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008~アリス6~

本日2話目です。

読み飛ばしにご注意ください。

「疲れた」

 

 20分ほど経過したところで、アリスが宣言通りに何かを終えた。

 そして答えは出なかったけど、この短時間で思いつくのなら既に広まっていると思う。

 

「お疲れ様です、アリス。魔法の書き換えだったのですか?」

 

「そうだよ。ところで魔法書き換え速度が早ければ戦闘力は上がるけど、戦闘力をあげるための優先順位としては高くない。いくら戦闘中に初級魔法のアロー系5種を書き換えて使えても、中級魔法のフレイムアローには敵わないのだから」

 

 確かにその通りだ。とうぜん例外はあるのだけど、基本的に有利な属性であっても初級魔法では中級魔法に敵わない。いくら初級魔法をすべて使えても、中級魔法1つにすら対応できない。

 それにしても、アリスは魔法の書き換え中に私達の会話も聞いていたのね。稀とはいえ簡単なファイアアローですら、熟練者が静かな場所で集中した状態でも失敗することがあるというのに、よくこんな場所で集中しにくい場所で、それも会話を聞きながら書き換えられるものね。

 失敗すれば始めからやり直しになり、魔力も無駄に消費してしまうというのに。

 

「そうですね。私は自己強化魔法だけで大抵問題ありませんから」

 

「それはアリサだから。パラスさんは魔法スロット1つでは厳しいよね?」

 

「はい。魔法スロットが3つあっても魔法メインだと、固定スロットの発生には泣きますからね」

 

 その気持ちはわかる。私も行動制限に対応するためにスロット1つを割り振っていた時は戦闘が厳しくなったもの。3つの私でそうだったのだから、1つしかなければ魔法以外の戦闘方法で戦うか、行動制限を受け入れるしかない。まあ、その場合はパーティで行動して誰か1人が行動制限に対応する魔法を全員に使うことがほとんどなのだけど。

 

「あら、アリス。それだとやはり、魔法書き換えの優先順位は高いのではないの? 特にスロット1つだとその有用性は大きいと思うわよ」

 

「戦闘中の魔法書き換えはほんとうに必要な時以外はするべきではない。危険性と魔力消費を考えれば、書き換えるだけで不利になるのだから」

 

 確かにその通りだ。

 書き換えに意識を割くことに加えて、魔法書き換えはかなりの魔力を消費する。相手が書き換え後の魔法に対策を準備していれば、こちらは魔力が大幅に減っただけ不利になってしまう。

 

「もちろん優先順位が高くないだけで、とうぜん早い方がいい。ただ、あれは気づけば一気に加速する。そうだよね、パラスさん」

 

「……まあ、アリサよりも書き換えの早い人が知らないとは思っていませんよ。その通りです」

 

 気づけば一気に加速する?

 そしてパラスさんが学生時代に知らず、今は知っているとなると秘匿されている古文書に記載があったのかしら……いえ、それはおかしいわね。そうであれば、エルフ国の大魔法使いとされる人達は全員の魔法書き換えが早いはず。

 そうなると……パラスさんだけが読み解けた、と考えるべきかしら。

 

「あなたは理解しているのね。あれは広めるべきではない技術。気づき、自己責任で行うべき技術」

 

「そうですね。あれは一定以上の理解と技量があってこそ、試みるべき技術です。あの古文書に関しては秘匿すべきだと私も思います」

 

 広めるべきではない……一定以上の理解と技術が必要……。危険が伴う、ということかしら。

 

「パラス、それ以上はやめておいたほうがいいでしょう。エルフ国の事情はあまり知りませんが、エルピスさんはその書物に関して知らないのでしょう?」

 

「あら、私はアリスさんから師事を受けていただけですよ?」

 

 アリサさんに笑顔でそう答えたパラスさん。

 うん、私に教えてくれたのは分かっている。そして、それはパラスさんが知っている私の技量ならば、その技術を試みても問題ないとも伝えてくれているのだろう。嬉しいことね。

 

「……確かにそうですね。アリスからの師事を受ける機会はそうそうありませんから、少し羨ましいですよ」

 

「いいでしょう?」

 

「自慢しなくてもいいです。アリスから師事を受けた回数は私の方が多いですので」

 

 アリサさんも自慢してるよね。

 

「エルピス、パラスさん。さっきの魔法に関して、答えが分かっても扱いは古文書の技術と同じでむやみに広めないようにしてね。理由は分かるよね?」

 

「危険、なのですね」

 

「そう」

 

「分かりました」

 

「分かった」

 

 古文書の技術がどれほど危険なのかは分からないけど、私よりも魔法が上手い2人が口をそろえて危険だと判断している技術は、間違いなく危険だと思う。

 それでも、私は強くなるためにその技術がほしい。

 そしてその前に、再び魔法を使えるようにならなければならない。

 頑張ろう。

 

「アリサには口止めしないのですね?」

 

「アリサは既に理解しているから。それにあなた達にも口止めをしたつもりはない。あくまで判断するのはあなた達」

 

 これは信頼されている、と考えてもいいのかしら。

 

「今日、初めて会った私を信用するのですか?」

 

「アリサが信用している、理由はそれで十分だよ。それに判断が間違っていれば私が処理するから問題ない」

 

 そう言ったアリスの瞳は揺るがず、強く私達を捉えているように感じる。おそらく処理とは……。

 

「安心してください。私もアリサが信じるあなたを裏切る真似はしたくないですので」

 

「私も安心してほしい。魔法の失敗による後悔は、よく知っているつもりだから」

 

 正しくは魔法ではないけど、あれも似たようなものだから……。

 

「ありがとう、私からはそれだけ」

 

「それでは帰りましょうか」

 

「はい」

 

「待たね、アリサ」

 

 一瞬で消えてしまったアリサさんとパラスさん。そして手を振るアリス。

 

「エルピス、私達も帰ろう。ここからは私も戦闘をするね」

 

「ええ」

 

 ここからはアリスの普段の戦闘が見える。少し、楽しみね。

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