襲来
「拓斗、流石に数が多すぎ、何とかしろ」
「逆に聞くけど、どうすればいいの、倒しまくってよ」
「それもこれも、そこの忠犬のせいだろ」
虎丸は文句を言いながらも、餓鬼を倒す手を止めない
「すごいあの四人、全然取りこぼしがない」
「さすがは十二天将ですね」
「ほんとに置物だね、私達」
「玄次さんもすごい集中力」
すると急に、餓鬼達の進行が止まり、森の中に帰っていく
「何だ急に餓鬼達が、なんで」
「なにか様子が変だ、なにかに怯えてるような、鴉このまわり見渡せるでしょ頼む」
「了解」
「現れろ…式神霊鳥」
鴉が術を唱えると黒い羽の鳥が現れる
「はっちゃん頼むぜ、空からこの辺を見渡してくれ」
「でたよ鳩のはっちゃん」
その鳥は空に飛び立つと円を描いて飛びまわる
「鳩語でも、わかんのか鴉」
「そんなわけないだろ、虎丸、俺ははっちゃんと視覚を共有できるんだよ」
「どうでもいいから、まわりに敵いるの、鴉」
「なんかすごいのが進行中、あと1km」
「鴉、すぐに式神引っ込めて、やばそうなのが来る」
「いやもう来ておるよ」
急に現れたその男に虎丸と鴉は反応できず、二人は殴られ地面に転がる
「さがれ、弱者達よ、俺は自身より弱いものと戦う趣味はない、酒呑童子の気配だ何処にいる、800年ぶりだ、待たせよってどこにいる」
それ見て叶芽は、前に出ようとするが玄次に止められる
「叶芽くん、今出ればあいつらの足手まといだ、それと君は酒呑童子じゃないんだろ、アイツらを信じろ、見せてくれよ次世代の十二天将達よ、早く俺を引退させてくれ」
叶芽は奥歯を噛み締め下を向く
「先生、頼みます」
虎丸は殴られた腹を押えながら、重々しく体を起こす
「藪から棒に、戦うつもり、ないだと、人達殴り倒して置いて、ざけてんじゃねぇ」
「よせ、虎丸、こいつ他の雑魚と違う」
その男は拓斗を見るとニヤリと笑い、指をさす
「主、俺と戦え、主から漂うのは紛れもない強者の匂いだ」
「戦いたいなら、名ぐらい名乗るのが礼儀じゃないの」
「それもそうか、俺の名は鵺、常に強者を求める者だ」
その言葉を聞いて、みなが驚愕する、鵺は酒呑童子と並ぶ最強の妖の一体
「まさか獣王の鵺とはね」
「獣王か、人間のつけた矮小な名か、くだらん格付けで、俺を測ろうなどと、片腹痛いわ」
「それはすみませんね」
拓斗は力一杯踏み込み、鵺との距離を詰め、手に霊気を込め、剣のように纏わせ鵺の懐に潜り込み、切りつけるが傷一つつかない
「嘘だろ」
「やわい、俺の嗅覚に間違いはない、なぜ本気を出さん」
「本気か、勝手言うなよ、僕の式神はちょっと気難しいんでね」
「なら主の式神を、その気にさせれば良いわけだ」
鵺は拳を作り、拓斗の腹を突き上げる
「なんてパワーだ」
すると犬士が刀を抜き鵺に斬りかかろうとする
「貴様、俺たちをハリボテ扱いか」
鵺は犬士の刀を指ではさみ止める、刀を取り返そうとするが、ビクともしない
「言ったはずだ、弱者に用はない」
鵺は犬士の刀を握り砕き折る、砕かれた刀がキラキラと宙を舞い、その破片を鵺は拳で弾き、犬士の顔を刺す
「貴様」
犬士は膝を着き顔を押えポタポタと血が流れる
「次はこれではすまんぞ、小僧」
「おい獣やろう、俺の仲間に何しやがる」
「次は貴様か」
「刻め…七星剣」
虎丸は鵺の懐に潜り込み七星剣を打ち込み、鵺はよろつく
「ほう、褒めてやろう、小僧」
「俺のダチに手を出すな」
「ダチってのはこやつのことか」
鵺は膝をついていた犬士を蹴り倒し、腹を踏みつける、あまりの衝撃に犬士は悶える
「き…貴様」
「ハチ公からその汚い足をどけやがれ、それともその足、刻まれたいか」
「やってみろ」
虎丸が構えると、その虎丸の肩を拓斗が掴む
「虎丸、ごめん今回は譲ってもらうよ、僕がやろう」
「元よりそのつもりだ」
鵺は踏みつけていた、犬士を虎丸達に向けて蹴り飛ばす
「邪魔者はいらん、さっさと治療でもしてやれ」
「ハチ公、今回治療出来るやついないから、気合いで治せ」
「使えない奴らだ」
「その軽口叩けるなら、死にはしないな」
拓斗と鵺は睨み合いを続ける、そして拓斗は一枚の札を前に出す
「力を貸して、貴人、君の力が必要だ好きなだけ吸いなよ、僕の命を」
「顕現せよ、そして我敵を消し倒せ…貴人」
すると竜巻が起こりその竜巻の中心に二本の剣が突き刺さる
「結局一部しか、姿見せてくれないんだ、まだ僕を認めてないのかよ」
