理由
「何ムスッとしてんだよ、叶芽もちっと嬉しそうにしたらどうだ、勝ったんだからよ」
「そんな事はどうだっていいですよ、たかだか模擬戦でしょ、先生は知ってますか、鴉さんと狐火のこと」
「鴉に弟子が居ることは知ってるが、険悪な理由までは知らん」
虎丸の言葉を聞いて消毒だけすませて、立ち上がり廊下を走り出す
「なら本人に聞いてくる」
「おいまだ治療が」
「消毒したから大丈夫」
虎丸の静止を聞かず、廊下の奥に消える
「消毒だけは治療とは言わね、てもう居ないし、ほっといてやればいいのに、わざわざなんで面倒事に頭を突っ込むか、誰に似たって、俺しか居ないよな」
虎丸は肩を落とす、虎丸は虎丸で結構苦労しているらしい
「そう言えば、狐火どこ居るか知らないや、先生に聞けばよかった」
廊下を歩きながら、狐火を探していると、後ろから声をかけられる
「八雲くん、何してるの」
声のするほうに体を向けるとそこには、短髪で小柄な懐に刀を携えたクラスメイトが立っていた
「ごめん、誰だっけ」
「そっか、まだ挨拶してなかったね、僕は、草薙、同じクラスだよ」
「草薙な、よろしく」
「そういえば誰か探してたの、キョロキョロしてたけど」
「そうなんだよ、狐火って何処にいるか知ってるか、聞きたいことがあって」
「紺さんなら、今女子更衣室にいると思うよ、さっき入っていくのが見たから」
「ほんとか、ありがとうお前良い奴だな」
急いで更衣室の方に走っていくがすぐに、草薙の所に戻ってくる
「悪い、女子更衣室てどこ、ここに来たばっかで、分かんなくて」
「無駄に広いもんねここ」
「出来れば案内してくれないか」
「うん、いいよ」
草薙に連れられて、女子更衣室前に行く、もちろん叶芽は、女子更衣室に入れないので、前で仁王立ちして待つ
「出てこねぇ、草薙ほんとに、ここに入ってたのか、見間違えとか」
「そんな訳ないよ、入ればいいじゃん」
「女子更衣室だぞ、入れるわけないでしょ」
「なら僕が呼んでくるよ」
「入っていいの、女子更衣室だろ」
草薙はキョトンとして、なにかに気がついたように笑い出す
「そっか、叶芽くんは、知らなかったんだね、僕こんななりだけど、性別は女だよ、ごめんごめん、よく間違われるんだ」
叶芽は素っ頓狂な顔をして、草薙を見つめるが、どこからどう見ても女には見えない
「まじ」
「本当です、ごめんね、言ってたかったね」
「にわかには信じがたいが、頼めるか」
「うん待ってて」
草薙は、何食わぬ顔で女子更衣室に入っていく
「やっぱり、もう着替え終わってるのに、なんで出ないの」
「草薙ちゃん、外で八雲くんの気配がするので」
「さっき負けたから会いたくないの?」
「違います、ただ狐火の事を話したくなくて、この火を見る度にパパを思い出しちゃう、それにさっき、八雲くんの前であの男とあっちゃって」
「話してもいいと思うよ、八雲くんはきっとわかってくれる、」
「この話をするときっと、八雲くんに私は嫌われちゃう、せっかく仲良くなれた気がするのに」
暗い顔で笑う、狐火の手を掴んで引っ張る
「ちょっと草薙ちゃん」
「仲良くなりたいなら、話さないと、話さない方が嫌われるよ」
更衣室を出て、叶芽の前に行く
「お待たせ、八雲くん」
「ありがとう草薙、狐火、頼む俺にとって虎丸先生も鴉さんも恩人なんだ、そんな人がなんでそんなに嫌われているのか、何をしたのか知りたい」
「わかりました、だけどあの人のこと嫌いになりますよ、この話を聞けば」
場所を移動し人の気配のない教室に三人で集まる
「草薙ちゃんには前、話したよね、私のパパ、妖狐玉藻前の話」
「玉藻前、それって大妖怪の妖狐、最強の幻術の使いの」
「さすがに詳しいですね、そう私のパパは玉藻前、親と言っても、昔保護されて育てられたってだけで血の繋がりはありません、私はパパに色々な術を習いました、私の狐火もパパが教えてくれた術です」
