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僕は死んじまっただぁ~。だから天国さ行くだぁ~!

僕は今、天国への階段を登っている。


こう言うと僕は死んでしまったのだなと思うかも知れないが、残念ながらまだ生きている。

いや、生きていると言うのも微妙なところか?なんせリアルな僕の体は、現在だらだらと血を流して地に伏せっているはずだから。


いや、別に僕は暴走トラックに轢かれた訳でもなく、発砲事件に巻き込まれた訳でもない。勿論中東で空爆にあい、ミサイルの破片を浴びた訳でもなかった。

では何故アスファルト道路の上に血を流して倒れているのか?まぁ、答えは簡単で、突然ナイフで刺されたからだ。


でも別に無差別殺人の被害にあった訳ではない。何故ならば加害者は僕を狙って刺して来たからだ。

そしてその加害者とは先ほど僕がこっぴとく振った女だった。つまり僕は逆恨みされたのである。


でもまぁ、ニュースではきっとこの事件は僕が100%悪いという論調で語られるはずである。何故ならば僕はその女から数百万円の金を騙し取っていたからだ。

そう、僕は所謂『結婚詐欺』というやつを生業としていたのである。


しかし僕は詐欺師としてはマメな方だったと思う。なんせ交際している間は絶対相手を否定しなかったし、デート費用だって殆ど僕が出していた。

とは言っても僕は貧乏美大学生という設定で相手に取り入っていたので、デートと言っても大抵はお店でハンバーガーをテイクアウトしてのお部屋デートだったからそんなにお金は掛けていない。


で、なんでお部屋デートなのかと言うと、相手の裸婦絵を描くためだ。そう、僕は詐欺師だが絵描きを目指していたのは本当なのである。但し美大には落ちたのだが・・。

まぁ、詐欺に真実味を持たせるには数%の真実を盛り込んでおくのが定番だからね。


なので僕は詐欺に関して自分の得意分野を設定に盛り込み細かいデティールにも拘ったのだ。だからこれまでも僕が騙した相手は僕の事を疑いもせずに、僕がフランスに絵の勉強に行きたいと言うとお金を全額出してくれたのである。

そしてお金を貰ったら当然そのままドロンしていっちょ上がりだ。なので過去に僕が騙した相手の中には、未だに僕はフランスで修行していると思っている子もいるかも知れない。


だが、そんな慎重な僕ではあったが、今回はしくじった。そう、本当ならばフランスにいるはずの僕が、銀座で別の女性とデートしている時にその女と鉢合わせしてしまったのだ。

なので慌てた僕は思わずその女に向かってこう言っちゃったんだよね。


「悪役令嬢よっ!この場にてお前との婚約は破棄するっ!」

いや、この時の僕はちょっとラノベの読み過ぎだったのかも知れない。だからか相手からこっぴどい『ざまぁ』をされてしまった。


ぐさり・・。


僕は薄れゆく意識の中で、ああっ、今度生まれ変わったら女神様からチートを貰って異世界に行ってウハウハのハーレム展開を経験したいなぁ、などとしょうもない事を思っていたのは内緒だ。


だが、そんな僕の願いが神様に届いたのかも知れない。

なので僕は気がつくと真っ白い部屋にいた。女に刺された箇所は傷ひとつ付いていない。しかもその部屋には僕の知らない女性がいて僕に状況を説明して来たよ。


「あーっ、時間が無いので端的に説明する。今のお前は意識体が具現化したものだ。なのでお前の本体は今もアスファルトの上で血を流して死に掛けている。あんだすたーん?」

はいはい、一発で理解したよ。この部屋の雰囲気と女性の存在。そして僕が置かれている状況からここは異世界へ転生する前に女神に謁見する『転生・転移事前審査会場』だな。

うん、僕はラノベのヘビーユーザーだから簡単に判ったよ。となるとここからの展開は転生特典のチートを貰って異世界へGo!だ。


だが、残念ながらそんな僕の予想は外れた。そう、女神からの説明だとこれから僕が行くところは異世界ではなくて天国らしいのだ。

おっと、びっくりっ!僕は詐欺師なのに天国にいけるらしい。成る程、そう言えばちょっと前、部屋の掃除をした時に蜘蛛の巣を払ったんだけど、蜘蛛自体は見逃してやったんだっけ。


そうか、やっぱりそうゆう小さい事が人生の行く末に影響してくるんだなぁ。まっ、ゴキブリは見つけ次第スリッパで叩いていたけどねっ!

とは言え、天国へはタダでは行けないらしい。なんかギリシャ神話の『ヘラクレス12の試練』っぽい事を試されるらしいんだ。


更に天国へ行く方法はなんと自分の足で階段を歩いて上れと言われたよっ!

マジかよっ!天国への階段って一体何段あるんだ?因みに通常の階段は蹴上げ部分の高さは大体20cm前後だから1m上るには5段、1kmならば5千段のぼらなきゃならないぞ?


そして聖書の黙示録によると、天国って長さ・幅・高さがいずれも1万2千スタディア(約2千400km)の立方体だって書いてあるらしいぞ?

それが本当ならば何段上らなきゃならな・・、あっ、駄目だ、計算できない・・。


因みに国際宇宙ステーションが地球を周回している高度は凡そ400kmで、気象衛星『ひまわり』がいる静止軌道までの高さは凡そ3万6千kmだ。更に月までだとその距離は凡そ37万kmなはず。

ははは、静止軌道や月の方が天国より遠いのか。


更に天国への階段には途中途中にトラップが仕掛けられており、それを上手に回避しないと地獄に落ちる事になっていそうだ。そう、このトラップが僕に課せられた試練なんだって。

ははは、どこぞのアトラクション施設にありそうな設定だな。


まっ、試練は乗り越えなきゃならないらしいが、それでもクリアすれば天国に行けるとあらば挑戦するしかないだろう。

なので僕は白い部屋を出てその直ぐ隣にあった天国への階段の前に立った。


因みに部屋の外は大海原だったよ。でも今の僕は意識が具現化したものなので海の上に立てるらしい。

そして僕の目の前には天に向かってどこまでも続く白い階段がそびえている。


うん、東京タワーも真っ青だね。そう言えば大阪の超高層ビルでは非常階段を駆け上がる大会が催されていたってニュースを観たことがあるな。

でも今僕の前にある階段のスケールはその比ではないね。う~ん、気が遠くなりそう・・。


そして天国への階段はまっすぐな直階段ではなく、途中途中でL字に折れ曲がる『かね折れ階段』でした。

いや、女神に聞いた話だと高度によって階段は螺旋階段や折り返し階段など、色々なタイプに変化するそうだがスタート部分はかね折れ階段でした。


で、階段の前で上の方を見上げる僕に女神が激励の声を掛けてきた。


「それでは地獄で待っておるから行って来い。じゃが見事試練をクリアしたら大したものだ。うむっ、天国はいいとこじゃぞ?なんせ酒は美味いし、姉ちゃんたちはきれいだからなっ!うむっ、まさに天国じゃっ!あははははっ!」

成る程、この女神は見た目は若いがやっぱり人間じゃないんだな。でないとそんな大昔に流行った酒飲みの流行歌を引き合いに出せるわけないものなぁ。


まっ、いいや。どの道僕はもう助からないだろうから選択肢はないし。なので僕は青空をバックに上へ上へと続いている天国への階段を上り始めたのだった。


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