003~アリス1~
「命を救っていただき、ありがとうございました」
安全地帯の樹の下まで移動したところで、頭を下げてお礼を告げる。
これで終わらせるつもりはないが、まずは言葉で伝えたい。
「"やっぱり"復活できなかったんだね。何か理由があったの?」
「少年と少女の2人組を助けるため、かしら?」
復活できなかったことを予想されていたことにも驚いたが、無茶をした理由を当てられたことにも驚いた。
「その通りです。未熟な腕前で無茶をし、結果あなた方を巻き込んでしまって申し訳ありません」
「私は強そうな魔物を見つけて、倒しただけ。ところでリア姉、何で知ってたの?」
嬉しそうに微笑むアリス。
これは私に気を使ってくれての言葉だろう。自らも危険な状況だったのに、優しい少女ね。
「私は妹に助太刀しただけ。それと知っていた理由については、1つ前の層でその2人が助けを求めていたからよ。『僕達を逃してくれた女性を助けてほしい』、とね」
あの2人、無事に逃げ切れていたのね。さらに助けまで求めてくれるなんて、嬉しいな。
助けを求めれば依頼となり報酬を求められることが多い。復活できるとはいえ制限もあるし、武器や防具が破損する可能性もある。それに護衛が依頼として成立しているのだから、それと同等の難易度である救出で報酬を求められるのはとうぜんだと思う。
それでも、あの2人は私のために助けを求めてくれた。
「あの2人は安全地帯で復活ができるようになるまで待機しているように言っておいたから安心なさい」
「ありがとうございます」
私を救うために死んでしまっては助けた意味がなくなってしまう。待機しているように言ってくれる人に出会えていて、本当に良かった。
「助けていただいたお礼なのですが、街に帰ってからでも構いませんか? 手持ちのアイテムはほとんど使い切っていて、手持ちの魔石も数が少ないのです」
「言ったはず、私は強そうな魔物を見つけて倒しただけ、と」
「そして私は妹に助太刀しただけ。それに私達に渡すよりも折れた武器を買い替えなさい」
……この2人は何を言っても受け取ってはくれないだろう。そんな雰囲気を感じる。
ここは言葉通り、武器を買い換えることにしよう。そしていつか、この2人が困っていれば助けられるように強くなろう。
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、武器を買い替えます」
「それでいいわ。ただ、どうしてもお礼がしたいのなら、私に対しての丁寧口調をやめなさい」
「私も」
「え……いえ、分かったわ」
助けてくれた相手にそれはどうかと少し戸惑ったけど、きっと私が"お礼"を抱えないようにだと思う。それならありがたく、受け入れておくべきね。
「そう、それでいいのよ。堅苦しい言葉なんてお偉いさんだけが使っていればいいのよ」
「満足」
もしかしてこの2人はどこかの貴族かしら。
まあ、ここでは関係ない。このダンジョンの入口がある、この街では皆が平等なのだから。
「さて、少し休憩をしましょうか」
「うん。エルピス、ちょっと集中するから少しの間だけ話しかけないでね」
「ええ」
木陰に座ったアリスは目を閉じて集中し始めた。その雰囲気には先ほどまでの、やや緩い感じはない。
安全地帯でこれほどの集中、魔法の書き換えかしら。世界への問いかけを行ってなかったみたいだけど、慣れている魔法なら覚えていても不思議ではない。それならば、できるだけ音を立てないように静かにしておきましょう。
リアがアリスの傍に座るのを見ながら、私はアリスから少し離れた場所へと座る。そして特に意味もなく、アリスを見つめつつ私も休憩を開始する。