「なんでそんな、大妖怪が」
狐火は下を向き静かに首を振る
「分かりません、ただの気まぐれか、はたまた泣いていた私を哀れに思ったか」
狐火は悲しそうな顔で手の平に、炎を作り出しそれを見つめる
「私はパパに、14年もの間、育ててもらいました、そして2年前とある理由から、黒羽鴉に、引き取られました」
「とある理由て」
「パパが、奴の手によって…」
狐火は下を向き、砂を噛む
「まさか」
「はいそのまさかです、理由は分かりませんが、パパはアイツに殺されたそして私は、パパが殺されるところをこの目で見ました、鴉が私の大好きだった大事なパパを、だから私はその時決めました、やつを殺すと、パパの復讐をすると、鴉の近くにいればその機会が訪れる、この学園に入ったのも、その力をつけるため、わかりましたか、八雲くん、私がアイツを嫌う理由が、貴方にとって黒羽鴉て人は恩人でも、私にとってはただの敵なんですよ」
立ち上がり真っ直ぐこちらを見る、狐火のその目には薄らと涙が浮かんでいた、狐火はその目を雑に擦り、叶芽と草薙の前を後にする、咄嗟に追おうとする叶芽の手を草薙が掴む
「ダメだよ八雲くん、これ以上はダメ、どれだけ君が言葉を並べても、あの子の見た現実は変わらない、鴉さんへの復讐心は変えられない、それ以上は返って彼女を傷つけるよ」
叶芽は椅子に座り込み、空を見上げる
「狐火のあの目はさ、絶対嘘はついてないんだよ、けど俺の知ってる、黒羽鴉って人は、そんな事をしないんだよ、もし殺したのがホントでもきっとのっぴきならない理由があるはずなんだ」
「僕も、鴉さんのことは知ってるけど、たしかに、紺さんの言うような人ではないと僕も思うけど」
二人で考え込んでいると、後ろから聞き覚えのある声がする
「貴様ら二人何をしているこんなところで」
声のする方を見ると、そこには、あの時虎丸と殺し合いをしかけた人が立っていた
「あんたは、ハチ公さん」
「酒呑童子の器、最長老様への無礼に加え、私の名も間違えるか」
「だって先生は、ハチ公って」
「私には、犬士と言う名があるというのに、あまりふざけていると、首を噛み切るぞ、貴様が生きていること自体不快なのだよこちらは」
「お兄ちゃん、八雲くんに噛みつかないで」
犬士は草薙の頬を叩く
「何度も言わせるな斬夜、貴様風情が私を兄などと呼ぶな、霊気を持たず産まれた出来損ないが、なぜ貴様がここにいるのだ」
「ハチ公さん、急に何してんだ、女だぞ」
「だからなんだ、さっさと練習場に戻れ、斬夜二度と私を兄と呼ぶな、いいな」
草薙は叩かれた頬を押さえながら頭を下げる
「はい、すみません犬士様」
犬士が立ち去ると、廊下の方が慌ただしくなり、虎丸が血相を変えてやってくる
「こんな所に居たのか、叶芽一旦教室に集まれ、やばい事になった」
虎丸に連れられ、急いで教室に戻ると、さっきまで練習場で模擬戦を行っていたクラスのほとんどが集合していた
「よし、今日出席してた連中はいるな、わざわざ模擬戦を中止して理由だが、先程京都の酒呑童子の監視をしていた、部隊が全滅したと、情報が入った、奴の目的は完全復活、体の半分は既に手に入れたそして今度の奴の目的はおそらく、京都の首塚大明神、奴の目的だ」
「虎丸先生勿体ぶってないで、理由を早急に」
「今回は、人員不足のため、この十二天将推薦クラスの八名及び教師職をしている俺と拓斗とハチ公三名に首塚大明神の防衛任務が課せられた、危険だから断ってくれても構わない」
虎丸の言葉を聞き終え、全員が立ち上がり声を揃えて言う
「行くに決まってんだろ」
「わかった、出発は明日8時、準備しろ、何度も言うが今回の任務は危険だ初任務にして大きすぎる、明日来なくても誰も責めはしない、それでも来るというのなら、力を貸してくれ」




