試練という名のトラップっ!
さて、女神には試練あると脅されたが、僕は今、順調に天国への階段を上っている。
うん、警戒していたから拍子抜けなくらいだ。
だが、災害は忘れた頃にやってくるらしい。そう、もう数えるのも止めてしまったので何段目なのかは判らないが、階段の途中にあった踊り場の床の一部がどうやら発泡スチロールで作られていたらしく、僕はまんまとそこを踏み抜いてしまった。
コントかよっ!でも作り込みがリアルだったから気づかなかったぜっ!
しかし僕は咄嗟に階段の手すりを掴み何とか窮地を脱する。そう、何故か踊り場に『だけ』は手摺が着いていたのだ。
でもまぁ、階段という状況を考えるに確かに踏み抜き型の落とし穴は定番だよな。
なので僕は次からは階段の踏み面に体重を乗せる前に足でドンドンと踏み面面を踏み鳴らして安全を確認してから上るようにした。
どんどん、okっ!では次。どんどん、okっ!
警戒しだした途端、登攀スピードが激減したが気にしない。だって別にこれはタイムトライアルじゃないからね。そう、安全第一である。
だが、こうゆうトラップを考える者は、得てして慎重な挑戦者の裏をかくものらしい。
なので普通に上っていれば作動しなかったであろうトラップが、安全確認のどんどんという衝撃を切っ掛けに作動してしまったらしい。
がらんっ!どすんっ!
なんと次のトラップは突然頭上から金タライが落ちてきて僕の頭を直撃した。
コントかよっ!でも普通に痛かったぞっ!
まぁ、それでもこの程度の試練ならば大した事ない。きっと女神は大げさに言っただけなのかも知れないな。
だが、次の試練は微妙に難しそうだった。そう、なんとは階段の蹴上げ部分が3mくらいあり、ジャンブしても微妙に手が届きそうもない高さだったのだ。
因みに僕の身長は175cmだ。そして垂直跳びのギネス世界記録は134.6cmなので世界記録レベルのジャンブをすれば手が届く。
だが、普通の人は20代前半の男性でも精々60cmくらいらしい。スポーツ選手でも70~80cmくらいだそうだ。
まっ、これはあくまで垂直跳びの記録なので他の方法を使えば3mの壁も割りと楽に手が届いたりするけどね。で、その方法とは?
じゃじゃ~んっ!高反発スプリングシューズっ!
そう、このシューズにはバネ係数の高いスプリングが仕込まれており、ピョンピョンと飛び跳ねられるのであるっ!別名ジャンピングシューズとも言われている。
因みにどこからそんなモノを出したんだよっ!という苦情は受け付けない。
そもそも天国への階段自体がトンデモ設定なんだからさ。一々突っ込んでいたら疲れるぞ?
と言う事で、蹴上げ部分が3mくらいの壁となっていて普通は登れないはずの試練も僕はスプリングシューズのおかげで楽々クリアした。
因みに猫は2mくらいならば普通に駆け上がるらしい。むーっ、やるな、猫っ!
さて、次の試練は前ではなく僕がこれまで上ってきた階段の後ろの方からやって来た。そう、なんと下の方からまっ裸でナイスバディのお姉ちゃんが僕においでおいでをしてきたのであるっ!
この誘惑に打ち勝てる男がいるであろうか?否、いるわけがないっ!
しかし、いくら下がっても何故かお姉ちゃんとの距離が縮まらない。あーっ、これはあれだ。蜃気楼現象と同じだ。つまり幻なんだな。
なので残念だが僕はお姉ちゃんに抱きついてパフパフしてもらう事は諦めた。しょぼん。
そんな傷心気味の僕の前に現われた次の試練はエスカレーターだった。但し進行方向が下りになっていたよ・・。
つまり上っても上っても高度が稼げないのであるっ!しかも徐々にスピードが増してきていたっ!
うおーっ、これはまずい。こんなところで体力を無駄遣いしたら後々に影響が残ってしまうっ!
