表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/33

007~アリス5~

本日1話目です。

読み飛ばしにご注意ください。

「うん、準備できた。それじゃあ、始めるね」

 

 アリサさんとパラスさんも集中して見守る中、アリスは掌を広げて何もない方向へ向けた。

 そして、掌からは炎の矢が打ち出される。続いて氷、次におそらく風、水、足元から土。それぞれがアロー系の形状をとってアリスが掌を向けている先へ飛んでいく。それも、ほぼ同時に発生して。

 ……え。

 

「アリス、魔力の数値はいくつですか?」

 

「今日の朝、確認した時は2で、スキルは発現していなかった」

 

 1つの魔力スロットに書き込める魔法式の数は1つ。つまり5個の魔法をほぼ同時に放ったアリスは5個の魔法スロットをもっていることになるけど、現在確認されている最高魔法スロット数は3つのはず。

 さらに書き込める魔法の容量ともいえる魔力のステータスは全魔法スロットの合計のはずなので、アリスは合計2の容量で1つあたり1必要なはずの初級魔法であるアロー系を5つ使用したことになる。

 

「2……つまりは誰でも初期程度のステータスから行える、そう言いたいのですね」

 

「うん。"魔法が使える"のなら"誰でも"行えるはず」

 

 誰でも……それはつまり、魔法スロット数が1つであってもできるということ。

 それでも、魔法が使えない私はできない。

 

「アリス、なぜ私にも見せてくれたの?」

 

「理由はきっと、ハーフエルフさんが知ってる」

 

「パラスです。エルピスさん、実は古文書に魔法が使えなくなってから再び使えるようになった事例が載っていたの。おそらく彼女はその可能性について言っているのだと思うわ」

 

「え……」

 

 魔法が再び使えるようになった事例が、存在している……。

 私にもまだ……可能性が残っている、の?

 

「ほ、方法は載っていなかったのですか!?」

 

「落ち着いて」

 

 思わずパラスさんの肩を掴んで迫っていた。肩を掴んでいた手を離し、少し離れてから深呼吸する。

 ……よし、落ち着いた。

 

「何か知っていたら既に教えていますよ」

 

「そう、ですか……」

 

 いえ、でも可能性は見えた。

 古文書にしか載っていない程度の僅かな可能性でも、私にとっては希望の光。

 

「ところでアリスさん、あなたはどこでそのことを知ったのですか? あれはエルフ族の一部に伝わる古文書にしか載っていなかったと思ったのですが?」

 

 そうか、隠されていた情報だから私に内容を教えるわけにはいかなかったけど、それでも私に可能性があることを伝えようとしてくれていたのね……。

 

「その事例、種族は書いてあった?」

 

「……口伝、ですか」

 

 アリスはその種族に伝わる言い伝えから知ったのかしら。

 そうなると精霊族か、幻獣族……いえ、そこは私が気にすることではないわね。

 

「この話は終わり。それじゃあアリサ、20分ほど護衛をお願い。そのあと少しだけ話しをしよう?」

 

「それは構いませんが、この階層であなたに護衛が必要なのですか?」

 

 20分。さっきと同じ時間だから、魔法の書き換えかしら。

 そういえばさっきもリアが護衛をしていたわね。

 

「難しいから集中しないといけないの」

 

「……ロゼはまだ来ていないと言っていましたね。私のために無茶はしないでくださいよ……まあ、嬉しいですけど」

 

 言葉通り嬉しそうに微笑むアリサさん。

 

「デレた。アリサは稀に鋭いよね。それじゃあお願い」

 

「デレてません。任せて下さい」

 

 アリサさんの返答を聞き終える前にアリスは木を背にして座り、瞼を閉じて集中し始めた。

 その様子を嬉しそうに微笑んだまま見つめるアリサさん。やっぱりデレてると思う。

 

「パラスさん。私に可能性を伝えようとしてくださっていたのに理解できず、申しわけありませんでした。そしてありがとうございます。おかげで可能性が見えました」

 

「いえ、気にしないで。私としてもあなたがその事例になってくれたら嬉しかったの。はっきり言ってエルフ族は古文書に関して秘匿しすぎなのよ。いったい何を恐れているのかしらね」

 

 確かに私が事例になれば古文書以外の情報源から、再び魔法が使えるようになる可能性を広められる。今は私しかいない症状だけど、今後同じ症状に苦しむ人が出た場合を考えると広めておきたいと、私も思う。

