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一鬼当千  作者: カズト


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6/12

友との約束

今回の回に、叶芽は登場しません、酒呑童子と酒呑童子の息子鬼童丸、そして酒呑童子の旧友八咫烏を中心にした回です

八雲学園で模擬戦が執り行われている最中、某県某所にて自身の肉体の半分を取り戻した酒呑童子はその息子鬼童丸は対面していた


「父上、人間と争うのはおやめ下さい、貴方とて一度は人間を愛し人間と共に歩もうとしたお方それなのになぜ」

「数百年ぶりに父とあったというのに、鬼童丸よ、人間を守るか、人間などクズだ、自身の地位の為ならば、自身の妹ですら殺すような、クズの軍団それが人なのだ、一体何年もの間、人間の為に我ら妖が苦汁を飲んだ、今度は奴らに味合わせるのだ、我ら妖の受けた屈辱を」


鬼童丸は腰の剣に手をやる


「ならば止めねばなりませんな、あなたの息子として、人間の母を持つものとして」

「反抗期には少し遅すぎる」


鬼童丸の剣と酒呑童子の腕がぶつかり合う


「父上、止まってください、母様もそれを望んでいる」

「望んでいるわけなかろう、桜は人間に殺されたのだからな」

「それでも、母様は人間を恨んでなどいなかった、人間の愚かさより人間の優しさを知っていた」


酒呑童子は腕を振り、鬼童丸は吹き飛ばされ壁にぶつかり、あまりの衝撃に体が動かない


「付け上がるなよ鬼童丸、1度しか言わん我の後ろで百鬼として歩め」

「俺は知っている、貴方の優しさを貴方とて知っているはずです人の優しさを、変わってしまった今のあなたとは歩みたくなどない」

「我が息子とて、愚か者だったか」


酒呑童子が鬼童丸に向けて火炎を放ち、本気で殺そうとするその顔にその炎に、昔の鬼童丸へ向けた優しさはひとつもなかった


「俺では父上を止められませんでした申し訳ございません…今参ります母様」


鬼童丸はゆっくりと目を閉じる、その刹那火炎が斬られ鬼童丸の前に3人の影が立つ


「鬼童丸様お待たせいたしました」

「其方につくか、八咫烏、影鰐、雲外鏡」


影鰐が1歩前に出る


「当たり前だ、我々は皆鬼童丸様の剣であり盾だ、貴様についた記憶はない」


その3人の迫力に少し冷や汗を流すがすぐに平静を保ち、3人の前に立つ


「ならばここで共に消すまで」


酒呑童子は火炎を刀の形に変え、その熱量に空気が歪み斬り付けるがその剣を八咫烏が間一髪で止める


「どれだけ昔のお前が強くとも、力の半分しか取り戻していないお前なら、勝てない相手ではない」


その言葉を言い終えて、その瞬間、八咫烏の姿が歪み、酒呑童子の影から現れる、酒呑童子と斬り合い火花が散る


「影飛び、影鰐か」

「止まれ酒呑童子、こんな事をしたところで桜は喜ばぬぞ」

「知ったような事を八咫烏、お前が桜を語るな」


八咫烏と酒呑童子の剣がぶつかり合い、攻め合う何度も斬り合い周りに怒号が鳴り響き、地面がえぐれる


「主はあとだ、先に二人を」

「舞え…獄炎蝶」


鬼童丸に寄り添う影鰐、雲外鏡に酒呑童子の式神獄炎蝶が舞い、周囲の木々が燃やしながら影鰐らに向かって飛んでいく、寸前で何かに阻まれ獄炎蝶が爆ぜる


「雲外鏡か」

「私の力はあらゆるのを防ぐ、破れるものなら破ってみせろ」


明らかに3人は酒呑童子よりも優位に立っていた


「舐めるなよ、我は百鬼を束ねし鬼の王、酒呑童子貴様らごときが付け上がるな、遊びはこれまでだ情は捨てよう」


酒呑童子は目付きが変わり、炎の色が青に変わる、その炎を八咫烏にぶつけようとする、あまりの火力に空気が歪む、八咫烏は寸前のところで避けるが片足が燃える


「やはり加減をしていたか、影鰐、雲外鏡、隙を作る、その間に鬼童丸と共に逃げろ」

「八咫殿、本当にいいのですか、それをしてしまったら貴方は」

「死にゆく者など放っておけ、鬼童丸を頼んだぞ」


その言葉を最後に影鰐が鬼童丸を抱えて雲外鏡と共に逃げ出す、八咫烏に背を向ける二人の目には涙が溜まっていた、酒呑童子は逃がさぬように攻撃を加えようとするが、八咫烏がそれを決して逃がさない