「それが主の本気か、つまらんやつだ、俺の嗅覚が間違っていたようだ」
「なら、引いてくれるの」
「いや、俺は一度抜いた剣は鞘にはおさめない主義でな、一思いに殺してやろう」
竜巻が落ち着き二本の剣を拓斗が握り、鵺に向かって歩き出す
「今の僕、強いよ」
「いや、まだ主は弱者だよ、まだな」
「なら試してみなよ、君の体で」
左手の剣を握りそれを振ると、凄まじい斬撃が鵺を襲い鵺はその斬撃を拳で受ける、その斬撃が二つに折れ一つが気を失っていた鴉に被弾する
「先程よりかは、威力があるが、てんで話にならん」
「おい、拓斗、鴉当たってんぞ、殺す気か」
「その逆さ、助ける為に、斬撃あてたんだからさ」
すると気を失っていたはずの鴉が起き上がり、その体には傷一つ付いていない
「俺は一体…何この状況」
「鴉、起きたなら、下がって邪魔だから」
「俺が斬撃を真っ向から受けると確信していたな、それを見越して斬撃の軌道を」
鴉はすぐに状況を理解し、虎丸達の元に向かう
「鴉、体は大丈夫なのか」
「なんともない、てか前より好調」
「これが、最強の式神、貴人の力なのか」
その光景を見た鵺の口角が吊り上がる
「おもしろい、やはり俺の嗅覚に間違いはなかったようだ」
鵺は踏み込み、拓斗の懐に潜り込み拳を突き上げるが、拓斗はもう一方の剣でそれを防ぐ、鵺は気にせず何度も殴るが、拓斗はそれを舞を舞うかのように華麗にいなす
「防ぐだけが、貴様の戦法か」
「君から潰れに来てくれてるんだ、動く必要はないでしょ」
すると鵺の体が地面に落ちる
「なんだ、体が急に」
「教えてあげる、今の君の体の周りの酸素濃度をちょっといじった、高濃度の酸素は中毒を起こす、妖も人間も呼吸をするんだ、人体構造には、そこまで違いはないでしょ」
「これが主の力か、こんなものが笑わせる、姑息で狡猾、俺の一番嫌いな戦い方だ」
鵺は無理やり体を起こし、拓斗の腹目掛けて拳を突き上げる、咄嗟のことで上手く受けれず、重々しい一撃が拓斗を突き抜ける
「大気をいじる程度が、主の本気ではなかろう、もっと本気で来ぬか、そしてもっと俺を楽しませろ」
「やだよ君楽しませる為に戦ってるんじゃないんだからさ、それにお前だって全然本気出してないだろ」
「俺は弱者相手に本気など出すわけないだろ」
拓斗は剣を高く上げ振り下ろす、すると地面が揺れ始め鵺の周りが重くなり、地面に押しつぶされる
「いま、君の周りだけ重力が約百倍になってるから、すごいね、君普通なら一回つぶられれば原型とどめないのに」
「この程度の重みで潰れる鍛え方はしておらんわ」
「あっそなら」
次に拓斗が剣を振ると鵺は後ろに吹き飛び、虚空の彼方に消えていく
「今君の重力の向きを変えた、だから君は今下に落ちてるんだよ、この勝負は預けるよ、僕達にはまだ君と戦うその資格はないみたいだからさ、それじゃまた」
「この勝負、主らに預けるぞ陰陽師、強くなって俺を楽しませろ弱者共」
大声で叫びながら、鵺の姿は遠くに消え、気配が無くなる、拓斗が後ろをむくと皆悔しそうな顔をしている
「クソ、十二天将が聞いて呆れる、たった一体の妖に手も足も出ないなんて」
「ここまでも実力が違うのか、鵺とは」
「先生、大丈夫なの」
「叶芽、無事か」
「俺たちは無傷、玄次さんが、三人に防御術かけてくれてたから、それと、ごめん、自分達から戦力になるって言って着いてきたのに、足を引っ張って」
虎丸は
悔しそうに、下を向く叶芽の頭を撫でる
「生きてりゃそれでいい、他の二人も無事だな」
「はい、無傷です」
他の三人は玄次の様子を見に行く、あの激戦の中玄次は学生を守りながらも、封印を行っていた
「玄次おじちゃん、どう封印順調」
「今やってるが、酒呑童子の霊気が俺の封印を押し返して、なかなか難儀だ」
「無理なら無理と言え、年寄りの冷や水、体に毒だぞ、じいさん」
「俺はまだまだ若い、犬っころは黙ってろい」
「仕方ない、ちょうど貴人、顕現してるから、その力貸すよ」
右手の剣を振ると玄次の作っている封印に五芒星ができ、酒呑童子の霊気を押さえ込みその隙に玄次が封印を施し抑え込む
「これでよし、封印は完了、玄次おじちゃんは安定するまで監視をお願い、それとおじいちゃん達に報告もよろしく」
「お前達はどうするんだ」
「一旦学園に帰るよ、それと本格的に妖たちが動き出した、学生たちの強化を行う」




