に行くための。」


ユリは淡々と説明するが、真樹れいにはわからないことだらけだ。

「向こう側とは、あの異次元人イビールが存在する異世界。

向こうがこちらに挑戦するのであれば、黙ってはられないわ。」

確かに。

真樹れい自身が体験した変な異形の化け物たち。

あんなモノがしょっちゅう頻繁にこっち側に送り込まれたらたまったモノじゃない。

しかも理由は『自分たちのために働け』。

冗談じゃない。


真樹れいがそう思っていると、とても冗談じゃないモノが、

リフトに乗りスライドされ広大な転送室に運ばれてくる。

それはまるで、戦艦が人型の重装甲プロテクターと一体化したモノ。

あれには人が乗っているようだ。


「えー、何、あれ? なんかすごい。」

形容する単語を失っている真樹れい。

その横でユリは丁寧に説明する。

だがその説明を真樹れいが理解したかは確認できない。

「あれはPBS=パーソナル・バトル・システムと言う兵器。

プロテクトロンとも言うわ。」

真樹れいにとってここ数日、訳のわからない展開が続く。

あまりにも予想外のことが続くので、真樹れいは少し混乱していた。


「アラシ、調子はどうだ?」

広大な転送室の中で隊長の声が響く。

「問題ないっすよ。良好です。」

戦艦が人型の重装甲プロテクターと一体化したPBSに

搭乗しているのはアラシであった。

大きな魔法陣のような円形の中央にリフトから下されるアラシのPBS。

「ダミードローンなどで実際にイビールの異次元空間に転送したことがあるが、

実際に有人機での展開は初めてだ。すまんな。期待してるぞ。」

少し心配そうな表情をあげて緊張する隊長。

やはり責任を感じているのだろうか。


だが当の本人は違う。

重厚に防御された有視界ヘルメットで振り返り、笑みを浮かべるアラシ。

「いえ。光栄です。実際に有人で展開チャレンジとは。

歴史の教科書に載るかな?」

敵のイビール人がいるとされる異次元世界イビール・ゾーン。

重厚なPBSの装備と生命維持機能が付いているとはいえ、

未知の世界での作戦行動となる。

アラシは自身が緊張していることを決して表情に出さなかった。


「いざとなったら、この命綱、引っ張ってください。それで帰ってこれますから。」

アラシが着用するPBSには命綱が繋がれていた。

宇宙遊泳の時、深海の潜水服の時、この命綱が非常に重要になる。

アラシの言葉を聞き、頷く隊長。

「よし。わからないことはサポートAIが答えてくれる。気をつけて行ってきてくれ。」


あたりを見回して、隊長が口を開く。

「アラシのPBS1号機、異次元空間イビール・ゾーンへの転送シークエンス、開始!」

その言葉に、あたりに緊張が走った。


ジジジと電磁音が響く。

広大なホール状態の転送室にキュイーンという高音が混ざる。

波を打つようなブワンブワンと言う中音がそれに続いていく。

「ブリリアント・ウエーブ確保維持確率。」

「空間ゲート中和融合成功、継続中。」

「加分化粒子、相互スワップ問題なし。」

転送室のMDFのスタッフが謎の単語を次々に報告してくる。


隊長が中央の円形魔法陣の中央に立つPBS装甲装備のアラシの方を見る。

「転送開始!」

ちょうどアラシは隊長たちに背を向けていた。

しかし、アラシは隊長は自分を見ているだろうと確信に、右手を挙げて合図した。


光の波がPBSのアラシを包む。

と言うより、アラシ自身が七色の波の光を発行していく。

七色の波。

それは、異次元からの侵略者イビール人の宣戦布告映像でも見られた環境だ。

向こう側とうまくシンクロしているのだろう。


七色の光のウエーブが波打ったと思った瞬間、白と黒の光が渦を描いて爆発したようになり、

次の瞬間、そこから消えた。

「成功だ!」

隊長がそう思った瞬間、PBSのアラシに繋がれていた『命綱』がものすごい勢いとスピードを出して、

中央に浮かぶ黒と白の小さな光点に吸い込まれていく。


命綱。

まさにその名の通り。

宇宙遊泳や潜水服の時と全く同じである。

緊急時に、これを巻き取れば、助かる。

はず。

全員はそれを信じる他なかった。

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