なので僕はエスカレーターの脇に設置してあった『緊急停止ボタン』を押して難を逃れた。うん、安全設備様さまである。
そんなこんなで色々な試練を知恵とご都合主義でクリアし続けた僕だが、さすがに少し疲れた。なので途中で長椅子が設置されていた踊り場にて暫し休憩する事にした。
そしてその長椅子には無料のデリバリー注文パネルが設置してあった。成る程、ここはマラソン大会などでよく見る補給所みたいな場所という設定なんだな。
と言う事で僕は遠慮なくパネルを操作してスポーツドリンクをデリバリーした。すると『漆黒の翼を喪失せし者』が配達に来てくれたよ。うん、どうやら羽根は飾りであり、飛ぶのには必要ないらしい。
因みにキャンペーン中だったらしくサービスとして『ねぎ塩焼きうどん』と『たこやき』のどちらかが貰えると言われたので僕は『たこやき』の方を貰った。うん、『たこやき』はアツアツで普通に美味しかったです。
さて、喉の渇きも癒え、お腹も膨れた事により気力が戻った僕はまた階段を上り始める。すると前方にゲートのようなものが見えてきた。
その脇にはなんと料金表が掲げられている。
有料道路の料金所かよっ!
因みにそこに書かれていた料金区分は次の通りだ。
善人:333ギール
悪人:999ギール
普通の人:3万3333ギール
犬・猫・ヲタクもん:タダ
なんで普通の人の方が悪人より33倍以上値段が高いんだろう?
そしてヲタクはタダなんかいっ!犬猫と一緒かよっ!ある意味、扱いが酷いなっ!
因みに僕は『ギール』なんて単位のお金は持っていない。でも安心していいよ、スマホ決済ならば時価の為替レートで変換してもらえるからっ!因みに1ギールは1円だったよっ!
だが、この安さもまたトラップだった。うん、なんと333m毎に料金所が設置されていたよっ!数えてみたら全部で33ケ所もあったよっ!合計で1万989ギールも支払わされたよっ!
全く、地獄の沙汰も金次第というのは聞いた事があるけど、天国に行くにもお金が必要だとは思わなかった。
むーっ、もしかして天国でも暮らすにはお金が必要なのだろうか?だとしたら天国も元の世界と大して変わらないかも知れないな。
そう、結局持っているやつが勝ち組で、貧乏人はいつまで経っても貧乏から抜け出せない。そして犯罪に手を染めるんだ。
まっ、考えても仕方ないか。それでも地獄に落ちるよりは万倍マシだろうからね。
その後も僕は天国への階段を上り続けた。もう雲すら遥か下だ。そのせいか、段々息苦しくなってきた。
うん、多分空気が薄くなってきているんだね。
因みに上空に行くほど空気が薄くなるのは純然たる物理だ。まっ、説明すると話が長くなるのでしないけど、世界最高峰の高さを誇るエベレスト山の高さは8849mで、その高度での気圧は地上の1/3くらいらしい。
つまり通常の3倍呼吸しないと地上と同等の量の酸素が取り込めないのだ。
後、蛇足だけどエベレストは英語圏での名称で、現地のチベット語では大地の母神を意味するチョモランマ、またはネパール語では世界の頂上を意味するサガルマータと呼ばれているそうです。
そしてそんな事をぼんやりと思い出しながらがんばって階段を上り続けている僕の前に緑色の高度標識が現われ、現在の高度は2万mと告げてきた。
成る程、そりゃ息苦しくもなるよな。だって高度2万mの大気圧って地上の1/15くらいらしいから。
これが3万mになると1%くらいになるらしい。1%・・、それってもう殆ど空気がないのと同じじゃんっ!
天国ってもしかして空気がないのか?神様や天使たちって呼吸しないの?