 

「その事例になれるよう、頑張ります」

 

「あまり力になれなくてごめんなさいね。ところでエルピスさん、さっきの魔法について何か分かったことはある?」

 

「魔法スロットを5つもっているのかと考えましたけど、すぐに違うと知らされました。アリスだと書き換えが早いわけでもないでしょうし、ちょっと思いつきません」

 

「そうよね~」

 

「何を言っているんですか? アリスの魔法書き換えは私よりも早いはずですよ」

 

 さも当然と言わんばかりのアリサさん。アリスが早いのは知っているけど、それは私程度が基準の早い。高ランクのアリサさん達とは比べものにならないはずだけど……。

 

「アリサ。私の記憶が確かなら、あなたはファイアアローを30秒以内に書き込めなかったかしら?」

 

 さすがランク6のアリサさん。20分も必要な私とはレベルが違うわね。

 

「正確な時間は知りませんが、アリスは1秒以内です。よく戦闘しながら書き換えてましたよ」

 

 1秒以内……1秒以内?

 戦闘しながら書き換え?

 

「あ、アリサ。それ私達に言ってもよかったの?」

 

「口止めはされていませんので。言ってはいけない内容なら、アリスは先ほどのように口止めします」

 

 ちょっと理解が追いつかないわ。何をどうすれば1秒以内にあの量を正確に書き込めるのかしら。

 あれ、待って。そうなるとアリスは今、何をしているのかしら。ファイアアローを1秒以内で書き込めるアリスが、20分もかけて魔法を書き込むとは思えないけど……いえ、上級魔法や特殊魔法なら時間がかかっても不思議ではないのかしら。

 

「何でそんな子がいまだにランク1なの……」

 

「私も知りません。それに魔法の書き換えが早くても、戦闘力が高いとは限りませんよ?」

 

「エルピスさんが苦戦するほどの希少個体を倒したのでしょう?」

 

「その通りですが、スキルと魔法抜きの戦闘ならば現状ではエルピスさんの方が上でしょう」

 

 魔法抜きとはいえ、アリスよりも私のほうが上……簡単には信じられないけど、私ではなくアリサさんの判断なら間違いはないのでしょうね。

 ただ、アリスはそれを大きく覆せるほどの魔法技能があるということ。仮に私が魔法を使えたとしても勝てる気がしないわね。

 

「そうなると、高速で魔法を書き換えて連続で使用した可能性はどうなのかしら?」

 

「それも含めて検討すべきですね。1つだけ確実なのは、私達の全員ができる内容だということでしょう。ちなみに1秒以内に5つの魔法を使いながら4度魔法を書き換えられる人を知っているのですか?」

 

「1人だけ、ね。ただ、あの子はスキルあってのことみたいだけど」

 

 私も知っている。

 魔法学校で唯一、魔法技術で負けてしまった相手。

 

「誰です?」

 

「堕神前にエルフ国の中央魔法学校で歴代最高と謳われていたエルピスさんを唯一負かした相手で、名前はエクセリクシ君。堕神後は姿を見てないけど、どうしたのかしらね」

 

 エクセリクシ君は学校に姿を見せていなかったみたいね。彼なら心配は要らないと思うけど、元気だといいな。

 

「堕神前でしたか。それにしてもスキル有りとはいえ、アリスと同等レベルとは正直驚きました。最近のエルフ国は優秀な子が多いのですね」

 

「私も最近の最優秀生徒だったんですけど?」

 

「今の最優秀の子はファイアアローをどの程度の時間で書き換えるんですか?」

 

「私は20分でした」

 

「私が学生の頃は25分だったかしら」

 

「よく10年で25分から3分まで縮めましたね」

 

 5歳も違わないパラスさんが3分で、私が20分。

 仮に私が魔法を使えたままだったとして、追いつけていたのかしら……。

 

「頑張りましたので。ところで、魔法スロットは1つしか使用していないと考えておけばいいのですよね?」

 

「そうですね。アリスは"魔法が使える"のなら"誰でも"と言っていましたので、魔力スロットが1つでも使えると考えるべきでしょう」

 

 私もそう考えている。魔法が使える最低条件として、魔法を書き込むための魔法スロットを1つはもっているはずだもの。

 

「そうですよね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