同居人
某県某所、木漏れ日の落ちる森の中
「お体の調子はどうですか、酒呑童子様」
「霊体のままでは800年前の力は完全には取り戻せてはいない、だがそれも半身を取り返せばいいだけの話だ、それにしてもよく隠したものだあの忌々しい男に斬られた体をお主の術で保管し隠すなどは、さすがは術の才に恵まれたものだ」
「もったいないお言葉、ですが私が保管できたのは肉体のみ首は陰陽師共が未だ監視下にあります」
「京の地の首塚、人の首を見世物にするとは羽虫共の考えることはやはり低俗」
酒呑童子と茨木童子はそのまま歩みを進め森の最奥にある滝壺にやって来た、茨木童子がその滝壺の封印を解くと首のない白骨化した体が現れる、その体からは白骨化して動かないはずなのに禍々しい気配が漂ってきている、酒呑童子がその骨に手をかざすと骨は浮かび上がり酒呑童子の肉体に入ってくる
「最高だ。数百年ぶりの自分の体、やはりよく馴染むだがまだだまだ弱い、残りの首を取り戻せばあのころの力が手に入る」
最悪の王の力が確実に復活に向かっている
八雲学園、叶芽が復学してその日の放課後、叶芽は寮に向かっていた、この学園の寮は2人部屋でまだ見ぬ同居人に心を踊らせていた
「203号室ここが俺の部屋か、先生曰く、荷物は送ってあるって言ってたけど俺荷造りせずきたから先生がしてくれたんだよな」
ドキドキしながら扉を開けると、その部屋には朝叶芽のことを襲った男だった、その男を見ると同時に即座に叶芽は逃げ出す
「まぁ待て、八雲叶芽くん」
その声からは殺気はなく優しい声だった
「知らなかったこととは言え今朝は急に襲ってしまってすまなかった、あの時は君が酒呑童子だと思っていたんだ、君に逃げられたあの後一色様にあって事情を聞いたほんとにすまなかった」
そう言われても目が会った途端襲ってくる奴の言葉をすぐに信じろというほうが無理がある、疑いの目は未だにやめることはできない
「君が疑うのも当然だ本当にすまなかったと思っている、この学園の生徒会長として、生徒を守りたい一心だったんだ、これだけ言っても君からしたら信じられないと思う故に僕のことを気が済むまで殴ってくれ、僕は抵抗しないし防御もしない、これが僕のできる謝罪だほんとにすまない」
地面に膝をつき頭を下げるその男をこれ以上疑うのはさすがに心が痛む、未だに今朝のことは許せないが、誤解は一旦は解けたようだ
「わかりましたから、頭あげてください、もういいですよ、許せるかって言われたら許せないけど、そこまで謝られたら怒る気無くなるんで、理由があったみたいだし、今回の件は水に流します、だから頭あげてください」
頭を下げ続けるその男は重荷がすっと降りたように頭をあげる
「許してくれるのか、そんな簡単に」
「別に理由もあったみたいだし、もう命を狙わないって言うなら別に、そんなことより生徒会長、挨拶してなかったですね、俺は八雲叶芽15歳です、推薦クラスで今日から登校です」
「僕の名前は紅 刃3年生、歳は17歳この学園の生徒会長をやらせてもらってる、気軽に刃と呼んでくれ」
二人の間にはまだ壁は少しありながらも少しは打ち解けたような気がする
「ところで叶芽くん、君は一色様のお弟子さんらしいね、今朝、君が使ったあの光を出す術はなんだい。初めて見た詠唱もとても短くて驚いたよ」
「あの術は青星と言って、先生が考案した術で詠唱も先生が考えたもので天体術の1つです」
「なるほど、オリジナルの術かそれにしても青星、シリウス故に強い光か、さすがは一色様考案の術素晴らしい」
「先輩俺からも質問いいですか、先輩が使ってたあの剣、宝剣ですよね、宝剣て対価を払って力を増す物ですよね、あれだけの力を」
「別にそんなすごい対価は払ってないよ、宝剣を振るうたびに誰かが僕のことを忘れていくんだ」
「忘れられることが対価だからあれだけの力を、すごいけどやっぱり対価が重すぎる」
「陰陽師の強さは覚悟の強さ、存在を忘れられてもまた記憶は増える、それにもし僕が死ねば僕を覚えている人がいなければ悲しむ人が居なくてすむ、悲しい気持ちは人を弱くするからね」
「すごい覚悟、なら先輩俺があんたを覚えとくよ、世界に一人ぐらいあんたの死で悲しむ奴がいてもいいんじゃないか」
少し間を置き、刃の顔が少し緩む
「君は優しすぎないかい、今朝自分を殺そうとした男を」
「てか、殺されかけたのに忘れろって方が無理だって」
「それもそうかもね、なら約束だ僕を忘れないでくれよ」
「はい」
叶芽にとって殺されかけたことなどどうでもいい、叶芽にとって生きていたらほかなどどうだっていいのだから
「話変わるけどさ先輩が俺と同じ部屋なのって偶然なの、それとも意図して」
「いいや、偶然だよ僕と前同じ部屋だった人は陰陽師の仕事が嫌で辞めちゃったんだ、こんな仕事だ嫌になるのもわかるけどね」
人の命など簡単に消えてしまう陰陽師の世界では年中人手不足だった、それに生半可な鍛錬では決して務まるものでもなく上層部は常に頭を抱えているらしい
少し会話を続けていると気がついたら結構な時間が経っていた、扉がノックされ扉を開けるとそこには虎丸が立っていた
「叶芽、荷解き終わったか、おっと刃も同じ部屋だったな、悪いな迷惑かけて急に同居人放りこんで」
「迷惑だなんてそんな」
「叶芽、明日は模擬戦練習があるから直接練習場に来てくれ、気合い入れろよクラスの連中はお前の実力を疑っている、お前の本気見せてやれ」
「了解です先生」
ここ数日色々なことがあり、荷解きが終わったらすぐに眠りについてしまった、日は昇り翌日、刃はまだ寝ていた、服を着替え戦闘服に身を包むその服は虎丸が拵えた戦闘服でちょっとやそっとのことでは破れたりしないらしい、部屋を出て昨日、虎丸の言っていた練習場に向かうとそこには既に昨日教室に居た六人と虎丸と拓斗がいた
「全員集まったところで早速君たちには、練習試合をしてもらう、トーナメント制にするからこれを見てみんなの独自の授業プランを立てるから真面目にやってね、組み合わせはこっちで決めたから本気でやるのはいいけど、くれぐれも殺したりしないように」
拓斗が話終わるとトーナメント表が発表される、1回戦目に叶芽の名前があるそして相手の名前には、狐火紺と名前があった昨日、発言していた赤髪の子だ
「1回戦の人だけここにいてそれ以外は上に上がって」
叶芽と狐火を残し他の者たちは上に上がる
「いきなり貴方とですか、容赦はしません」
「こっちこそ女の子だからって手加減しないぜ、よろしくな」
戦いの前の挨拶を終え二人は静かに向き合う、模擬戦一回戦、八雲叶芽VS狐火紺。その戦いが幕を開ける




