叶芽VS狐火
広さ50メートル程の小さな練習場、模擬戦の為、叶芽と狐火は向かい合う
「八雲くん、手加減はしません、怪我しても文句は言わないでください」
「文句なんて言わないよ、よろしくお願いします」
軽い挨拶を終え、練習場の中心に集まる
「2人とも、前へルールを説明するよ、まず殺しは絶対なし、その他武器の使用はOK、危険そうなら僕が止めるから、審判はこの僕、十二天将、拓斗が執り行う、それなら模擬戦一回戦、八雲叶芽VS狐火紺、開戦」
その号令を合図に即座に狐火と距離を取る、狐火を警戒するが一向に動く気配がない
「先手必勝…刻め七星…」
詠唱を終える前に狐火の姿が消える、横腹に鋭い痛みが走り、体が吹き飛ぶ
「いきなり、なんで警戒してたはず」
「狐の言葉に裏表、私を甘く見てると化かされますよ 、八雲くん」
「さっきのは幻」
「幻とはちょっと違います、ちゃんと実態はある、それにしても拍子抜けですね、酒呑童子の君がここまで弱いだなんて」
少し痛む横腹を押さえて立ち上がる
「弱いかもしれないけど、何度も言うが酒呑童子じゃない、俺は人間の八雲叶芽だ」
左手を地面につけ、3点で立つ、そして霊気を解放すると、叶芽の体が眩い光に包まれる
「駆け抜けろ、流星」
その掛け声と同時に叶芽は目にも止まらぬ早さで練習場を駆け抜け、狐火の後ろを取る
「穿て、六連星」
6つの光の砲弾が狐火を襲い、それを身軽に避けるが狐火を追って一つが命中する
「全て避けたはずなのに、これが噂に聞く一色様の考案した天体術と言うやつですか」
「どうだこれが俺の弟子の実力だ、恐れ入ったか」
「なんで先生が自慢げなんだよ、恥ずかしいな、それでも一発当たっただけだし、多分そこまで効いてない」
「はい全然効いてません、手加減してますよね、貴方のその実力なら6発とも当てることだってできたはずです、それに戦闘不能にさせるなら顔や胴体を狙った方がいいのになぜ腕を」
「俺は自慢じゃないけど、そんな器用なことはできないし、本気でやるけど、必要以上に女に手は出さない」
「そうですか、貴方の敗因はその甘さです」
狐火が手を振り上げると叶芽の周囲に炎の渦で包まれる
「熱っ、やっぱり一筋縄じゃいかないな」
炎の渦がジリジリと叶芽に迫ってくる
「負けを認めてください、そうじゃないと灰になっちゃいますよ」
「爆ぜろ、超新星」
炎の中で大爆発が起こり炎の渦が吹き飛び土煙が舞い上がる、あまりの威力に叶芽を中心に地面が円形にえぐれている、相当の霊気を一気に解放する超新星を使ったあとのため叶芽は膝を着く
「はぁはぁ、まさか一回戦で、超新星使う羽目になるとは」
「あの渦の中で、霊気を解放するなんて、一歩間違えたら熱風で全身が焼ける可能性が有るのになぜそんな無謀を」
「本気でやるって言ったろ、君が本気でやってるんだ、こっちも本気でやらないと、君の本気に失礼だから」
二人とも大技を使い満身創痍状態
「そういえば君のその炎、妖狐の使う狐火ってヤツでしょ、文献で読んだことがある、なんで人間の君が使えるの」
「会話で霊気の回復を図るつもりですか、そんなことを聞いてなんになるんですか」
「ただの興味本位さ、俺は虎丸先生の弟子だからね、術の研究は大好きなんで」
「私に勝ったら教えてあげますよ」
狐火は小さな炎を作り銃弾のように叶芽を射抜く、満身創痍のなか寸前のところで避けていく
「あと1回ぐらいしか、術は使えない使いどきを間違えば負ける」
「避けてるだけでは勝てませんよ」
狐火の炎が途切れるその一瞬を、叶芽は見逃さなかった
「隠せ、青星」
青星で強い光を発生させ、狐火の目をくらませた
「どれだけ光が強くても多少は見えます」
叶芽の方に炎の玉を打ち出し射抜く
「勝ちです」
そう確信した、間違いなく叶芽を打ち抜いたはずなのにそこに叶芽の姿はなく、炎で焼けた地面だけが残っている
「刻め、七星剣」
その掛け声と共に、叶芽が姿を表す、そして七星剣が狐火の首元、寸前のところで止まる
「そこまで、勝者は叶芽、一回戦にしては白熱だったね、いい試合だったけど、ボロボロすぎだよ、君たち」
叶芽も狐火もボロボロになっていてどれだけ戦いが白熱したかは一目でうかがえる
「2人とも、保健室で治療を受けてきな、二回戦始まる時に呼びに行くから、それとちゃんと着替えてきなよ」
その場を後にし、二人で保健室に向かう、その道中、狐火から質問が飛んでくる
「八雲くん、あの時どうやって避けたんですか、確実にあなたに当てたはず」
「別に避けたわけじゃないよ、青星の術としての能力は二つあるんだ、一つが強い光を発生させる能力、もう一つが術者の姿と気配を完全に隠すんだ、シリウスBのように光が強すぎて俺が霞んだだけだよ」
術の話をしていると、鴉が道に立っている
「紺、大丈夫か、怪我とかしてないか」
心配して手を伸ばす鴉を弾く
「触らないでください」
「そんな邪険にしなくても、弟子の心配ぐらいするだろ普通」
「師匠面しないでください、名ばかりの師匠が何を、行きましょ八雲くん」
落ち込む鴉をよそに、狐火は歩き出す、叶芽はオロオロしながらも、狐火を追う
「待てって、狐火、何もあんなこと言わなくてもいいだろ、鴉さんはお前を心配して来てくれたのに」
「何も知らない貴方が、勝手言わないでください、あの人が私を心配するなんて反吐が出る」
「おい待てって、何があったか知らないけど、師匠に対してそこまで嫌う理由はなんなんだよ、俺だってガキの頃から鴉さんには世話になってるから、鴉さんがそこまで嫌われる理由はわかんないんだけど」
咄嗟に狐火の手を掴んでしまい、狐火に睨まれるが、たじろぐことなく、理由を聞く
「手を離してください、あなたに話す義理はありません、二度とこの件について聞かないでください」
手を振り払い狐火は、その場を去る、叶芽は一人ポツンと残され、モヤモヤを残しながら保健室に向かう、保健室には虎丸が居た




