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一鬼当千  作者: カズト


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10/12

受け継がれたもの

叶芽が首塚に向かう少し前、酒呑童子との対戦で敗れた鬼童丸は傷ついた体を癒しながら、目的の為とある場所に向かっていた


「鬼童丸様少し休まれた方が、未だ傷は」

「ありがと鰐、俺は大丈夫もう少し進んだら休もう」


鬼童丸は少し進み木陰に腰を下ろす


「鏡、鰐、すまない俺の身勝手に付き合わせてしまって、そのせいで八咫烏も失ってしまった」

「鬼童丸様、休む度にそれを言っていてはすり減ってしまいます、私達は勝手にあなたに付いてきたんです、あやまるのはこれが最後です」

「わかったよ、ありがとう鏡」


少し体を休ませ、腰をあげようとすると近くに人の集団が見える


「あれは、陰陽師か」

「我々を追ってきたと言う訳ではなさそうです」

「少し様子を見よう」


鬼童丸は耳を澄ませると陰陽師たちの声が聞こえてくる


「この辺に、蠱毒って妖がいるんだよな」

「妖って言うより呪いに近いらしい、あまりに強い呪いは形を得て意志を持つらしい、だから気合い入れないとな」

「気合い入れるって俺達は後方支援が仕事だろ戦う訳じゃないんだそこまで気張ることは無いだろ」

「お前そんな事言うなよな、俺達は戦えないけど、戦うみんなのサポートをする、戦場は違えどここが俺らの戦場なんだからさ」

「真面目かお前は早死にするぞ」


離れた鬼童丸は蠱毒と言う名前に少し反応する


「蠱毒、確か百の毒を持つ生物を使う外来の呪いだったか、それほど強力なのか鏡」

「はい、百の虫たちを倒し食らった最後の一匹は強力な毒を持ちます、それを使った呪いですので、人の手に負える呪いにはございませんね」

「そうか、わかった」


鬼童丸は陰陽師達を静かに見守る、陰陽師達は拠点作りを終えると、後から少し肥えた男がやってくる


「初めまして、今回の任務の指揮をとる、野島です。作戦の概要は後方支援班がまずここら一帯に弱体化の結界を張りますそして戦闘班が蠱毒を叩きますそれでは各々準備に取り掛かってください」


少しして森に小さな結界が張られ、鬼童丸達は少し力の衰えを感じる


「少し力が入りづらいな」


すると森の方からとてつもない瘴気が溢れてくる、その瘴気にあてられ森の木々が枯れていき、陰陽師達は警戒態勢に入る


「やばいだろこれ」

「落ち着いてください、蠱毒の力は衰えているはず」


すると野島は身体中から血が吹き上げ、その場に倒れる、それを見て陰陽師達はパニックになり始める、陰陽師達のところに体がボロボロな生物が歩いてくる


「あれが蠱毒なのか」

「どうするんだよ、俺達は戦えないんだぞ、逃げようぜ」

「逃がすわけ無いだろう」


蠱毒は逃げ出そうとする陰陽師の一人の首をつかみ持ち上げると、その皮膚部分が腐り出す


「助けてくれ」

「いいぞ人間のこの震えた表情、高ぶらせてくれる、もっと恐怖に歪め」


蠱毒は持ち上げていた人間の首をへし折り仲間の陰陽師に投げつける


「ほらほらどうした、喜べ人間願い通り助けてやったのだ、貴様らの世界では言うのだろ死とは救いだと、ならもっと喜んで見せろ」


蠱毒のその残虐さに鬼童丸は怒り出し刀に手をかけるがそれを影鰐が静止する


「おやめ下さい、あなたはまだ傷が完全には癒えてはいません、むちゃです」

「だがこのまま静観する訳には」

「お気持ちはお察しいたします、ですが今は人の事より自分のことをお考え下さい」


蠱毒は残虐な殺しを辞めず気が付けば陰陽師は先程の二人になっていた


「つまらん人間はすぐに死んでつまらん、そうだお前ら二人そこで二人で殺しあえ、生き残った方は助けてやる」

「何をふざけたことを」

「いいや、貴様らの醜い姿を見せろ、命令だ貴様らに拒否権は無い、このまま虐殺だけでは足らんのだ俺をもっと高ぶらせろ」


陰陽師達は震え出すが、一人の陰陽師がもう一人を後ろに押し、蠱毒に向かって走り出す


「逃げろ、俺が囮に」

「殺しあえと言ってるだろ」


蠱毒は向かってくる陰陽師の首を吹き飛ばす


「おっと力を入れすぎた、仕方ないお前も殺そう、せめて最高の悲鳴をあげてくれよ」


蠱毒は何度も陰陽師を殴り続けボロボロになる


「つまらん、悲鳴をあげろ絶望で声も出せんのか」


陰陽師は地面に叩きつけられ、涙を流しながら手を震わせる


「恐怖で震えているのか、もっと震えろもっと恐怖しろ、自身の無力さに打ちのめされながら後悔の中死んでゆけ」


鬼童丸は震えながら下唇を噛み口の中に鉄の味が広がる


「鏡、俺はもう我慢できない」

「もう少し我慢してください、あの陰陽師は何かするつもりのようです」


陰陽師はボロボロになりながらも自身の流した血を震える手で星を描くが、蠱毒は陰陽師を上から踏みつけ陰陽師は息をするのも苦痛になるが描く手を止めない


「何をしている、往生際の悪い惨たらしく悲鳴をあげて死ねゴミが」

「ゴミでもお前に泥ぐらい付けてやる、ゴミの底力その身で味わえ」


地面に描いた星は光り輝き、蠱毒の周りをつつみ出す


「五行の光よその光をもって彼の者の力を防ぎたまえ…五行封印の陣」


すると急に蠱毒は急な脱力感を感じ霊気を感じなくなる


「貴様何をした」

「俺の全霊気で作った最上位の結界だ、妖はこの中では力が落ちる、少しぐらいわかったか弱い人間の気持ちが」

「所詮は雑魚の考える小賢しい事だ、術などなくともお前の首を捻るなど造作もない、それに力が弱まっていても俺を倒す物がいなければ意味がない、惨たらしい悲鳴をあげて死ね」


陰陽師は諦めたかのように目を瞑る


(くそ、情けない命を掛けてもこの程度かよ、最後の最後までけど悔いは無い)


鬼童丸は大声で叫び、影鰐に命令をする


「鰐、今すぐ俺をあそこに飛ばせ」

「いたし方ありません、ご武運を」


蠱毒の迫り来る拳が陰陽師を貫こうとするその瞬間、陰陽師の影の中から鬼童丸が現れその拳を刀で受ける


「鬼の息子鬼童丸この勝負勝手ながら助太刀いたす」

「何者だ」


蠱毒は怒りながら鬼童丸を睨みつける

「その風貌、鬼、なぜ人間を助け俺の邪魔をする、まぁいい、絶望の声が増えただけだ」

「絶望などしない最近したばかりだからな、それに貴様のような者に塗り潰せるほど俺の絶望は薄くは無い」


飛び出した鬼童丸を見て呆れたように雲外鏡と影鰐はため息をつくがなぜだか誇らしげな表情をしている


「全く、自身のことより誰かの為に命をかけるそんな優しい所はどなたに似たのでしょうな、八咫殿」


そう言う鏡の目には少しだけ涙が浮かぶ


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