「八咫殿、ご武運を」

「八咫烏、なぜ貴様ほどの男が鬼童丸ごときに心酔する」

「心酔している訳では無い、ただ我は昔たった二人しか居らぬ友の一人と約束をした、鬼童丸を守ってくれと、その友との約束を果たしているだけだ」


戦いの地から少し離れた場所の洞窟にて、影鰐と雲外鏡は鬼童丸を治療していた、少し時が経ちうっすらと鬼童丸が目を開ける


「ここは、影鰐、雲外鏡なぜまさか、八咫烏は八咫烏はどうした、答えろ」


鬼童丸の問いにふたりは奥歯を噛み締める何も言わない二人を見て痛む体を起こし足を引きずりながら歩き出す、すかさず影鰐が止める


「おやめください、そのお体では死にに行く行為」

「どけ、邪魔するならお前らとて許さんぞ」

「お叱りはお受けします、今行かれても、八咫殿の思いを踏みにじります」

「ならば見捨てろとそう言うのか、ならなぜ置いてきた、なぜ八咫烏を置いてきた、死ぬとわかっていてなぜ止めなかった、なぜ共に逃げなかった」


その鬼童丸の目には怒りと悲しみが宿っていた、だがそれは二人とて同じ、影鰐は静かに語る


「貴方は…私達が八咫殿を置いてくることを止めなかったと、何も思わずあの人を置いてきたと、ほんとにそうお思いですか…私達が喜んで死ぬことを選ばせたと、ほんとにそうお思いならば貴方はなんて…酷なのだ」


涙を流し、途切れ途切れに発するその言葉に鬼童丸は何も言えるわけもなく、ただそこで立ち止まり自身の無力さに嘆くことしかできなかった


一方その頃の八咫烏は酒呑童子に押されながらも足止めをしていた、周囲は2人の激しいぶつかり合いに更地と変わっていた


「酒呑童子、貴様の悲しみ解らぬわけではない、だがその悲しみは自身の子を殺してでも晴らすべき悲しみなのか」

「無論だ、この怒りは悲しみは誰にも止められる物ではない」


先程までにうってかわり、八咫烏は追い詰められ身体中が傷だらけになり、刀はボロボロに刃こぼれを起こし、立っているのもやっとの状況


「なんとも哀れ若き日の貴様は我と双璧を成す程の実力者であった老いたな、聞こう八咫烏、共に再び歩むつもりはないか、貴様ほどの者をここで殺してしまうのは惜しい」


酒呑童子は八咫烏にゆっくりと手を差し伸べる、その冷徹な眼差しに昔の面影はなかった


「なんて苦しそうな顔をしている、何度言われようとも無駄だ、友との約束を違え生き延びるより友との約束を守る為に散れるのならば本望、この命持ってゆけ」


八咫烏は自身の持った刀に生命力を注ぎ始めるすると刀は錆びが取れ美しい刀身を露わにするその刀身はついつい見入ってしまうほどの神々しさを放つ


「この程度しか残せなんだ、すまぬな」

「決意は変わらぬか…さらばだ」


その言葉を最後に酒呑童子は八咫烏を押し始める、そして終わりはすぐにやってきた、一瞬だけその剣が止まる、酒呑童子の炎の刃は八咫烏の胸を貫く、酒呑童子に倒れ込みその背中には八咫烏の血が線を書くその顔には後悔は無く微笑んでいた、そして最後に消え入りそうな小さな声で


「酒呑童子、貴様と昔飲んだ酒は美味かった、地獄の縁で待っているぞ…酔いどれ童子いや…友よ」


目を伏せ酒呑童子は静かに砂を噛む


「…阿呆鳥が勝手の良い時だけ友と呼びよって、少しだけ一人にするが待っていろ、我が彼岸を遂げたその時に、我らもそちらに行こう…そしたらまた…酒を飲んでくれ」


八咫烏は最後まで酒呑童子を止めようとした、鬼童丸を助けるためにそして友の間違いを正すために


「厄介なものを逃がしてしまった、だが鬼童丸よ、もしお前が我の歩みを止めると言うのであれば我は非道にならねばならぬ、せいぜい数刻の安寧を楽しめ我が子よ、そして静かに眠れ我と共に歩んだ今は亡き古き友よ」


八咫烏の死体が酒呑童子の青い炎に燃えるその炎はまるで、友を手にかけてしまった酒呑童子の後悔と涙の色であるかのように

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