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031~強く煌めくは近くも遥か遠い星~

 本日8話目の投稿です。

 読み飛ばしにご注意ください。

 広がる世界は暗く、静かだ。堕神後に復活する直前はいつもこの世界を見て、1人で目を覚ます。

 ……そう、私は負けたんだ。アリスを背後に迎え、その状態で負けてしまった。

 銀狼が放った最後の咆哮、あれは間違いなく魔力に干渉する効力が付与されたものであり、それで私が纏っていた最後の希望は吹き飛ばされた。

 それでも最後の魔力を振り絞って、アリスの短剣に魔力を込めて立ち向かったけど、結果はこの通り。

 以前、魔力に干渉するタイプの技を使用する魔物と戦ったことがあったのに、予想できなかった。いえ、予想できていたとしても回避できなかった。

 ……私は悔しいよ。私を2度も救ってくれた相手を救えなかった。想像していた以上の力を振り絞って、それでも負けてしまった。

 最初から逃げるべきだったのかな。それとも、アリスが倒れた時点で抱えて逃げるべきだったのかな。

 

「ねえ、アリス。私はどうすればよかったのかしら」

 

 復活したばかりの身体で目を瞑ったまま、天に手を伸ばして問いかける。既に存在するはずのない少女へと。

 

「大丈夫、エルピスは頑張ったよ。私は輝くあなたを見ることができて、とても満足」

 

 心が壊れてしまったのか、アリスの声が聞こえる。それも慰めてくれる。

 

「……私がもっと強ければ、あなたを救えたのかな」

 

「それはきっと難しいかな。私は今のあなたに救われるほど弱くないもの」

 

 壊れた心が想像する声ならもう少し言葉を考えてほしい。ほら、もう少し優しい言葉をかけなさい。

 

「でも、もっともっと輝いたあなたになら救われる機会があるかも知れない。私はあなたの輝きにそれだけの価値を見出した」

 

 そう、想像ならそんな感じの優しい言葉をかけてほしいものね。

 せっかく柔らかい枕で心地よい声を聞いているのだから、内容も良いものであってほし……あら、ここまで柔らかい枕とは不思議ね。

 ……。

 決心してゆっくりと瞼を開けると、視界に優しく微笑むアリスが飛び込んできた。

 

「おはよう、アリス」

 

「おはよう、エルピス」

 

 確認のために手を伸ばし、アリスの頬をさする。

 私が負けてしまったせいでアリスを守れなかった。でも、目の前にいるアリスの姿は、声は、感触は、その存在が本物のアリスだと私に告げている。

 頬をさすっていた手で頬を引っ張り伸ばしてみるが、その柔らかな頬はさらに本物だと告げるようだ。

 

「楽しいの?」

 

「いえ、私はとても嬉しいの」

 

 手から伝わるその感触が、口から放たれるその声が、アリスが生きていることを証明してくれる。実感させてくれる。

 それはとても嬉しいことよ。

 

「それは良かった。でも、少し痛いの」

 

 その言葉を聞き、今の自分がしている行為がアリスに痛みを与えるものだと気づいた。嬉しすぎて、そこまで考えが及んでいなかった。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 頬を伝わる温かい筋を感じつつもすぐに頬を引っ張っていた手を離し、その手で頬を撫でる。赤く染まった頬はとても痛そうで、それだけで痛みが治まりそうには見えない。

 ……そうだ、今の私ならこの痛みを治めることができるはず。

 

「ヒール」

 

 撫でる手をそのままに、魔力スロットへ魔力を流しつつ癒しのキーワードを唱える。

 その魔力は操作しなくても零れること無く魔力スロットへ吸い込まれ、私の手から放出されてアリスを包み込む。

 

「ありがとう。あなたのヒール、確かに受け取ったよ」

 

 みるみる赤みが引いていく頬とその言葉に、魔法が再び使えると実感してさらに嬉しくなってしまう。嬉しいことが重なって号泣してしまいそうだ。

 

「今は泣いてもいい時だよ。さあ、思いっきり泣いて」

 

「……うん!」

 

 アリスに顔を埋め、思い切り感情を吐き出してしまう。

 アリスが許してくれているのだから、こんな嬉しい時くらいは泣きましょう。

 

 

 

 たくさん泣いて、泣き止んで、アリスの膝枕で寝転ぶのはとても気持ちが良いものね。

 それにしても、アリスの言葉は正しかったと実感できた。

 アリスから貰った短剣を手放してしまった私は、アリスの近くに落ちていた槍と短剣を掴んで銀狼へと向かった。アリスが起きた時に戦うための武器が無いのは不味いかと思ったけど、私としてはアリスに逃げることを選択してほしかった。だからこそ、両方を持っていく選択をした。

 そして、その時に短剣へ向かった私の手は確かに震えていたのよね。

 思えばアリスは最初に私の目の前で使って見せてくれた。だからこそ、それを見た私から恐怖が消えて問題なく使えていたに過ぎない。

 それでも最後の最後で迷いなく魔力武器としてあの短剣を使用できたことは嬉しいな。だって、恐怖よりもアリスを救いたい気持ちが勝ってくれた結果だと思うもの。

 ……。

 

「アリス、少しいいかしら?」

 

「何?」

 

 今回、私はアリスの期待に応えられたかどうかは分からない。それでも、あなたの隣を進みたい。

 今はアリスの隣を歩めるほど強くはないけど、アリスが言ってくれたように私はいつかアリスを救えるほど強くなってみせる。今回以上に、アリスに輝く姿を見せつける。

 

「これからも一緒にパーティを組んでほしい。いえ、私と固定パーティを組んでほしい。今回みたいにまた守られてしまうかもしれない。時には泣いてしまうかもしれない。それでも、いつかあなたの隣を歩むに相応しい実力を備えてみせる。だから、あなたの隣で進みたい」

 

 数多の星が煌く空を背景にアリスの顔を見つめながら、アリスへと願いを告げる。

 

「守られてもいい。泣いてもいい。それでも大切なときに輝き、最終的に乗り越えれば問題ない。私は輝きを見せてくれたあなたを歓迎する」

 

「ありがとう、アリス」

 

 私は今、どんな表情をしているのかしら。泣いているのかしら、笑っているのかしら。そのどちらであっても、きっと嬉しそうにしているはずよ。

 だって、こんなにも嬉しいのだから。

 本日の投稿はこれで終了となります。

 残り少ないですが明日の投稿で練習用に書き上げている1章終了となりますので、もしよろしければ最後までご覧いただけると嬉しいです。

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