いや、さすがにそれはないか。なので高度2万mの高度標識のちょっと先からは天国への階段はシールドで覆われていて、シールドの内部は地上の大気圧と同等まで加圧されていました。
但し、入り口は普通の扉ではなく宇宙船などに設置されているエアロックというものだった。
しかもそこにはライオンの体に人間の顔が付いた門番が立っていて、門を通りたければ問いに答えよと僕に言ってきたよ。
ライオンの体に人間の顔が付いた門番・・。僕は心の中で「スフィンクスかよっ!」と突っ込んだね。
なので門番が僕に出した問題も『朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足で歩くものはな~んだ?』というものだった。
うん、定番過ぎる・・。因みに答えは『人間』です。これは人の人生が赤ちゃん時代は四足でハイハイし、大人になると2本の脚で歩き、老いぼれると杖をつき3本脚になるという屁理屈だ。
因みに逸話ではオイディプスという者がこの質問に正解し、その結果スフィンクスは身を投げたと言われている。
そして当然僕も正解を門番に告げた。するとそこまで忠実に再現しなくてもいいように思うのだけど、門番は本当に階段から飛び降りたよ。
まぁ、門番に関しては気にしないでおこう。多分飛び降りたのはあくまで『フリ』だろうから。だって絶対あいつは空を飛べるはずだ。でないと門番の役がいなくなっちゃうからね。
さて、こうして僕は無事にシールド内に入れたのだけど、シールド内は気圧や気温も調整されているらしく快適でした。
しかもここからは階段がエスカレーターになっていたよっ!はい、今度はちゃんと上り方向に動いてました。と言うか、ここまで楽させて貰えるって事は、もしかして試練も終了か?
だが、どうやらこのエスカレーターは天国に出勤する天使たちも使うらしく、右側を開けておかないと後ろから咳払いをされるらしい。
成る程、このエスカレーターは関東形式なんだな、と納得してしまう僕。因みに関西では左側を空けておくのが暗黙のルールらしい。
で、出勤する天使たちに混じって天国へと向かった僕だが、天使たちはエスカレーターの終点で階段とは別の方へ向かっていった。
どうやらそっちにはまた別の交通機関、所謂『通勤電車』というものがあり、天使たちはそれに乗って天国へ出勤するようである。
いや、天使よ。お前らって空を飛べるんじゃなかったのか?何故律儀に電車で通勤しようとするんだ?
と言うか、天使たちの住処って天国の中じゃないんだ・・。えっ、天国内はマンション価格が高騰して通勤に2時間以上かかる郊外でないと家が買えない?
あらら、それはご愁傷様だな。成る程、だから地上げ屋や転売ヤーは死後地獄に落とされるのか。
うん、僕は結婚詐欺でよかったよ。試練は課せられたけどまだ天国へ行ける可能性は残っているもんな。
で、楽チン昇降設備であるエスカレーターの次に僕を待っていたのがトロッコだった。
うん、僕って天国への『階段』を上っていたはずなのに、なんか趣旨がずれてきているような気がする。
僕はトロッコというアイテムにアトラクション的な不穏な気配を感じ取ったが、これに乗らねば天国に行けないと言われれば乗るしかない。
そして僕を乗せたトロッコは、最初の内は車体の下にある歯車をレールの間に設置されていた『ラックレール』に噛み合せてガタゴトと上昇していたのだが、頂点に達し水平になると一時停止した。だが次の瞬間には真っ逆さまに降下し始めた。
ジェットコースターかよっ!
思わず突っ込む僕。しかしそんな僕に対してお構い無しにぐんぐん速度を増すトロッコ。おかげでカーブでは体が左右に持ってゆかれ、垂直ループ(360度回転)や水平ループ(らせん回転)ではこれでもかっ!という程目が回った。
更には振り子ギロチンやジャンプポイントまで出てくる始末。でもさすがにキノコは出てこなかった。
おかしい・・、僕は天国へ行こうとしていたはずなんだが、何故山梨県の『無事級ハイランド』にいるんだろう?
いや、ここは『無事級ハイランド』ではないのかも知れない。だってチラリとだけどネズミのマスコットキャラクターが見えた気がするからねっ!
とまれ、僕はヘロヘロになりながらもどうにか終点まで辿り着いた。
これって天国的にはアトラクションサービスのつもりなのかなぁ。でも若い子ならともかく、ご老人たちには刺激が強過ぎるんじゃないのか?下手すると心臓発作とか起こすんじゃない?
いや、それはないか。だって天国への階段を上っている時点で死んでいるはずだからな。
う~んっ、シュールだ。あまり笑えない冗談だね。




