030~VS希少個体『銀狼』6
本日7話目の投稿です。
読み飛ばしにご注意ください。
「自分のスキルを利用してあの子の力を引き出すなんて、さすが私の妹ね」
「またまた~。こうなることを見越してエルピスちゃんにスキルを明かしたんでしょう?」
アイリスからかなり離れた森の中、そこでは嬉しそうなコンバラリアと、両耳の後ろ付近でゆるく結んだ腰下まである長い金色の髪と、薔薇のように赤い瞳をもつ微笑みを浮かべた女性――ローザが言葉を交わしていた。
「可愛い妹の手伝いはしたくなるものよ。それよりも、既にアリスは魔力特性を発現しているみたいね。ようやく気づけたわ」
「……もしかして私達も感知されてました?」
「そうでなければ私は気づいていないわね」
「う~ん、さすがアリス。私はランク5の時だったんですけどね……」
「進行速度と連携を優先した結果ね。あなたならランク1では難しくとも、ランク3の頃には発現できていたと思うわよ?」
「1と3は凄い違いなんですけどね~。それよりも、あなたはアリスに負けたままでいいのですか?」
微笑みを崩さぬローザがコンバラリアに問いかける。
「アリスは必要だったから発現"させた"。私はまだ必要ないから発現するとは思えないわね」
「第1層とはいえ、ボス級を単独かつ魔法無しで倒して必要ない、ですか。いいですね~」
「あなたも装備を揃えれば十分に倒せるでしょうに」
「スターチスのところの武器とはいえ、魔力武器ですらない2・1金属の槍で倒したあなたに言われましても」
苦笑を浮かべつつそう言ったローザに対し、コンバラリアは軽い雰囲気で答えた。
「ところで、何でアリスは"スクルド"を使用したんですかね? おそらくですが、必要なかったですよね?」
「アリスが言ったじゃない、褒章だと」
「う~ん、さすがアリスですね。よく分からないことをします」
コンバラリアの答えを聞いて苦笑を微笑に変えつつも、少し困惑している様子のローザ。
「ところで何か聞きたいことがあるのではないかしら?」
そんなローザにコンバラリアは軽い雰囲気で問いかけた。
「アクセプトオーダーの魔法は初めて見ましたけど、もしかしてあなたも使えない魔法ですか?」
「使えるわよ?」
「そうですよね~」
コンバラリアの答えに、軽い雰囲気で納得した様子をみせたローザ。
「今の私は輝く魂達を見ることができて機嫌がいいの。あまり無いチャンスよ?」
「……どうしてアリスがアレを纏えるのですか。この前の希少種、あそこで初めて知ったはずですよね?」
先ほどまでとは打って変わり、真剣な表情でコンバラリアに問いかけるローザ。
「残念、ハズレよ。やっぱりあの子は話していなかったのね」
「あの子とは誰ですか?」
「得意分野でしょう、自分で調べなさい。それと本当に知りたいのは纏えるようになった時期、よね?」
「……はい」
観念したように小さく呟くローザ。それを見守るコンバラリアの表情は、まるで幼い子を見守るような優しさを含んでいるように感じられる。
「安心なさい。纏えるようになったのはおそらく、あの銀狼との戦闘中よ」
「やっぱりそうですよね。私はまだまだ修行が足りないようです」
「その感情もまた、1つの力となり得るわ。それとアリスは状況を作りはしても、大切な相手を死なせるような真似はしない」
雰囲気を変えぬままにコンバラリアの強い視線がローザを貫く。その視線に込められた意味をローザはどう捉えたのか、僅かな時間だけ考える様子を見せた。
「……どうりでティアさんが惚れ込むわけです。あ、私はあなたが大好きですよ?」
僅かな時間だけ黙ったローザは一言だけ呟き、一転して軽い雰囲気で続く一言をコンバラリアに告げた。
「それはありがとう」
雰囲気を変えぬままに視線は普段通りのものとなり、軽い雰囲気で感謝の言葉を伝えたコンバラリア。
「ふふっ。それでは私は目的を終えましたので帰りますね。必要なくなったかもしれませんが第1層ボス級"ウルフ・リーダー"の単独かつ魔法不使用による討伐はギルド長に報告しておきます」
「お願いするわ。別にあの子のためだけに行ったわけではないもの」
コンバラリアの返答を聞き終えたローザは笑顔で手を振りながら、ゆっくりと歩いてその場から立ち去る。そして軽く手を振り返し、その場に残ったコンバラリアはローザの姿が見えなくなったところでアイリスのいる場所へと視線を向けた。
「それにしても"レッド"、とはね。調整できることは気づいていたけど、まさかこの短時間で解析したのかしら。いえ、あの希少種以前に1度、直接は見ていなくとも知る機会があったのよね」
視線の先は木々で遮られ普通では見えぬほどの距離が離れているはずだが、コンバラリアの視線は移動しているアイリスを間違いなく追っている。
「その時から予想していて、実際に近くで解析した今は最終調整をしただけ、かしら。ふふっ、我が妹は変わらず好みの輝きを見せてくれるわね」
満足気に微笑んだコンバラリアは振り返り、ローザが移動していった方向へと足を進め始めた。
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